天人と人間
クプルフに言われるまま墓参りへ赴くギラ達。
それは天人と人間の意外な関係でもあった。
人間に寄生して生きる天人。
それが人間と親しくし、それも墓参りと復讐までするという意外な一面だ。
「さて、あんた達も墓参りしておく?」
「それじゃあ僕は…」
「私はパスです、一人の人間に墓参りする意味なんかないですからね」
「ギラ様…」
ギラは遠目でその様子を見ていた。
かつて自分の世界の人間を皆殺しにした事もあり、そんな資格はないと思っていた。
「終わったわ」
「ねえ、気になるんだけど天人と人間って要するに見下す関係なんだよね?」
「そうだね、聞く限りでは人間に寄生して生きるって」
「それなのにクプルフさんは人間と仲良くして、その人のために復讐なんて」
クプルフは天人だけに普通の人には姿が見えない。
だが彼女の言うその子は姿が見えたのだろう。
そうして交友を育みその関係を築いた。
だがあのときの焼き討ちによりそれは壊される。
人間嫌いと言いつつもその子の事だけは嫌いになれない。
そんな複雑な思いが彼女の中にはあるのだと、ギラは思っていた。
それは自分も同じであり、リックをそんな目で見ているからだ。
仲間達はもちろんだが、特に目をつけているのがリックでもある。
「そうね、天人って基本的に超個人主義なの、横の繋がりがないのよ」
「つまり誰かと関係を持つような事がほとんどない、ですわね」
「それなのにクプルフさんはたった一人のために?」
「特別、という事なのか」
クプルフは元々孤独だったという。
だがその子だけは自分を友達だと言ってくれた。
だからその子のために出来る事がしたいと。
石の中に閉じこもっていた少女が触れた暖かさだったのだろうか。
「結局はそれでもその子を守れなかった、だから私はあのときにね」
「やっぱりあの揺れはあなたが…」
「でも私には不思議と分かりますよ、それが人、いえ感情というものです」
「ギラはなんかそういう事を言うときに遠くを見るよね」
ギラもそんなクプルフの気持ちは分からなくはないのだろう。
ケースこそ違うがそれが感情の引き金になるのだから。
「そういえばあなた達風の天人を探してるのよね、効果が出るまで付き合うわよ」
「いいんですか?」
「とはいえソルバードは定員が…」
「椅子はないけど立ってるなら乗れるんじゃない?」
ハルミも無茶を言う。
空を飛ぶ乗り物に立って乗るなど危険すぎる。
「そうね、なら少しだけ浮いてればいいわ」
「そんな事も出来るんですね」
「ならそれでいいかな」
「アタシは別に構わんよ、好きにしていい」
そうしてクプルフもしばらくは同行する事に。
「それで当てとかあるの?」
「あったら苦労してませんわよ」
「以前の大地の骨のアジト近辺…とか?」
「でもあの辺で違和感のある風は感じなかったです、別ですね」
なんにしてもクプルフの目的が終わるまではギラ達の本来の目的に。
村を守っていた風の天人、彼は今どこへ消えたのか。
冒険者ギルドなら何か情報があるかもしれないと踏み、近くの街の冒険者ギルドへと向かう。