骨からの手紙
大地の骨の残党の動きを窺い数日。
向こうから動いてくる様子はない。
だが向こうはギラ達が戻ってきている事は知っているだろう。
蟻地獄のようにこちらから出向くのを待っているのだろうか?
「結局この数日骨の残党は動きなしですか」
「戻ってる事は知られてるだろうにね」
「やはり来るのを待っているのでは?」
「面倒な奴らねぇ」
だがこのまま相手の動きがないのなら、乗り込むまで。
あと数日様子を見て動きがなければ乗り込む事で一致している。
「まああと二三日様子見ですね」
「あいつらはギラに対してめっちゃ憎悪燃やしてるけど、何かしたのかね」
「なんかボスの敵みたいな事を言ってたわよね」
「ボスを惨殺したとかですの?」
それについては言う事ではない。
ギラとしても変な世話をかける必要はないと思っている。
それでもあいつらは再起不能にしてやるとドス黒い炎を燃やす。
「ギラさんは肝心な事は言わないんですよ、意地悪ですよ」
「リックさんは私に深く関わらない方がいいかと」
「リックさんはギラ様にどこか憧れを抱いてる感じはありますよね」
「リックも変わり者だな、ギラはそんな人間にも見えんが」
それでもリックはギラの考えに多少ではあるが共感している。
それは魔王というものへの見方でありその意味でもある。
以前聞いたそんな話がリックの心に霧をかけているのだ。
「でも僕はギラさんがその考えでも全否定はしませんよ」
「おや、言ってくれるじゃないですか」
「リックって影響を受けやすいタイプなのかしら、若いっていいわね」
「モレーアがそれを言うの?」
なんにしてもここにいるメンツはそんなギラに惹かれているのだろう。
冷酷で残忍ながらどこか脆いそんなギラの性格を知っての事か。
「とりあえず少し外の空気でも吸ってきます」
「あ、待ってください」
「あの二人はなんか距離感近くなりましたよね」
「リックが縮めようとしているのか、勝手に構ってるのか、まあいいさ」
そうして街に出るギラ達。
「相変わらずついてくるんですね」
「僕はギラさんの部下でもいいですよ?」
リックも言うようになったものだ。
魔王というものの価値観、それを話したときからこんな感じである。
「はぁ、なんでそういう事になるんですかね」
「僕はギラさんが殺人鬼だろうと極悪人だろうと知りませんから」
そんなリックの純粋な瞳には勝てない。
ギラはその少年に昔の何かを見ているのかもしれない。
そうして街を歩いていると冒険者ギルドが目に入る。
「少し覗いていきますか」
「ですね、久しぶりに」
そうして冒険者ギルドへと入ってみる。
そこはいつものように依頼を請け負う冒険者で賑わっていた。
「何か依頼でも受けます?」
「それもいいかもしれませんね」
そんな中ギルドのマスターがギラ達に声をかける。
「あの、ギラさん達ですよね、こんなものを…渡せとしか言われてなくて」
「大地の骨の残党からの手紙…」
「感謝します、仕事に戻っていいですよ」
その手紙を確認したギラは小さく笑う。
今夜一人でアジトまで来い、そう書かれていたのだ。
宿に戻りそれを話す。
仲間達は心配しつつも行きたければ行けという。
ギラはそれを感謝し今夜一人でその森へと向かう事にした。
それは本物の魔王を知らない愚者への悪魔の笑いとなるのである。