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商人の見ている世界

※これはブルクハルトの視点で見たお話です。



私の名はブルクハルト。

一代でその富を築き上げた商人だ。

昔から経済や貿易についてはよく学んでいてね。

世の中の回る仕組みもよく知っている。


ヘンゼル様、いやリックと言うべきかな。

彼の家を潰した事で彼からは憎まれているし恨まれてもいる。

だが私はその事について一切の後悔も反省もしていない。

私はあくまでも経済を回すために商売をしているに過ぎない。


私は金を使わない人間が大嫌いだ。

金を使わずに貯め込む人間に対しては、ドス黒い憎悪を持っている。

もちろん貯金を悪いとは私は言うつもりはない。

私が言いたいのは使われもしないのに、その金を貯め込む行為だ。


貧しい人間は金を使ったという事で快楽と安心を得るという。

それは手元にあるのなら使わないと不安になるという心理らしい。

そういう意味でも金を貯め込む老人や貴族よりずっと尊敬に値するよ。

金とは使ってこそ意味を成す、貯金は大切だが老後とか抜かす奴は許さない。


人はいつか死ぬんだ、死んだらその大金はどこへ行く?

税金として回収されるのか?それとも子孫に相続されるのか?

いずれにせよ必要以上の貯金は私は嫌いだ。

若いうちは貯金は大切だ、だが歳を取るとその貯金への憎悪を感じる。


この世界にはそんな老人や貴族が貯め込んでいる金が恐ろしい額であるという。

私はそれを合法的に使わせ経済を回すのが仕事だ。

過激と言われようとも、家を潰すぐらいの金額は使わせる。

老い先短い老人にとってその金を死ぬ前に世界に貢献させてやろうという事だ。


そんな私は今日もとある老貴族相手に商売をする予定だよ。


「ここか、すみません!」

「どちら様でしょうか」


こいつが今回の標的。

この老貴族の趣味や趣向はリサーチ済みだ。

金を使わせるには、相手の欲求を刺激する事こそが正攻法であり王道だよ。


「面白いものを仕入れましてね、コレクターと聞いたのでいかがかな、と」

「こいつは…年代物の象牙の彫刻!こいつを売ってくれるというのか!」


食いついたね。

あとはこれを確実に売り捌く。

その後も私のルートを使い定期的にそれを仕入れ買わせるのさ。


「ええ、お金はあると聞いています、ですが値段は…正規の値段でいいですよ」

「それなら買わせてもらう!少し割高でも構わん!」


値段とは安く見せる事が、相手を動かすコツだ。

10000と表記するより、9980と表記するような感じだね。

差額はわずかなのにその差で安いと錯覚するのさ。

その結果ほぼ10000で売れる、それが心理であり数字のトリックさ。


「では、49800でお売りしましょう、正規の値段より少しお安くね」

「よし、買った!」


ちなみに数字のトリックは他にもあるのだよ。

例えば定価が45000の買い切り商品があるとしよう。

もう片方は定額サービスで一ヶ月に10000だとする。

一年を通してみると前者は安い買い物だが、後者は割高になってしまうね。

だがそれこそがトリックだ、人はその場の値段を焼き付けるように出来ている。

つまり長く使うものであれば、その場では高くても結果としてお買い得になるのさ。


「ふむ、確かに50000いただきました、他にも欲しいものがあればどうぞ」

「欲しいものを揃えてくれるのか、なら次のものを揃えてくれ」


こうして今回の商売も見事に成功だね。

あとはこの老貴族に定期的に買い物をさせ金を吸い上げるだけさ。

さっきも言ったが私は金を使わない人間が大嫌いだ。

それが老人や貴族ならなおさらにね。


私の商売はあくまでも合法、正規の手段で行うのさ。

ふっかけたりしたら何も買ってもらえない、そんなのは言わずもがなだろう?

私の商売はそんな相手の心理と綿密なリサーチによって成り立つのさ。


さて、ではこの老貴族の望むものを揃えるとしようかな、ふふふ。

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