竜の知恵
バドカの図書館で調べ物を続けるギラ達。
そんな中先日出会った館長に少し話を聞きにきていた。
竜の知恵があれば活路が見出だせるか。
そんな考えから話を聞いてみる。
「ふむ、秘宝ですか」
「はい、何か聞けないかと思いまして」
「長生きしてるなら何か知ってるんじゃないかと」
「一応聞いておきたくてな」
館長はそれに対して少し答えてくれた。
秘宝とは何なのかとも。
「そもそもその秘宝は遥か昔に戦争の道具として作られたものなんですよ」
「戦争の道具ですか?」
「確かに特異なものが多いのは調べてて知ってる」
「そんなものを作って戦争には勝てたの?」
館長曰く戦争には勝てたそうだ。
だがそれと同時に記述されていない絶対に隠し通さなければならない秘宝もあるという。
「記述されてない秘宝、ね」
「それについては誰に聞かれているかも分からないので話せませんが」
「そんなやばい代物なのか」
「そんな名前すら口にしてはいけない究極の秘宝があるんだね」
館長曰く秘宝は今も世界に点在しているという。
それを壊すのは困難なので放置しているらしいが。
「まあ大体は分かった、それが秘宝が生まれた経緯か」
「秘宝を手にした者達は穏やかには生きられなかった、そういう歴史もあります」
「そんな…」
「力の代償、ですよね」
館長の話では歴史において狂ったものは数多くあるという。
だが必ずしもそれを狂っていると認めるのは愚かな事らしい。
その理論でいくと歴史上の英雄は全て狂人になってしまうからだ。
英雄とは多くは人を殺して英雄と呼ばれたのも歴史なのだそうだ。
「それにしてもまさか恋夜が外の世界に出ていたとは」
「興味があるならどこへでもいくぞ」
「恋夜さんの知識には助けられてますしね」
「頼りになる奴だよ」
そういえば気になっていた。
この世界には機械こそあれど恋夜は明らかなオーバーテクノロジーだと。
「そりゃ恋夜を設計したのは僕ですからね、組み立てから起動まで全部」
「はぁ~、竜の知識って凄いですねぇ」
「そういえばマスター登録がされていないのが疑問だったな」
「つまり意図的にマスター登録をしなかったですかっ」
館長の話だと学ぶ事を優先させるべくあえてマスター登録をしなかったという。
そしてギラ達に出会いその世界でさらに学び今に至るそうだ。
「君達は秘宝を壊しに行くんだろう、止めはしないよ、ただし生きて帰ってくれ」
「はい、お約束します」
「アタシ達とてそんなヘマはしないさ」
「私を誰だと思っているのやら」
館長もそんなギラを見て孤独を感じ取る。
魔王の孤独はこの世界で癒やされたのだろうか、とも。
「そろそろ失礼します、明日には破壊しにいくので」
「失礼しましたわ」
「はい、困った事があれば知恵ぐらい貸しますよ」
「感謝するのです」
そうして館長室をあとにする。
明日はあの女にリベンジに向かう。
その戦いの行方は今は分からない。
強いて言うのなら神のみぞ知る、というところか。
この世界を楽しむために邪魔なものは全て排除する、それがギラの思いである。