黄金の虫
クプルフの復讐が終わるまではまだかかりそうである。
そんなわけで冒険者ギルドの依頼をこなしつつ暇を潰すギラ達。
そんな中またしても不思議な話を聞く。
それは黄金の虫を見たという話だった。
「黄金の虫なんて本当に出るんですかね」
「まあ噂ですからね」
「噂は噂だ、今までのように運が巡るかね」
「まあ一応こうして探しには来たんでしょ」
なんだかんだで話には乗っかるのが流儀である。
その虫を見たという森にとりあえずは来てみた。
「黄金の虫、ですか」
「そもそも虫と言われても何の虫なんですか」
「カブトとかクワガタとか」
「その辺が濃厚なのではなくて」
とはいえそんな簡単に見つかるわけもない。
それでも一応は探してみるのだが。
「そんな虫はいませんねぇ」
「もしかして木に止まる虫じゃないとか」
「なら足元も探してみろ」
「分かりました」
そうして足元も探してみる。
すると木の葉の中に何やら輝きが見えた。
その輝きをあさってみると、その中には金色の三葉虫がいた。
ギラ達が知る限り絶滅したはずだが、この世界では生き残っていたのか。
「これ三葉虫ですよ」
「また地味な虫をチョイスしましたね」
「というかこの世界では絶滅してないんですねっ」
「にしても本当に金色だ、売ったらお金になるのかな」
とはいえ売るのも流石に気が引ける。
すると他にも虫の気配がした。
足元を少しあさってみると、そこには他にも黄金の三葉虫がわんさかいた。
恐らく噂で見たものはもっと少ないと思われる。
そんな黄金の虫がこんなにいるのだ。
まさに宝の山である。
とはいえ生態系的な意味でも捕まえるのはやめておく。
そのまま虫を帰してやり、三葉虫は去っていった。
「意外と優しいんですね」
「別に虫なんか殺してもつまんないですし」
「ギラさんはいちいち物騒ですわね」
「だよねぇ、殺すか殺さないかで決められても」
それはギラなりの物事の考え方である。
殺す価値があるかどうか。
それがギラが面白いと感じる基準だからだ。
なんにしても歪んでいるのは確かなのだろう。
「黄金の虫は別にいいとして、あの木に止まってるカブト捕まえていいですか」
「あれ市場だと凄く高値で取引されるナガツノカブト…」
「では捕まえてお金にしましょう」
「こういうところはちゃっかりしてるわよね」
そうしてお金になりそうなカブトやクワガタを捕まえる。
この世界では季節に関係なく見れるようだ。
あとでリックに訊いたところ、季節によって種類が変わるらしい。
今の季節に見れるのはナガツノカブトのようなものだという。
捕まえたカブトとクワガタは街に戻って専門の店に持ち込んでお金にした。
少しお小遣いである。
「さて、ではまた冒険者ギルドの依頼でもやりますか」
「あんた達も暇人ね」
「クプルフさんの復讐はまだかかりそうです」
「なら今は様子見だろ」
そうして冒険者ギルドの依頼を暇潰しにこなすギラ達。
復讐はじっくりとはいえ、まだかかりそうである。
クプルフのねちっこさは時間をかけて不幸にするものだからこそである。




