そうだ、異世界に行こう
ここは人間が滅んだとある世界。
人間が死滅したこの世界に魔王は暮らしていた。
今日も明日も明後日も、何もない世界で魔王は暮らしていた。
暇を持て余す魔王は根城にする山で自堕落に暮らしていた。
「ふぁ、暇ですね」
「そりゃ何もする事がないんですから暇ですよね」
従者のメーヌリスに愚痴る魔王、暇を潰すために異世界から娯楽を取り寄せたりもしている。
「まあぶっちゃけ私が人間を滅ぼしたから暇なんですけどね」
「ギラ様は世界移動の魔法で異世界から娯楽を取り寄せても暇そうですよね」
この魔王は何もする事がなくなり、異世界に出向いて娯楽を手に入れている。
ゲーム、漫画、小説、アニメなどあらゆるものは制覇しているガチオタである。
「というか異世界に行ってまで娯楽を求めるほど暇なんですね」
「そうですね、異世界の言葉で言うガチオタ、廃人、そんなとこですか」
まさにそんな言葉が似合う引きこもりである。
外に出ても何もないので、引きこもってその手のものにのめり込んでいる。
「ギラ様っ!新しい漫画貸してくださいっ!」
「ああ、翠、そこにあるから好きなものを持っていきなさい」
彼女はメーヌと同じく従者の少女だ。
とりあえず学習のために漫画やゲームを与えた結果変な成長をしてしまった。
「ギラ様、そんなに暇ならもう少し何かしたらどうですか?」
「そうですよ、そりゃ人間が嫌いで滅ぼしちゃったですけど」
従者の二人もギラを気にかけている。
とはいえ何をすればいいのかは分からずにいた。
「そうですねぇ、こういうゲームとか見てるとこんな風に派手にやりたいとは思います」
「派手に…それならまた世界でも滅ぼします?」
メーヌもサラッととんでもない事を言うものだ。
とはいえこのまま引きこもっていても、二次元コンテンツは食い尽くしてしまった。
「そうですねぇ、なら暇なんで異世界でも滅ぼしに行きますか」
「いいですねっ♪どこか面白い世界とかないですかね」
そう言われても滅ぼしてもよさそうな異世界など簡単には浮かばない。
だが滅ぼすなら文明レベルの比較的低い世界がいいだろうと考える。
「とはいえ最低限の文明がないとメーヌがポンコツになりますし」
「まあメーヌの機能を活かすなら文明は欲しいですしね」
そう考え異世界の事が記された文献を手に取る。
それから最低限の文明があり、比較的近代文明もある世界を選択する。
「ならこの世界に行きますか、機械技術が発展しつつも時代的には中世です」
「それならメーヌも活躍出来そうですね」
その世界の名はアルセレアという世界らしい。
そうして魔王は重い腰を上げる。
「それじゃ行きますか、しばらくは帰るつもりもないですけど」
「はいっ、どこまでもギラ様にお伴しますよ」
「私も何かとお勉強したいですからね」
そうしてその魔王は異世界へと進撃する。
二人の従者と共に暇を潰すためにである。
「では、扉よ開け!我らを我らの望む世界へと送りたまえ!」
そうして魔王の術により異世界への扉が開く。
ちなみに今までの娯楽もこの術で直接異世界へ行って手に入れていた。
「それでは行きますかね」
「はいっ、参りましょう」
「わくわくっ」
こうして魔王は異世界を滅ぼすべく久しぶりに立ち上がる。
ちなみに娯楽のある世界は滅ぼしたくないとか言ってるのはガチオタなせいである。
特に娯楽もない世界なら滅ぼしてもいいよね、という理由で選んだ世界だ。
魔王の壮大な暇潰しは今ここに始まるのである。
絶望して引きこもる魔王とかそりゃ暇にもなりますよね。
人間嫌いの魔王は異世界で何を見るのでしょう。