白雷の姫君
霊感を鍛えるべく精霊を探すギラ達。
次の精霊は雷の精霊フードゥル。
バドカの書物に記されていたオルバインの放棄された発電所へとやってきた。
そこは今は廃墟となったオルバインの旧施設である。
「ここに雷の精霊が?」
「みたいですね、メーヌはテンションが上がります」
「廃墟がお好きとかですの?」
「まあいいんじゃない?それより探そう」
そうして発電所内を散策する。
そこは放棄されたとはいえ設備は生きているようだ。
「動いてないだけで設備そのものは生きてますね」
「つまり動くって事かな?」
「そうなるわね、恐らく変電室とかあるはずよ」
「とはいえ雷の精霊を呼び出すには設備を動かすべきだろうな」
雷の精霊は言うまでもなく電気エネルギーのある場所に出るはずだ。
そうなると設備を動かし一番エネルギーの集まる場所を目指すべきである。
「ここが変電室っぽいですね」
「中へ入ってみるか、設備ぐらいなら私が動かせる」
「国に嗅ぎつけられないといいですけど」
「不法侵入だからねぇ」
部屋の中へと入り恋夜が設備を見渡す。
そして手慣れた手つきで設備を起動する。
「これで設備は生き返ったはずだ」
「なら精霊を探しにいきますか」
「エネルギーの強い場所ですねっ」
「もう冒険者というより目的が変わってる気もしますね」
そう言いつつもリックはそれがとても楽しそうである。
厄介事に散々巻き込まれてきたにも関わらずそれを楽しんでいるとも受け取れる。
それはギラと出会う前の虚勢が本物の強さに変わったという実感なのか。
それともその滅茶苦茶で理解の及ばないギラに不思議と惹かれているのか。
なんにしてもリックはギラと出会ってから人生が変わったのだ。
今がとても楽しく充実しているというリックの精神的な成長だろうか。
雷の精霊を求め生き返った発電所を散策する。
そうして奥にあるメインルームへと入ってみた。
「ここが電気エネルギーの中枢みたいですね」
「凄い電気エネルギーですよ、流石は発電所です」
「私の眠りを起こしたのはあなた達なの?」
「声が…まさかですわね」
施設の中枢から白いドレスの女性が姿を見せる。
それは雷の精霊フードゥルそのものだった。
「ふぁ、わざわざ私を起こしたって事は力でも欲しいのかしら」
「ふむ、特に問題なく視認出来ますね」
「ならここもクリアですかね」
「そうなりますっ」
フードゥルは何やら困惑気味な顔をする。
「あなた達力を求めてきたんじゃないのかしら」
「別に力なんて必要ないんですが、私はあくまで霊感のために来たので」
「ギラ様ズバッと言いすぎですよ」
「それもギラらしいがな」
それに対してフードゥルは呆れつつ言う。
「ふーん、でもそれだとなんか癪に障るからそこの坊やに力を貸しちゃう」
「は?僕ですか?」
「ギラ様も罪作りな」
「力なんていらないとか言うからよ」
フードゥルは無理矢理リックにその力を貸してしまった。
拒否権なんかないと言わんばかりである。
なんにしても視認は出来たため、ここはクリアである。
きちんと設備を止めて発電所をあとにする。
少々呆れつつも次は水の精霊アプサラスのいるウルゲントへと飛ぶのである。