焼き払われる村
クロノスの助力を得て現代から約11年前に飛んだギラ達。
18年前では村は平和そのものであった。
そして焼き討ちがあったと思われるのがその7年後。
ギラ達はその時代で何を見るのだろうか。
「夕方ですね」
「焼き討ちがあったのって確か夜だったはず…」
「知りたいのじゃろ?その日に飛ばしてやったぞ」
「つまり今夜に…ですわね」
そうして間もなく日が落ち夜になる。
特に変わった様子もなく、ギラ達は村を見ている。
「今は特に何もありませんね」
「でもその日に飛ばしたのなら…」
「何か音がします、馬の蹄の音…」
「始まる、だが手は出すな、我慢するんだ」
メーヌが音を拾ってから数分、馬に乗った王国の人間が村に火を放つ。
村の人達は逃げ惑い、自警団がそれを誘導している。
そんな中ギラが風の天人とは異なる何かを見る。
それは幼い少女だった。
だが村人にそれは見えていない、その少女はまさか天人か。
そのまま様子を見続ける。
「酷い…土地を無理矢理略奪しようと…」
「風の天人は動かないんじゃない、動けないんだ」
「火は酸素、つまり風でその勢いを増します、力を使えば火はもっと燃え広がる」
「分かっているんだね、こんな火の海に風を起こせば、あとは分かるね?」
イズナの言う通りである。
この火の海に風を起こせば火は勢いを増し村は一気に焼けてしまう。
そして村は瞬く間に火に包まれていった。
リーダーと思われる貴族はさらに指示を出す。
村人の中には逃げ遅れて火の中に取り残される人もいた。
全員を助けるなどというのは当然無理な話である。
だがギラ達はそれに手を出す事は出来ない。
歴史を変えてはいけないとクロノスに釘を差されているからだ。
村に火が広がっていく。
そして次の瞬間、凄まじい揺れを感じ取る。
地震か?そう思ったが、ギラが魔力を確かに感じ取っていた。
その地震は人為的なもの、つまり魔法的な力だ。
そんな中リックが火の中に憎しみに満ちた顔の先ほどの少女を見つける。
どうやら彼女がこの揺れを起こしているようだ。
リックは彼女が地の天人だと理解する。
その揺れに貴族達は次々に落馬し火の海に。
リーダー格はなんとか逃げるものの、結局村はそのまま焼き払われてしまった。
これが村が燃えた日である。
「これが…でもさっきの揺れの事は記述になかったですよ」
「イレギュラーか?だがどうにも腑に落ちないな」
「ですがリーダー格は逃亡しました、この後に暗殺に繋がるはずです」
「だとしたらアベールさんの言っていたのが次の…」
とりあえず様子は見届けた。
クロノスに頼みさらに一年後に飛ばしてもらう。
「一年後じゃな、時間はこっちで合わせてやる、ではいくぞ」
「大量暗殺が始まる…」
「あの少女、やはり引っかかる、モヤモヤするな」
「大地の骨が生まれる…」
そうしてそこから一年後へと移動する。
だが地震を起こした少女がやはり引っかかっていた。
記述にそんなものはなかった。
イレギュラーなのか、それともどこかで歴史が変わったのか。
考えは憶測を呼び暗殺の時代へと向かうのである。




