表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/240

愚民の欲望

昨日の惨劇から一夜明けた。

ギラ達はとりあえずアルセイム国内を見て回る事を計画している。

ここから近いのは王都だ、まずは王都へ行き何かと集められるものを集める事に。


「さて、では行きますか」

「そうですね、王都ミリストスに行ってこの国の情報を集めましょう」

「では王都に向けて」

「出発ですっ!」


そうしてラビニアの街を発つギラ達。

大地の骨にマークされている以上いつ襲われてもいい覚悟はしている。

尤も襲われたところで返り討ち、惨殺してしまうだろうが。

リックの事もあるので、あまり過激な事はしたくないのが本心でもある。

襲われない事を願いつつギラ達は王都ミリストスに向けて出発した。


「王都まではどの程度の距離なんですか?」

「徒歩で一時間程度ですね、移動手段があれば時間も短縮出来るんですが」

「馬とかですか?」

「文明からして車とかでは?」


この世界の移動手段は主に船、航空機、自動車などだ。

個人での移動などの場合は馬なども使用される。

またこの国は軍国であり、近代兵器、戦車なども導入しているという。

それに対抗すべくウルゲントは魔法と科学を融合させた技術を独自に研究している。

戦争が起こる様子こそないが万が一戦争になれば、技術の衝突になる。

それがこの世界の技術における現状だそうだ。


そうしてリックからこの世界の技術の事を簡単に聞く。

そうして喋っているうちに王都が見えてきた。

この国も王都へ行くには関所がある。

通るには以前と同じように身分の証明が必要だ。


「止まれ、何か身分を示すものはあるか?」

「これでいいですか?」


冒険者バッジを見せるギラ達。

それを確認した関所の兵士は王都への道を開けてくれる。


「確かに、それではよい旅を!」


そうしてギラ達は関所を抜け王都に入る。

以前ウルゲントの王都で大地の骨に喧嘩を売られている。

今回もそれがあるのかと警戒だけはしておく事にした。


そうして王都ミリストスに特に何事もなく到着した。

メーヌが宿を取ってくれるというというので他は一旦自由行動だ。


このミリストスは山のような構造をしている。

頂点にあるのが王城、そこから下に進むにつれ民の階級が変わる。

とはいえ最下層の下町でも国の軍は巡回してきちんと守っている。

そんなミリストスの街をギラとリックは見て回る事にした。

翠は美味しいものが食べたいとかで商業区に行ったようだ。


「ふむ、中流街でも整備は行き届いてますし、軍人は巡回してますね」

「そうですね、でも階級があるのは国の身分制度ですから」


そうして見て回ると下町へ続く道を見つける。

そこから下町へ行ってみようとすると、街の人に止められる。


「下町には行かない方がいいよ」

「なぜです?」

「何かあるんですか?」


二人は率直に訊く。

するとそのおじさんは下町の現状を語ってくれた。


「あそこはゴロツキの集まりさ、軍人に石を投げたり納税を拒否したりしてるらしい」

「ふむ、でもそう言われると行きたくなるのが人というもの、感謝します」

「あ、ギラさん!」


そうしておじさんに一礼してギラは下町へと行ってしまう。

リックも慌ててそれを追いかける。


「ふむ、でも整備はされていますね、飲水なども普通にあるようです」

「大丈夫ですよね…」


すると怒号が聞こえてきた。

声からして若者のようだ。


「貴様!我々は真面目に税金を払えと言っているだけだろう!」

「うるせぇ!弱い奴から税金を巻き上げるとか常識知らずな奴だな!」


どうやら納税を全力で拒否しているっぽい。

軍人は水路に落とされびしょ濡れになっていた。

怒号を発する青年も見る限り貧しそうにも見えない。


「…それで払えないっていう証拠があるなら見せてもらえます?」

「うおっ!?なんだてめぇ!」

「ぎ、ギラさん…」


ギラがそこに割り込む。

そして青年に税金が払えないなら、それを示せと言ってみる。


「証拠?この貧しさが証拠としては充分すぎるだろうが!」

「ふむ、では飲水は確保され整備や舗装もされている、衣食住に困ってます?」

「た、確かに衣食住に困ってるようには見えません…」


青年は何かと無茶苦茶な理由をつけイチャモンをつけてくる。


「だったらなんだって言うんだ?税金を払えない程度には貧しいぜ?」

「ふむ、財布の中にはお金は入ってますね、このお金、どこで手に入れました?」


気づいたらギラは青年の財布を手にしていた。

その早業にリックも唖然としていた。


「これはお返しします、まあそのお金があって税金を払えない程度にはとか妄言です」

「こいつは一日を暮らすのにやっとの金額だ!」


そしてギラは続ける。


「まあ税金の滞納をこのまま続ければ差し押さえ、その先には追放ですかね」

「はっ!国にそんな真似が出来るのかよ」

「でも国民の義務を果たさない場合は、そうなるのは必然なんですが…」


青年はそんな事は出来ないと自信満々に言う。

ギラはそれに呆れ果てその場を引き上げる事にした。


「二度と来るんじゃねぇぞ!このクソガキ!」


だがギラは言うまでもなく下町の異様さに気づいていた。

本当に国は何も出来ないのか?それも疑問だからだ。

中流街に戻ると一人の軍人に出会う。


「君は旅人かな?下町に行って平気だったのかい?」

「ええ、特には」

「僕も特には…」


その軍人は自己紹介をした後下町の事を少し教えてくれるという。


「私はヨーゼフ、この国の陸軍の隊長だ」

「陸軍ですか、つまり陸海空を揃えていると」

「確かにアルセイムは軍国ですし…」


そしてヨーゼフは下町の現状を話してくれる。


「下町は二年前ぐらいからあんな感じでね、国も手を焼いているんだ」

「税金の未納、軍人への暴行、そんなところですか」

「確かにさっきも水路に…」


ヨーゼフは国王に進言し下町への対処を求めているという。

国も最初は甘く見ていたが、ついに腰を上げたという。

近いうちに下町の浄化作戦を計画しているそうだ。

差し押さえや悪質な住民の逮捕を一斉に行うという。

そして最終的にはこの王都から追放するという。

自分達にそれを話してもいいのかとギラは返す。


「君達は外から来た旅人だろう?それもウルゲントからの」

「ああ、この国の事をロクに知らないから話しても平気って事ですね」

「あはは…」


とりあえず国民に知られない範囲なら話しても差し支えはないようだ。

ヨーゼフは今後も下町には気をつけるようにと忠告する。


「分かりました、まあ何かあったら少しやっちまうかもしれませんが」

「ギラさん!」

「騒ぎにならなければいいけどね、では私は行くよ、それでは」


そうしてヨーゼフは巡回に戻っていった。

その日の夜ギラは下町の事も気になりつつ床に就く。


今後は西にある研究都市に行ってみる事になった。

どこの国にも闇はあるものである。


ギラの怒りはそんな愚民にも向けられる事となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ