落下物の草原
クプルフの復讐はまだ終わりそうになく、暇を潰すギラ達。
レンゲンの破産まではもう少しかかりそうだ。
そんな中ギラ達はまたしても奇妙な噂を聞く。
その噂とは空から物が降ってくるという草原の噂だった。
「落下物の草原って、まーた胡散臭い…」
「いいじゃないですか、依頼ばかりじゃ飽きますからね」
「ギラ様、完全に楽しんでますっ」
「それにしてもなんか危険な香りが…」
そうして草原を歩いていると何やら円形に草が生えていない場所を見つける。
明らかに怪しいのだが、とりあえずそこに近づいてみる。
「いかにも怪しいね」
「ミステリーサークル、にしてはしょぼいですね」
「ここに物が落ちてくるんですの?」
「噂ではこの円の中に立つと…」
ギラが円の中心に立ってみる。
何もないかと思いきや、何かの影がギラを覆う。
「これは…」
「木箱?本当に落ちてきたな」
「開けて平気なのかしら」
「怪しさ満点、だが開けてみるかね」
ソウが箱をこじ開ける。
すると中には少し臭うものが入っていた。
「臭い、なんですかこれ…」
「なんか発酵食品ですか?くさやとか…これはシュールなストレミングです」
「この世界にない食べ物が降ってくるとか、知らない人はどうするんですかね」
「なんか臭いますわ、なんですのこれ」
発酵食品、それは臭いがその味はとても美味しい食べ物。
とはいえギラ達以外は知らないし、腐った食べ物にしか見えていない。
「この缶詰パンパンですよ、どうするんですか」
「…食べられますけど食べます?幸い外ですから、臭いは気化しちゃいますし」
「この腐ったやつは食べられるのか?」
「なんてこんなものが降ってくるのかはともかく、食べますか、メーヌ」
ギラの指示を受けその発酵食品を適当にその場で調理する。
当然凄まじい悪臭なのだが。
「臭い…鼻が曲がりそうですよ…」
「まあ世界一臭いとか言われてますし」
「本当に食べられるんですの?腐ってるんですわよね?」
「これは意図的に腐らせた食べ物なので、死にはしませんよ」
ギラ達とモレーア以外はその臭さに戦いていた。
そんな中、ハルミとソウは納豆を見つけ、それを食べ始める。
「納豆は美味しいよね、ただその缶詰…」
「ハルミさんとソウさんは納豆は食べられるんですね」
「くさや焼けましたっ」
「シュールなストレミングは臭いは強烈ですけど、美味しいですよ」
ハルミとソウは納豆だけは食べられるが、他はきついらしい。
ギラはくさややシュールなストレミングを美味しそうに食べている。
結局ギラ達だけがそれを食べてしまった。
流石にこの世界の人間に発酵食品はきついらしい。
ソウは出身を考えれば意外とイケるクチか。
ハルミもその名前から恐らくと思われる。
「腐った食べ物を美味しそうに食べるとか」
「恐ろしいですわ」
「美味しいですよ?」
「アタシはそれなりに慣れてるからね」
そうして噂は本当だったとの事で決着。
その場をあとにして街に戻る。
それにしてもこの世界にはよく分からない事象もあるものだ。
噂話が本当かはともかく、面白いものである。