思わぬ強敵
ベゼスタの勝ち抜きから一夜明けた。
ギラ達はせっかくなので、ダンの試合も見にいく事に。
第四ブロックに配置されたダンは勝ち抜けるのか。
そしてこのブロックで思わぬ相手を目撃する事となる。
「相変わらず賑わってますね」
「ですね、あのダンとかいう戦士も喧嘩を売ったからには負けてもらうと困ります」
「なんだかんだで気にかけてるのか」
「なんか意外な感じですわね」
そうしているうちに会場が騒がしくなる。
そして第四ブロックの試合が始まるのである。
「第一試合はブランコとスコットの戦いですか」
「やっちまえオラアァァァァァァァァァ!!!!」
「触らぬ神に祟りなしですわね」
「あ、始まりますよ」
そうして試合が始まる。
白熱した第一試合はスコットが勝利する。
その後第二試合も問題なく終わり、第三試合にダンが登場する。
その相手はクルーズという槍使いだ。
「参加したからには優勝狙わねぇとな」
「僕は君に勝って上に行く、覚悟してくれ」
お互いに一礼をして試合が始まる。
「いくよ!」
「来いよ、相手になるぜ!」
その試合はクルーズが優勢に見えつつも、ダンが確実に攻めていた。
そしてクルーズがバテ始めたところでダンが確実に決める。
そうして第三試合はダンが勝ち抜ける。
「うっし、順調だ」
そのまま試合は進む。
そんな中第六試合に登場したボタンという名の女剣士にギラが目を向ける。
「あの和装の女剣士、強いですよ」
「ギラも気づいてたか、あのはんなりとした身なりからは想像も出来ないだろうさ」
「そんなに強いんですの?」
「僕でも分かります、彼女の空気は常人のそれじゃない」
第六試合のボタンとマテオの試合が始まる。
だがその試合に観客も参加者も驚きを隠せない事となる。
試合はボタンの危なげない勝利。
しかしその勝利はほぼ一方的なものだった。
開始から数秒、彼女の剣が動いたと思ったときにはマテオが地に伏せていた。
それは一瞬のうちに相手を斬り捨てる神速の居合だとギラは見抜く。
「ソウさん、見えましたよね」
「ああ、あんな速い居合は久々に見たね」
そうして試合は進む。
ダンとボタン、どっちも順当に勝ち上がっていく。
「このままいけば決勝はダンとボタンになるね」
「正直試合を見る限りダンさんが勝てる要素が見当たりませんわ」
「彼女は本物の侍ですよ、それも速度に特化した」
「はわわっ、凄い人が出てきちゃいましたっ」
そして決勝の対戦相手が出揃う。
思った通りにダンとボタンである。
「あんた、強いんだな」
「はい、うちはこう見えて武士道を修めてはります」
ボタンの空気は嫌でも分かる。
近づいただけで空気に斬り刻まれそうな張り詰めた空気。
そして穏やかな顔とは裏腹に獲物を捉えた狼のような眼光。
その全てがダンに勝ち目がない事を感じさせる。
「だがな、俺とてはいそうですかって引けねぇのさ」
「さいですか、ならその顔を敗北に染めて差し上げます」
そうして試合が開始される。
ダンは当然警戒している。
だがそんな警戒を嗤うかのように、その剣が牙を剥く。
「っ!?」
「おや、一撃は耐えはります?なら耐えられないだけ打ち込ませてもらいます」
そのままボタンの斬撃の嵐がダンを襲う。
なんとか耐えていたダンも限界に達し、その斬撃に飲み込まれる。
ダンは膝をつくが負けていないという。
それに対しボタンは獣が獲物を仕留めるかのような一撃を叩き込む。
その一撃でダンは完全な敗北を喫する。
「ふむ、少しは面白い相手でしたえ、少しは、ですが」
その戦いに大歓声が沸き起こる。
決勝に進む前の前哨戦はベゼスタとボタンになった。
ハルミはそんなボタンに自分の全てをぶつける決意をした。
ベゼスタは彼女には勝てない、それをハルミは悟っているのだから。
思わぬ番狂わせを起こした女侍ボタン、その剣はハルミの闘志に火をつけた。