表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/240

薄氷の勝利

先日の複数戦から一夜明けた。

今日は残りの10人が複数戦でその記録を競う事となる。

今のところは先日ペトラが記録したものが最高だ。

そして今日の戦いではその記録は破られるのだろうか。


「さて、後半の10人が始まりますか」

「抜かれる事は常に覚悟しておきますわ」

「とはいえ相手の数を考えると簡単な話でもなさそうだがな」

「始まるのです」


そうしているうちに試合が始まる。

最初に出たきたのはシーツという剣士だ。


「さて、どうなりますやら」

「この手の試合にエントリーするからには強いんだろうけどね」

「ですよね、少なくとも侮れる相手ではないと思います」

「とりあえず30辺りまではほとんどの人が勝ち抜いているわよね」


そうしてシーツは36連勝で終わる。

その後も試合は進みその時点でペトラの記録は破られていない。

そして第六戦、出てきたのはツバキという名の和装の女の薙刀使いだ。


「あのツバキという人、どこかで見た気が」

「ギラさんもですか?」

「というか顔立ちがボタンにそっくりだ」

「関係者ですかね、試合後に接触してみますか」


そうしてツバキの試合が始まる。

ツバキはそのリーチを活かし、次々に相手をなぎ倒していく。

その姿はまさに一騎当千の如くだ。


ツバキは瞬く間に試合を消化していき50試合まできてしまう。

ペトラは彼女はこの試合に勝つと確信した。

タイムを運に任せる事にして、試合を見届ける。

ツバキは見事に50連勝を達成した。

そしてタイムが発表される、タイムは1時間17分だった。


僅差でペトラの方がタイムで上回る。

その後も試合は消化され全員の試合が終わる。

試合の結果の表彰は明日に行われるそうだ。

優勝者は表彰があるので街に残るようにとの事だった。


そんな中ギラ達はそのツバキに接触を試みる。


「あの、少しいいですか?」

「ん?うちの事ですかな」

「ああ、あんたボタンっていう奴を存じてるか」

「似た空気を感じたので一応話してみたくてね」


その名前にツバキはクスクスと笑う。


「ああ、ボタンはうちの妹です、うちは次女のツバキですわ」

「やっぱりなんだ」

「しかし今回は姉妹揃っていい勝負でしたわよね」

「はい、ボタンさんもツバキさんも凄く強くて」


ツバキはそんな家の事情もあるのか強さには貪欲なようだ。

ボタンと違い剣の才はないらしく武芸者として薙刀の道を極めているという。


「それにしても長い得物ですね、普通の薙刀より少し長くないですか?」

「こいつは薙刀というよりは長刀に近いものです、斬るのも突くのもいけますえ」

「薙刀って槍との違いは斬撃もやれる事だもんね」

「そういう意味では槍より万能感はあるな」


ツバキは剣術一族に生まれたものの剣の才はなかった。

だから才能がある薙刀を選んだそうだ。


「うちの家は剣術一族なんですが、他の武芸も達者でなぁ、面白いでっしゃろ?」

「確かにね、和の武芸一族というのも新鮮味がある」

「ツバキさんの強さもですけど、一族みんな強いんですかっ?」

「仮にも武芸一族だもんね」


ツバキ曰く才能がある武芸を極めさせるのが家の方針だという。

ボタンが剣の達人なのと同じように、ツバキも薙刀の達人なのだから納得である。


「なんにしてもうちは負けましたわ、妹のボタンとは別の道ですが、また旅に出ますえ」

「ふーん、旅に出るって事は武者修行とかなのかな」

「可愛い子には旅をさせよ、だね」

「大したものですよ、全く」


ツバキもそんな立場は自覚しているようだ。

そしてギラ達に一礼をして旅に出ていってしまった。


今回の御前試合で出会った武芸一族の姉妹。

その強さは本物であり、機会があればまた戦いたいと思わせる強さだった。

ハルミとペトラ、両者がそんな達人に勝てたのも偶然なのかもしれない。


次に戦うときは勝てるとは限らない、そんな強さを見た御前試合だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ