金剛石の廃墟
ミリストスに戻ったギラ達はそのままアヌシスの家に向かう。
次の秘境について聞き、再びその秘境へと向かうのだ。
忙しなく動いているものの、それは自然と楽しいと思える。
本来の目的は忘れてはいないものの、今はこの世界をエンジョイするのである。
「戻りましたよ、言われた通りゼルキスの滝の写真を撮ってきました」
「ふむ、間違いなくゼルキスの滝ですね」
「では早速次を依頼してもいいですか?」
「構いませんよ、ただし終わったら思いっきり休みますが」
そうして次の秘境についてアヌシスが教えてくれる。
次の秘境は金剛石の廃墟という遺跡らしい。
「金剛石の廃墟?それってつまり金剛石で作られた遺跡か何かですか?」
「はい、場所は東にある砂漠の島の東の方だそうです」
「砂漠の島、地図だとどの辺りですか?」
「地図だと大体この辺りになります、南東の方角ですね」
キスカがその島のある場所に印をつける。
「分かりました、では早速行ってみますね」
「ええ、廃墟はなるべく全景が収まるようにお願いしますね」
「分かった、ではそうさせて貰う」
「それでは行って参りますわね」
そうして屋敷を出て街に行き準備を整える。
今回は別の場所とはいえ再びの砂漠である。
水を多めに用意し冷却剤なども多めに揃える。
準備を進めていると一人の女性とぶつかってしまう。
「あ、ご免」
「いえ、こちらこそ…あなた、若しかして冒険家ですか?」
そのぶつかった女性は荷物からして冒険家のようだ。
ギルドに所属する冒険者とは異なる、言わば探検家に属する職業である。
「もしかしてあなた達もどこか冒険に行くの?」
「ええ、少し南東にある砂漠の島まで」
彼女はそれを聞いて羨ましいと言う。
自前の空の移動手段を持つなどそれだけで冒険家としての範囲が広がるからだ。
「でも私もいろいろ行ってるけど、空からは行けないもんね」
「私達は今はいろんな冒険をしていますしね、空の移動は快適です」
彼女は悔しそうにしてみせる。
とりあえず時間も惜しいので長話はせずにそのまま出発する。
「あ、そうだ、私はメノウ、帰ってきたら話でも聞かせてよね」
「ええ、それでは私達は行きますね、メノウさんもお気をつけて」
そうしてメノウと別れソルバードで南東の方角へ飛ぶ。
空を移動しているとそれらしき島が見える。
とりあえず着陸出来そうな場所を見つけそこにソルバードを停泊させる。
島に降り立ったギラ達はその砂漠で金剛石の廃墟を探す。
島自体はそこまで大きくはない。
廃墟のある場所は東の方角だそうだ。
とりあえず砂漠を東へと歩き始める。
「あっついですねぇ」
「砂漠なんだから暑いさ、仕方ないだろ」
「口に出すとよけいにそう感じるからね、寒いと思えばいいよ」
「思いっきり精神論なのですっ」
ハルミの精神論はさておき、考え方次第ではある。
暑いと思うから暑いというのも満更でもない。
とりあえずは暑さに耐えつつ砂漠を東へと進む。
砂漠を進んでいるとサボテンが目に留まる。
サボテンは水分の豊富な植物である。
まあ食べようとは思わないのだが。
「サボテンか、ステーキにすると美味しいんだよね」
「サボテンステーキですか?」
「確かにそういう食べ方もありますけど」
ソウ曰くサボテンステーキは美味らしい。
意外と変わったものが好みのようである。
「少し採ってってあとでステーキにでもするかな」
「まあ採ってもここなら怒られないとは思いますけど」
「サボテンステーキ…どんな味なのです?」
「私に訊かれても困りますわよ」
そんなわけでサボテンを少し採取する。
ソウがあとでこれをステーキにしてくれるらしい。
「それじゃ進みますよ」
「ですわね、さっさと終わらせたいですわ」
「とはいえ焦らずにね」
そうして砂漠を進む。
島自体は広くないとはいえ、それでも広いのに変わりはない。
日が落ちるまでには少しでも多くの距離を稼ぎたいところだ。
「ふぅ、進んでる感覚が分からなくなりますね」
「周囲に岩場とかがあるとはいえ基本的に似た景色が続くからな」
「私もこういうところを歩いてると逞しくなったなって思うよ」
「ハルミは一般人なのにね、凄く逞しいというか」
ハルミも単なる一般人ではないという事か。
剣道をやっていたと本人は言うので体力はあるのだろう。
ギラ達についてくる事からも基礎的な体力は備わっていると分かる。
「まあいいです、さっさと進みますよ、暑いのは勘弁ですし」
「嫌な環境だとやる気になるのはさっさと帰りたいからなんですよね」
「ですねっ、ギラ様らしいですっ」
「さっさと終わらせたいから本気出すって、力入れるのそこですの」
そうして進んでいるうちに日が落ち始める。
今日はここで野営である。
モレーアのコテージハウスを展開し夜の準備に入る。
砂漠の夜は冷えるのでしっかりと休んでおく事に。
明日は早朝から金剛石の廃墟を目指して歩く事になる。
そんなわけで明日に備え栄養をキチンと摂ってしっかりと寝ておく事にする。
そうして砂漠の夜は過ぎていく。
冒険にもすっかり慣れたものである。
そんな楽しい時間は当分終わりそうにないのだから。




