将軍の噂
クプルフの復讐に付き合い始めてしばらくが経過した。
その間もギラ達は冒険者ギルトで依頼を消化していく。
最高ランクであるプラチナランクにはまだ届きそうにない。
そんな中攻撃対象であるレンゲンの今も気になっていた。
「それにしても頼んだレンゲンって今どうなってるんですかね」
「ブルクハルトさんは任せろって言ってましたよね」
「不幸にするにはねちっこくよ」
「粘着質ですわねぇ」
そんな中レンゲンに関係する噂もちょくちょく聞こえ始める。
どうやら税金にまで手を付け国から厳重注意を受けたらしい。
「本当にやってたんですか」
「税金にまで手を付けるって」
「やっぱり物欲が強いんだねぇ、そのレンゲンって奴は」
「ソウはシスターの割に意外と欲深いがな」
なんにしてもブルクハルトの攻撃は効いているらしい。
お金をどんどん使い込み少しずつ破産に向かっているのだろう。
それが商人の凄さであり、恐ろしさだと改めてリックは思っていた。
相手を言葉巧みに懐柔して物を買わせる、そうして自分の家は潰された。
リックはそんなブルクハルトを許す事は当然出来ない。
だがそれと同時に彼の信念とその商才だけは認めるしかないのだ。
物を売れない商人は商人としては三流以下。
そして相応の対価を支払う取引こそが商売なのだと。
「おや、君達は」
「あら、ブルクハルトさん」
「こんなところで何してるのよ」
「仕事なのです?」
ブルクハルトも暇ではない。
ギラ達の頼みを引き受けつつきちんと本来の仕事もしている。
以前も言っていたが、彼は金を使わない老人が死ぬほど嫌いだ。
金を貯め込み経済を回さない人間は死ねばいい、そう平然と思える人間だ。
オルバインの商工会には参加していないが、それは商売人としてはまともな考えだ。
経済とは金の流れによって生まれる。
当然金が使われなければ経済は停滞し、デフレーションを引き起こす。
そうなってしまえばあとは負の連鎖に繋がるだけだからである。
「相変わらず老人から金を巻き上げてるのか」
「巻き上げるね、私は金をきちんと循環させているだけのつもりだが」
「まあお金は使わなければ経済が停滞してしまいますわよね」
「とはいえターゲットがエグいとは思いますよ、メーヌは」
ブルクハルトが狙うのは資産を貯め込む老人がメインだ。
そんな老人達に欲しいものを合法的な金額で大量に売りつける。
相手の物欲を満たしつつその金を使わせるのだ。
褒められるものではないものの、その手腕や商才は本物だと認めるしかなかった。
「ああ、それと噂ぐらいは聞いていると思うが、攻撃はきちんと効いているよ」
「そう、なら引き続き頼むわ」
「クプルフさんが引き続き頼むと」
「言っています」
ブルクハルトもその言葉を受け攻撃の継続を約束する。
そのあとは次の商売があるとの事でその場を去っていった。
経済のために老人を殺し続ける男、ブルクハルト。
彼の信念はそんな憎しみと商人としてのプライドにあるのだろう。
金は使わなければ意味がない、それは彼が掲げる信念なのだから。