本に埋もれる叡智
アルセイムの南にある島、そしてその街バドカにやってきているギラ達。
この島はどの国の領地にも属さない島である。
そしてこの島にある大図書館、それは未知なる叡智の眠る宝の山。
それと同時に冒険者ギルドの総本山である。
「ここがその総本山ですか」
「はぇ~おっきいですねっ」
「とりあえず少し見て回りますか」
「ですね、行きましょう」
そうして図書館に行く前に手前の街を見て回る事に。
ここは大図書館の他に小規模ではあるが街もある。
大図書館に通う冒険者や学者で賑わっているのだ。
とはいえここは海に浮かぶ島の一つ、個人で来るのは難しい。
そんなわけもあってか、三国全てから定期船が出ているらしい。
実際港には三国の紋章の入った船が見受けられる。
学びに来る者、冒険者として来る者、それも様々だ。
「おや?」
「どうしました?」
「地下への階段がありますよ」
「酒場の地下?行ってみましょうか」
酒場の中に地下への階段を発見した。
その階段を下りた先には一つの扉があった。
扉を潜った先にあったのはそれは華やかな景色だった。
「おや、カジノじゃないですか」
「それも超大規模なカジノですよ」
「スロットですっ、ルーレットですっ、ブラックジャックですっ」
「カジノってギャンブルですよね?」
カジノはギャンブル、とはいえ国営として存在していたりもする。
要するにカジノは国が運営する合法の遊戯場である。
ちなみにここのカジノはオルバインが全額出資して運営されているらしい。
「遊びたいところですが、今は我慢ですね、図書館に行きますよ」
「あ、はーい」
「リックさんも気になりますか?」
「ま、まあ一応は」
カジノは一旦我慢して外に出る。
そうしてそのまま大図書館に向かうギラ達。
大図書館に入るとその規模に度肝を抜かれる。
リックは凄く目を輝かせていた。
「凄いですね、眠くなっちゃいます」
「ギラ様は活字は漫画以外は弱いですからね」
「とりあえず散策してみましょう」
「リックさん活き活きしてますねぇ」
そうして図書館を散策する一行。
そんな中研究員の話が聞こえてきた。
「恋夜の奴まだ戻らないのか?」
「みたいだな、今日で一週間、相変わらず興味を示したら周りが見えなくなる奴だ」
どうやら研究者の仲間が戻らないらしい。
リックは二人の研究者に話を聞いてみる事に。
「ん?恋夜の事かい?彼女は優秀な奴なんだが、少し浮いてる奴でね」
「それで今回も図書館の奥に入って本に埋もれてるんだろうさ」
「図書館の奥?」
どうやら図書館には奥があるらしい。
その恋夜という人も気になるため、図書館の奥への道を訊く。
「図書館の奥に行くなら、そこの角にある青い扉から行けるよ」
「ただその先は迷路みたいに複雑だから迷わないようにな」
「分かりました、ありがとうございました」
どうやらリックはその恋夜という人を探しにいく気のようだ。
「はぁ、まあいいですよ、それなら行きますか」
「はいっ、ありがとうございます」
「それじゃその奥に行ってみますか」
「わくわくっ」
言われた通り角にある青い扉を潜る。
そこはどうやら地下への扉だったようだ。
暗い図書館の地下へギラ達は歩を進める。
「それにしても本が散乱してますね、その恋夜って人の仕業ですか?」
「この本不思議ですね…」
「リックさん!その本は危険です!」
「ひゃわわわっ!?」
なんと本の中から魔物が飛び出してきた。
どうやら魔術書の一種で、飛び出す絵本的なものなのだろう。
ギラは即座にその本の魔物を一刀両断にする。
「はぁ、驚いたぁ…」
「なんで図書館の中に魔物がいるんですかね」
「封印区域みたいなものかと思いますよ」
「恋夜さんは大丈夫ですかね、急ぎましょう」
ギラ達は図書館の奥へと進む。
その規模は想像以上でギラは憂鬱になっていた。
「はぁ、こうも紙の臭いがするとトイレに行きたくなりますよ」
「あはは、本屋の現象ってやつですか」
「それでどこまで潜るんですかね」
「もっと下だと思います、行けるところまで行きましょう」
そうして本の臭いに便意を感じつつ奥へと進む。
進んでいくとやっと一番下と思われるフロアに到着する。
「ここが一番奥っぽいですね」
「それじゃ恋夜さんを探してみましょうか」
「ですね、では探しますよ」
「合点でい!」
そうして探し始める事数分。
奥の扉の先に人影を見つける。
「あの人ですかね」
「あの!恋夜さんですか!」
「無視ですかね」
「多分本に夢中になっているだけかと」
仕方ないので近くに行って声をかけてみる。
「ん?君達はなんだ?」
「あなたが戻らないって聞いたので探しにきました」
それに恋夜は笑ってみせる。
「ははっ、それは結構、それにしても一週間もか、時間の流れは速いね」
「それで何も食べてないんじゃ…」
恋夜はその心配はないと笑ってみせる。
「その心配はないよ、私はアンドロイドだ、一週間程度なら食べずともね」
「ほほう、この世界にはそんな技術もあるんですか」
「驚きましたねぇ」
「アンドロイド、オルバインが遺跡から発掘して再現した古の人型機械…」
そして恋夜はギラ達に興味を示す。
「だが君達は実に興味深いね、せっかくだ、私も仲間にしてもらえないか?」
「おや、それは嬉しいですね」
ギラは乗り気である。
メーヌ達もそれに特に異論はないようだ。
そうして恋夜を歓迎し、図書館に戻る事に。
なぜそんなものがあるかは知らないが、転送の魔法陣があるのでそれで戻る。
「さて、それはそうと冒険者ギルドの方で何か依頼でも受けますか」
「君達は冒険者なのか、ならなおさら面白くなりそうだ」
「とりあえず行きましょう」
そうして図書館の中にある冒険者ギルドに向かう。
そこは今までとは違う雰囲気をしていた。
掲示板で依頼を物色するギラ。
すると面白そうな依頼を見つけたようだ。
その依頼を受理して戻ってくるギラ。
当然カッパーランクなので心配されたが、そんなのはどこ吹く風である。
「えっと、臆病な鳥の討伐…」
「なんですか?その臆病な鳥って」
「恐らくロックプテラだね、そいつは神出鬼没だから討伐が困難なのさ」
「へぇ~」
どうやら恋夜が言うには、素早く倒さないと逃げてしまうという。
そして様々な場所に逃げるので追いかけるだけでも困難らしい。
徒歩で討伐しようとしたら、過去の事例でも一週間は使うという。
だが今のギラ達にはソルバードがあるので追跡も容易だ。
「ロックプテラはアルセイム領の沿岸から草原にかけて出現するよ」
「なら早速行きますか、ソルバードを使えば日帰りも余裕ですし」
「ですね、あとしばらくはこの島を拠点にして動くとしましょう」
そうして恋夜を仲間に加え、依頼のロックプテラ討伐に向かう。
このパーティーロボばかりになってますな。
空を移動出来る事は様々な強みになるのです。
ギラの暇潰しは滅ぼすかどうかの見定めでもあるのですから。