箱に住む少女
クプルフの復讐はまだかかりそうなので暇を潰すギラ達。
そんな冒険者ギルドでの依頼をこなしつつ面白そうな話を探す。
するとまたしても何やら面白そうな話を聞く。
それはドラジールの倉庫に開かずの箱があるという話だった。
「開かずの箱ってなんですかね」
「さあ、鍵でもかかってるとか」
「それなら力でこじ開けられちまうだろう」
「なら呪いの箱とかかな」
少し気になるのでその箱を見にいく事にした。
その箱があるのはドラジールの西の倉庫らしい。
「それでその倉庫に来たんですけど」
「中に入る許可はもらってますよ」
「なら行ってみようか」
「呪いの箱なんですの?」
倉庫の中に入る。
箱があるのは奥の方だという。
奥に行ってみると明らかに不自然な箱がある。
開けようとしてみるがその箱はびくともしない。
そこでギラがサーチ魔法を使って中を確認する。
すると中には人が入っている事が分かる。
「中に入っているのはバレてますよ?それとも箱ごと切り刻まれたいですか?」
「ギラさん、そんな怖い事言ったらよけいに…」
「そうだ、ならギラ様、ゴニョゴニョ」
「何をする気なのやら」
メーヌの助言を受けギラは全員にステルス魔法をかける。
それは姿も気配も音さえも消す完全なステルス魔法だ。
「行ったかなぁ」
「はい、捕まえました」
「ちょろいな」
「あはは、まさか気配を消しちゃうとか」
箱から顔を出したその人は幼い少女だった。
少女は明らかに動揺している。
「ステルス魔法とかずるい!離せー!」
「とりあえず話を聞かせなさい」
「引きずり出すのはあれかね」
「悪くはしないぞ」
少女は観念したのか、箱から顔だけ出して話してくれた。
どうやらこの箱は家らしい。
「頭でも打ったのか?」
「違うもん、この箱はお家だもん」
「こんな小さな箱に引きこもるとか、凄い根性してますね」
「えっと、出ないんです?」
少女曰くこの箱の中で暮らすのは人生らしい。
箱は至高で崇高な家だと熱弁される。
「にしてもなんでまた」
「うーん、そこに箱があったから」
「出るつもりはないんですかっ」
「なさそうですわよ」
その少女はすっかり箱が気に入ったのか、頑なに出ようとしない。
もはや箱が体の一部と言わんばかりである。
「ミミックですかね」
「人食い箱じゃないもん」
「まあ本人がそうしたいならアタシ達にどうこう言う権利はないさ」
「ソウも意外と甘いねぇ」
なんにしても話し終えたら少女は箱に戻ってしまった。
もはやカタツムリである。
この少女はカタツムリやヤドカリの仲間なのかと思ってしまう。
不思議な少女の存在はやはりミミックを連想させる。
「引きこもりでしたね」
「あれが本当の箱入り娘ですね」
「座布団一枚ですっ」
「大喜利かな」
まあ今回も少しは面白いものが見られた。
箱に住む少女、彼女は結局何なのか。
やはりミミックなのかとギラは思う。
ミミックの美少女化があんな感じなのかと。
そうして再び冒険者ギルドの依頼を適当に受けに行く。
ミミックもどきの少女の不思議。
箱に住むから箱入り娘なのかもしれないと思った。