最北の国の王
国王からの謁見希望を受けたギラ達。
とりあえずはそれに応じ一夜を明かす。
そして早朝、貴族の男に案内され王城へと向かう。
その城は小規模ながらも国の政治の中心でもあった。
「国王陛下!彼の者達を連れて参りました!」
「しかしなぜ国王が私達に会いたいと」
「知らん、悪い事をした記憶はないが」
「僕としてもそういう記憶はないですよ」
そうして謁見の間に通される。
そこには王には似つかわしくない風貌の中年男性がいた。
「あんた達か、外から来た客人っていうのは」
「なんか軽いですねっ」
「それで私達を呼んだのはこの国について知った経緯とかでも聞きたいとか?」
「手荒な真似はしたくないんですけど」
それに対し国王は笑ってみせる。
そして言葉を続ける。
「とりあえず最初に訊きたいのは、この国をどうやって知った?」
「そいつはアタシが知ってて、ここに行けばそれがあるかもって言ったんだ」
「コルド鉱石を手に入れるように頼まれただけです」
「それでソウの情報を頼っただけさ」
それに対して国王はソウに質問をする。
「ソウと言ったな、外界にすら情報を制限しているのになぜ知っていた?」
「そうだね、昔の仕事の関係で知ってただけかな、他にもいろいろ知ってるよ」
「仕事の関係ってソウさんの謎が深まるだけ…」
「なんかどんどん謎が増えていくんですが…」
国王はその仕事についても質問をしてくる。
「ならばその仕事とはなんだ?スパイか?傭兵か?外国で仕事をするのだろう?」
「そいつは答えられない、ただ命を捧げる仕事とだけ言っておくよ」
「本当に謎しかないわね…」
「謎というヴェールが何重にも重ねられていますわよ…」
国王もそれに対し質問を少し変える。
「ならばお前の年齢を訊こう、それでこの国の事情と合わせて少しは分かる」
「アタシの年齢?そうだね、その仕事の人間としては一番脂が乗るぐらいさ」
「うわぁ~、はぐらかしてますよ」
「国王相手に不敬罪になりかねませんわ…」
国王もそんなソウについて諦める。
とはいえこの国について知っている、それは仕事柄か年齢からか。
ギラ達の中でソウの謎がまた一つ増えたのである。
「とりあえずそれだけだ、だがシスターともあろう者がそんな態度なのか」
「アタシはシスターだけど神様を敬虔に崇めてるわけでもないんでね」
国王はそんなソウにとてもよく教育されたものを感じ取る。
それは秘密組織、あるいは裏の国家機関、そんな組織の何かだ。
「まあいいか、だがこの国の事は口外は出来るだけしないでもらうぞ」
「そいつは問題ないよ、アタシも不用意に喋るほど馬鹿じゃない」
そうして国王との謁見はヒヤヒヤのまま終わる。
とりあえずソウの謎はまた増えてしまっただけになった。
「それであんた達はもう帰るのか?」
「そうですね、せっかくですし明日にしますよ」
「この国の美味しいご飯とか食べたいですから」
「それからでも間に合うもんね」
貴族の男はそれに対し美味しい店を紹介してくれるという。
鎖国された国でもその国の料理を食べられる店はある。
大きな隠れ家みたいな感じだ。
「分かりました、ではお言葉に甘えます」
「うん、それじゃ夕方に宿に行くから期待しててくれよ」
「はいっ、楽しみにしておきますねっ」
「この国の料理、美味しいのかな」
そうして貴族の男と一旦別れ宿に戻る。
そして明日帰るための準備なども済ませておく。
「にしてもソウさんって謎だらけですよね」
「過去に何やってたんでしょうか」
「きっと暗黒的な仕事ですよねっ」
「翠さん、そういうのお好きですわね」
まあとりあえずそんなわけで夕方を待つ。
美味しい食事を食べて明日はミリストスに帰還する。
鍛冶屋に頼まれたコルド鉱石、それは冷気を内包する鉱石だ。
大地の骨の残党の事もあり、しばらくは落ち着けそうにないのである。