未知への飛翔
リメンズの街で一夜を明かしたギラ達。
宿で朝食を済ませ、依頼の報酬を受け取りにアーロンの研究所へ。
一晩待たせるぐらいなのだから、相応の報酬だと思っている。
何をくれるか期待と不安を胸にアーロンを訪ねた。
「ああ、待っていたよ」
「ええ、それで報酬とは何をくれるんですか?」
早々にそれをぶつけるギラ。
アーロンはそれはもう用意してあるから街の外に行こうと言う。
先日の話から報酬はまさかと思いつつそれについていく。
街の外に行くとそこには個人用の小型飛行機があった。
「報酬はこいつさ、こいつを使ってどこでも好きなところへ飛び立ちたまえ」
「こんな立派なものを頂いていいんですか?流石に悪いような…」
それに対してアーロンは続ける。
「こいつは試作機だ、今後の糧にしたいたからね、だからこそテスターが必要なんだ」
「つまり私達にこいつを使って世界を飛び回ってデータを取れと?」
アーロンは今後も新たな小型飛行機の研究と開発を続けるそうな。
そのために試作機であるこいつのデータを欲しがっているのだ。
「飛行データなどは私の研究所に自動で送られる、君達は好きに飛び回っていい」
「なるほど、オルバインの技術もありますしね、それでこいつはくれてやると」
要するに報酬としてくれる代わりにデータを提供してくれとの事だ。
それも悪くないとして、この小型飛行機を受け取る事にした。
「こいつは操縦マニュアルだ、そんなに難しくはないぞ」
「ふむ、ではメーヌこいつを叩き込みなさい、操縦は任せましたよ」
「はーい、お任せを」
そうしてアーロンは自分の夢を手助けしてくれた事への感謝を述べる。
「今後はもっとこいつを世界に広めないとね、そのための協力、ありがとう」
「別にいいですよ、こっちとしても空の移動手段とか願ったり叶ったりです」
「こんな素晴らしい報酬を用意してくれて感謝してますよ」
リックもアーロンに深々と頭を下げる。
アーロンは自分の研究に協力してくれた事で、研究が捗ると嬉しそうだ。
「さて、それでは未知への飛翔だ、君達のさらなる飛躍に期待しているよ」
「はい、それでは早速こいつを使って空に飛び立ちますよ」
そう言って小型飛行機に乗り込むギラ達。
そしてマニュアルを完全にインプットしたメーヌが操縦桿を握る。
アーロンが見つめる中その小型飛行機は緩やかに浮かび上がり空へと飛び立った。
「君達の活躍に期待しているよ、私の研究への助力、感謝する」
空の上でギラ達はその景色を見ていた。
空からの景色は別格であり、美しいのだ。
そんな中この小型飛行機の名前をどうするかという話が出る。
「名前ですか、何かないですか?」
「うーん、それならソルバードとかどうですか?」
リックが提案した名前はどこかいい響きである。
ギラはそれが気に入ったようで、この小型飛行機の名前はソルバードに決まった。
そして目的地とかどうしようかとなる。
そんな中リックがアルセイムの北端にある街に行きたいという。
その街は学者の街で珍しい本なども手に入るそうだ。
本の虫であるリックらしいが、今後の予定なども考えてそこに向かう事で決まる。
そうしてソルバードはアルセイム領北端へ向け発進する。
小型飛行機の速度は結構なもので、徒歩の半分以下の時間で目的地に到着する。
アルセイム北端にある学者の街マギイル。
この街は国の政治家などを多く輩出しているらしい。
エリートから夢見る若者まで多くの学生が暮らしている。
「ここがマギイル…一度来てみたかったんですよ」
「退屈そうな街ですねぇ、勉強とか眠くなるじゃないですか」
「あはは、ギラ様は活字を見ると眠くなる人ですからね」
「私は勉強も兼ねて何か面白い本が欲しいですっ」
とりあえず街を見て回る事に。
ギラはリックと一緒にマギイル国立大学に行ってみる事に。
メーヌは翠と一緒に大型の本屋に行く事になった。
大学にやってきたギラとリック。
リックは目を輝かせるが、ギラはすっごく退屈そうにしている。
そんな中一人の初老の男性が声をかけてきた。
「おや、見学希望者ですか?」
「あ、はい!見学させてもらえるんですか?」
その男性はどうやらこの大学で講師をしているらしい。
見学は受付で申請書に書けば出来るそうだ。
リックその講師にお礼を言い受付で見学の申請を書いて見学する事に。
ギラはそれについていくが、ぶっちゃけ興味はない。
そうして大学内の見学をするギラとリック。
この大学は様々な学門を学べるそうだ。
政治から経済、さらには文学者なども輩出しているという。
他にも科学者や技術者も輩出しているらしく規模の大きさが分かる。
こういう学門に力を入れるのは国の優秀な頭脳を育成するためだろう。
軍国であると同時に学門にも力を入れ、優秀な国防力を生み出しているのだ。
そんな中ある噂話を聞いたギラとリック。
なんでも政治学科の教授に殺害予告が届いたという。
教授は馬鹿のやるイタズラだとしているが、ギラはそれが引っかかる。
本当か嘘かはともかくとして予告の真偽が気になるのだ。
予告を出したのは恐らく大地の骨だろうと考える。
ギラは守ってやる義理はないとしつつも、その犯人への接触を考える。
とりあえずこの街に滞在し、それを調べる事にした。
「本当に楽しいですね」
「そうですか?学校がつまらないとは言いませんけど、眠くなりますよ」
ギラはあくびをしつつリックについていく。
二人の学校見学は対極な状態で進む。
一方のメーヌと翠は本屋で本を物色していた。
「ほぉ~」
「何かとありますね、歴史書から参考書、あとは哲学書とか」
翠は目を輝かせ学習に使えそうな本を手に取る。
メーヌは今後の予定に使えそうだとして地図と図鑑を購入する事に。
そして二人は満足気に本屋を出る。
街を見渡すと学生達の視線が気になるようだ。
「見られてますね」
「まあ外から来た人ですし」
そもそも二人自体がこの世界からしてもオーバーテクノロジーである。
ギラが魔法で生み出した存在なので、当然と言えば当然ではある。
まあメイド服姿のメーヌは嫌でも視線を集めるだろうが。
そんな中ギラとリックが合流し、政治学科の教授への殺害予告の事を伝える。
「なるほど、なら少し調べましょうか」
「ええ、守ってやるとかじゃなくその犯人が気になるのでね」
そうして今日はマギイルの街に滞在する。
ソルバードは街の外れにロックをかけて停めてある。
殺害予告の犯人を探す夜が始まるのである。
空への飛翔は未知なる世界への飛翔となるのだ。