廃館の異形
冒険者から聞いた噂話。
それは異形を操る謎の女性。
そして姿を自由に変えられるという秘宝の話。
それを確かめるべくギラ達はその廃館へとやってきていた。
「ここがその廃館ですね」
「オルバインにこんな廃館があったんですね」
「意外と灯台下暗しなもんだね」
「とにかく中へ入ってみましょう」
そうして屋敷の中へと足を踏み入れる。
屋敷の中に入るとギラはすぐに分かった、この屋敷は何かがねじ曲がっていると。
「この館は明らかに何かがおかしい、お主ら気をつけろ」
「クロノス?ええ、分かりました」
「クロノスがあそこまで言う辺りガチなのか」
「油断は出来ませんねっ」
屋敷を入って少し進むと広間に出た。
その広間は明らかに何かが違う、そしてそれは姿を見せる。
「上です!」
「あれは…噂に聞いた異形ですか!」
「構えな!とっくにロックオンされてる!」
「了解ですわ!」
天井にくっついているその異形はギラ達に狙いを定める。
天井に張り付いているため攻めにくい、それでも魔法や飛び道具で応戦する。
「効いてるか?」
「いえ、傷がすぐに癒えています、再生能力は高そうですよ」
「厄介な相手か、魔法で一気に吹き飛ばすべきか」
「あれは魔物でも化物でもない…つまり操っている人がどこかに…」
ギラは周囲に対して神経を研ぎ澄ます。
どこかにあの異形を操る術者がいる。
腰の刀に手をかけ、常に動けるように構える。
そしてわずかな歪を感じ取りそちらへと走る。
「見つけましたよ、あなたがあれを操る術者ですね」
「おやおや、鋭いですねぇ」
「あれは…女の子?」
「まさかあれが噂の?」
ギラはその少女の首元に刀を付きつける。
だがその少女はにこやかに微笑み返す。
「物騒ですね、そんなんじゃ嫌われるぞ小娘!」
「少女が…老婆に…」
「後ろです!」
「下りてきてくれるとは好都合ですわ!」
その異形に対し攻め立てる。
だが高い再生能力の前に攻撃の効果は薄い。
術者を倒せばあれは恐らく止まる。
だがそんな余裕などない。
「どうした小童ども!」
「一旦退きますよ!今のままでは勝てません!」
「戦略的撤退ってやつだね、三十六計逃げるに如かず、退くよ!」
「は、はい!」
なんとか屋敷から逃げ帰る。
そしてあの異形について確認する。
「なんだったんだあれ」
「傷をつけてもすぐに再生する、魔物の類ではないだろうな」
「あれは恐らく人の手で作られたもの、操り人形のようなものかと」
「つまり戦略兵器的なそんなものって事かしら」
なんにしてもこのままではあれには勝てない。
秘宝についても知りたい以上あれは倒さねばならないだろう。
「一旦あれについての情報を探しますか」
「だとしたらバドカか、行くだけ行ってみるかね」
「では行くとしましょう」
「人の手で作られた兵器、なんだというんだ」
そうしてあの異形について何か調べられないかとバドカへ飛ぶ。
姿を変える少女とそれに操られる異形。
それは屋敷に来る者を全て拒むかのような。
あの少女、いや女性には何か秘密がある。
秘宝とは何なのだろうかと改めて思うのである。