クプルフの愛
クプルフの復讐に付き合ってからしばらくが経過した。
復讐は長期的に見るものである。
そのためいつものように冒険者ギルドの依頼をこなす日々。
そんな中クプルフもそれを見て人間の不思議さを感じていた。
「あんた達よく飽きないわね」
「この世界の仕組みですからね」
「冒険者はそうやって生計を立てるものだ」
「まあ金稼ぎの方法はいくらでもあるけどね」
クプルフはそんな命懸けの人達を不思議に思う。
死ぬかもしれないのになぜその道を選ぶのかと。
「そういえばこっちからも訊いていいですか」
「何よ」
「えっと、以前山に行ったときにドラゴンがお姉さんだって言ってた事で」
「つまり姉は死んだという事になるのか」
クプルフはそれについても少し話してくれた。
昔は大切にしてくれた姉、それも今ではあの姿なのだと。
「お姉ちゃんは私が1000歳ぐらいのときにああなったの」
「でも天人には家族とかそういう概念はないと言っていましたよね」
「そうだな、なのにクプルフは姉と呼ぶ、特殊なケースなのか?」
「僕としてもそれは気になります、クプルフさんが特別なのかと」
クプルフは特殊なケースなのだろうと言う。
天人は基本的に超が付くほどの個人主義だ。
だからこそ人や同族と繋がりを持つ事が稀なのだと。
自分にとって姉はそれでも大切な人だと。
「やっぱりイレギュラーってあるものなのね」
「そうだね、でも家族っていいものだと私は思うよ」
「人間とは感覚が違うけど、家族はやっぱり家族よ、それ以上でもそれ以下でもないわ」
「天人にもそういうケースはあるものなのだな」
人間で言うところの愛という感情。
それは天人にもあるものなのだと理解する。
恋夜はその話にとても興味津々だ。
元々知らなかった天人という種族の事をもっと知りたい、そう願う。
「話を聞かせるのはかまわないけど、熱くならないでね」
「分かっているさ、私は知らない事は知りたいと願うからね」
「恋夜さんはどこまでも好奇心の塊ですね」
「ギラ様も限定品の食べ物に弱いですから好奇心ですねっ」
ギラは期間限定と言われると弱いのだ。
それが食べ物なら特に手を出したくなるらしい。
食べ物以外の限定品にはそんなに興味は湧かないらしいが。
そういう気になるものは試したくなるのも好奇心なのだろう。
「なんにしても私に話せるのはそれだけよ、あとは個人で訊きなさい」
「うむ、では思う存分訊くとしよう」
「楽しそうだねぇ、恋夜は」
「活き活きしてるのです」
そんな恋夜を横目にリックも自分の好奇心を確認する。
知らないものを知りたいと願う事は大切だと。
「さて、クプルフさんの復讐はまだ続きそうですね」
「そうね、不幸にするっていうのは時間をかけてネチネチとやるものよ」
「陰湿ですわ」
「まあ不幸ってのはそういうもんさ」
天人という種族についての勉強。
それは大地の骨の一件が片付いたからこそ興味をそそるもの。
天人がこの世界にどう影響するか。
それを学び、天人という種族に対して見識を広げていきたいと願うのである。




