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知らないという罪

恋夜を加えたギラ達は依頼でロックプテラを探していた。

出現するのはアルセイムの沿岸部から中部にかけてらしい。

地上に降りて探すのは困難なので、ソルバードの高度を下げて飛行して探す。

空からの捜索なら即座にその場に降り立てるからだ。


「ふむ、どうですか?」

「この辺りにはいないようだね、沿岸部から中部にかけてとはいえ範囲は広い」

「ならもう少し目を凝らさないと」

「見つけたら教えてください、いつでも出せるようにしますから」


そうして低空を飛行しつつロックプテラをさらに探す。

すると今までのモンスターとは明らかに違う影を発見する。


「いたぞ、あいつがロックプテラで間違いない」

「メーヌ、準備はいいですか?」

「はいっ!こっちもいつでも!」


ロックプテラに出来る限り接近しつつ距離を詰める。

だがそんな中様子がおかしい事に気づく。

どうやら人を襲っているようだ。

その人を見てギラはアルセイム王都から逃走した平民だと気づいた。

助けてやる義理はないものの、ロックプテラ討伐があるので仕方なくである。


「ギラ様!」

「ええ、飛び下りますよ!リックさん、手を離したら骨の一つは折れますからね」

「は、はいっ!」

「研究対象、逃がすと思うな」

「それでは、フライアウェイですっ!」


そうしてソルバードからロックプテラの至近距離に降下するギラ達。

メーヌはソルバードをそのまま離脱させ、いつでも回収可能な位置を維持する。


「く、来るな!あっちにいけ!この!」

「さて、そこまでですよ、恨みはないですが、倒されていただきます」

「お、おいっ!早く助けろ!」

「何様なのやら、まあいい、いくぞ!」

「クアァァァァァッ!!」


ロックプテラは一気に倒さないと逃げてしまうモンスターだ。

だがそこはギラ、その実力を存分に発揮する。

逃げてしまうのなら逃げる前に仕留める、これはゲームではお馴染みの話。

散々そういった相手を倒しているからこそのお約束である、ゲームの話だが。


「リックさん、相手の動きを制限する魔法をメインに頼みます」

「分かりました!」

「それではこっちも」

「熱く盛ろうじゃないか!」


ロックプテラは今は強襲という事もあり攻撃的になっている。

攻撃的なうちに一気に仕留めにかかるギラ達。

逃がしてたまるかと言わんばかりにブーストをかける。


「せーのっ、ボカーン!」

「地面に這いつくばれ、たあっ!」

「熱く盛ってくれよ、燃え上がれ!」


翠のナパームが炸裂し、そこにリックの荷重魔法グラビティベールが決まる。

動きが鈍ったところに恋夜の自慢の炎魔法が炸裂する。

動きが鈍くなったロックプテラは必死に逃げようとし始める。

だがそうはイカンザキ、ギラが凄まじい威力の技を放ちそのまま地面に墜ちる。

動きが鈍くなった以上逃げる前に仕留めるのはギラには容易い事だ。


「ふむ、とりあえず確実に息の根を止めておきます」


そう言ってギラはロックプテラの心臓を剣で一突きにする。

こうしてロックプテラを討伐した、討伐の証拠としてその爪を剥ぎ取る。

そして問題は…。


「さて、あなた達はミリストスの下町から逃げた愚民ですね」

「はぁ!?ふざけんな!俺達が悪いってのか!」


その平民達は完全に開き直っている。

自分達が悪いなどとは微塵も思っていないようだ。

それに対してギラもリックも呆れ果てる。


「そもそもあなた達はなぜああなったか、理解していますか?」

「決まってんだろ!国の横暴だ!俺達から徹底的に搾取するためにな!」

「…こいつらは脳にウジ虫でも巣食っているのか?」


恋夜も辛辣なものである。

とはいえ国は彼らに手配書を出している。

下手に街などに逃げ込む事が出来ないし、国外に逃げるのも厳しい。

なら放っておいても勝手になんとかなるのではと考える。


「とりあえず素直に自分達の非を認めれば減刑程度はしてもらえると思いますよ」

「ふざけんな!俺達の何が悪いってんだ!貴族や国は俺らから搾取してばかりだろ!」

「こいつらは国の仕組みというものをまず知らないみたいだね、まさに愚民か」


散々コケにされる下町の人間。

だが自分達が悪いとは一切認める気配がない。


「はぁ、そりゃ強硬手段に出ますよね、国もお疲れ様ですよ」

「んだと!?弱者を虐げるのが国として正しいっていうのか!」

「本当に馬鹿かな?それとも弱者は何をしても許される、守ってもらえるとでも?」


恋夜のその言葉は正論そのものだ。

弱者だから、そんなのは理由にはならない。

寧ろ弱者である事を利用した悪質さすら覚えている。


「君達は弱者という言葉を使って悪事を働く、ただの犯罪者だ、身の程を知れ」

「だったらなんだ!俺達は生きるためにやってんだぞ!」

「知らないというのは罪ですね、あなた達の見ている世界の狭さが分かりますよ」


見ている世界が狭い。

それは下町に固執するあまり、他の全てに対して目を逸らしているという事だ。

国の仕組みも理解しようとせずに、一方的に悪人と決めつける。

そんな馬鹿だからこそ国は強硬手段に出たのだろう。


「私達は君達がどうなろうと知った事ではない、さっさと消えろ」

「感謝なんかしねぇからな、ふざけんじゃねぇ!」

「負け惜しみですね、彼らの末路は因果応報でしょう」


そしてメーヌがギラ達を回収しに下りてくる。

そのままソルバードに乗り込みバドカに引き上げる。

しばらくはバドカを拠点にするので、滞在中の計画なども改めて立てる事に。


とりあえずはシルバーランクを目指し、やれる依頼を適当に消化する。

あとは暇を見つけてアルセイムの国内も少し見にいく事に。


「さて、では報酬を受け取ってきますね」


そう言ってギラは冒険者ギルドの方で報酬を受け取る。

そのあとは自由時間だ。

もうそろそろ夕暮れになるので街も賑わう時間である。


「ふふ、それにしてもギラ、君は本当に私の好奇心を掻き立ててくれるね」

「あなたに研究対象にされるのは勘弁願いたいですがね」

「でも優秀な頭脳の加入は嬉しいですよ」


恋夜は好奇心とその優秀な頭脳が武器だ。

とはいえ周囲が見えなくなるような事もあるのが玉に瑕である。

この世界の技術的にメーヌよりは劣るだろうが、それでも優秀だ。


「今夜は飲もうか、付き合うよ?」

「いいですね、まあこの見た目だと追い出されそうですが」

「あはは、程々に頼みますね」


そうして夜は更けていく。

アルセイム本土から離れているからなのか、大地の骨の接触はない。

とはいえ本土で動くときは大地の骨に警戒しておく事は忘れない。


ギラの心に燃えるドス黒い炎は、奴らを滅ぼすまで消えないのだから。

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