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試合後の穏やかさ

シングル戦はハルミの優勝で幕を閉じた。

複数戦は明日になるため、今日は一日休息になる。

試合場は明日の試合に向けた模様替えが始まっているようだ。

ギラ達はとりあえず適当に時間を潰す事にした。


「お、改装中かね」

「それにしても城内にこんな施設がある辺り、アルセイムですよね」

「だね、軍国ってだけあって兵士を育成するのにお金は惜しまないみたい」

「お隣のウルゲントは宗教国、島国のオルバインは商業国、世界も様々ね」


そんな話をしているとどこかで聞いた声がする。

そこにはボタンの姿があった。


「なに?私にまだ何か用事かな?」

「用事というか、あんさんの剣が気になりましてなぁ、少し話でもと思いまして」

「戦いのときとは別人ですね、随分と穏やかなものです」

「ギラさんはとりあえず喧嘩腰ですわよね」


そんなギラ達を見てボタンもクスクスと笑う。


「にしても冒険者や剣豪には見えまへんなぁ、それなのにあの剣、どこで覚えたどす?」

「あれは昔通ってた剣術道場のものだよ、一応流派の後継者に指名された事もあるし」

「才能はあるって事か、まああれを見せられたら嫌でも分かるか」

「それにしてもボタンさんも、その剣は我流ではありませんよね?」


その質問にボタンも答えてくれる。


「うちの剣は家の流派どす、男が生まれないのでうちが受け継いだだけどすえ」

「本来は男が継承するものなのか?」

「でも男が生まれないから仕方なくボタンさんが?」

「でも男系の家で男が生まれないって意外とあるんですよね」


ボタンも家の事情は知っているという。

先代、ボタンの父以降生まれる子供は全て女だったらしい。

家では流派を受け継ぐために側室を多数設け、子を作らせているという。

だが今までに10人の子を成したものの、全て女だったそうだ。

ボタンはそんな10人姉妹の3番目、一番素質があったから選ばれたという。


「不思議なものどすなぁ、男系の流派で女のうちが受け継ぐのも苦肉なんどす」

「ある意味呪いかとも思いますね」

「うーん、でもそれについては操作出来るものでもないもんね」

「それこそ人工的にでもない限りは難しい話でしょうね」


だがボタンもそれによって世界が変わったのも事実らしい。

強くあるというのはとても難しいのだと言う。


「とはいえ負けないというのも悲しいものどす、負けるというのは強者の特権どすえ」

「負けは強者の特権、それがお前の持論なのか」

「とはいえそれを美談にするようでは、人はそれに甘え堕落してしまいますが」

「散り際の美学は好きですよ?でも敗者の美学は嫌いですね」


そんなギラの言葉にボタンも敗北の意味を自分なりに語る。


「そうどすなぁ、敗北は美談にしたらあきまへん、勝てなかった事の言い訳どす」

「結局は世の中は勝者こそが正義であり、歴史を作る資格があるって事ですか」

「でもリックさんの言う通りだと思いますわよ」

「だね、勝者は歴史を改竄し自由に書き換える権利を得る、そんなもんさ」


ボタンも今回は自分が敗者だと認めている。

だからこそ言い訳はしないのだそうだ。


「でもボタンも今まで負けなかったからこそ言えるのよね?」

「そうどすなぁ、負けたのは本当に久しぶりで、どこかスカッとしてますえ」

「ふむ、負けた事で縛っていたものが壊れたのか」

「かもしれませんね、楽になったって顔はしてますよ」


そんなボタンはハルミにもっと強くなれと言う。

それは自分を負かしたのだから、無様に負けたら許さないという事である。


「さて、うちはまた自由気ままに旅に出ますえ、どこかで機会があったらまた」


そう言ってボタンはその場を去っていった。

ハルミも彼女なりに重圧を背負っていたのだとは理解した。

だからこそ強さの意味を改めて再認識したのだろう。


明日は複数戦、ペトラが出陣するのである。

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