大滝と開かない箱
渓谷で一夜を明かしたギラ達。
早朝からゼルキスの滝を目指し歩き始める。
半分は歩いたので滝まではそんなかからないだろう。
滝を写真に収めた後そのまま帰る時間は充分にある。
「さて、さっさとゼルキスの滝まで行っちゃいますかね」
「ですね、今日中にミリストスに帰る時間はありますよ」
「それにしてもリックも体力ついたんじゃないか?」
「そりゃ散々動いてるんですから嫌でも体力つきますよ」
リックもなかなかに逞しくなっている。
ギラが振り回しているのはそれだけ体力をつけているようだ。
「それじゃさっさと行くわよ」
「はいですっ」
「モレーアさんって見た目の割に体力ありますわよね」
「逞しいなぁ」
そうして渓谷をどんどん進んでいく。
もうリックの体力は魔法使いとは思えないぐらいについてしまった。
スタミナが異様についてしまったのも大体振り回しているせいである。
「そういやブルクハルトの言ってた滝壺の開かない箱ってのが気になるね」
「そういえばそんなの言ってたね、一応その箱も調べてみる?」
「本当かはともかく探検家が見たと言うなら本当なんでしょうね」
「開かない箱、思い当たるのは特殊な鍵が必要とかですか?」
開かない箱ともなれば鍵が特殊なのだろう。
どんな鍵も開けられるような魔法の鍵でもあれば話は別かもしれない。
とはいえそんな鍵は当然持ち合わせていないので。
「まあいいさ、鍵が必要なら鍵探しもしてみる価値はあるだろ」
「鍵探しですか、本当にあるのならですけどね」
「それも別件として覚えておくか」
「なのです、鍵が必要なら鍵を探すのです」
だが箱を実際に見ないとその鍵については分からない。
滝の写真を優先しつつもその箱もきちんと調べるだけ調べる事に。
そんな話をしながらギラ達は渓谷を進んでいく。
渓谷を進んでいると森の中で野イチゴらしきものを見つける。
「これって野イチゴですか?」
「こいつは恐らくダークベリーだね、酸味が強いからジャムとかにするらしい」
「生でも食べられるんですかね」
「食べられるとは思いますけど自然のものを直接食べるのは危険ですよ」
まあそれもそうだ。
下手に自然の木の実などを食べてお腹を壊すのは勘弁である。
「なら適当に摘んでいきますか、あとでジャムとかにしてあげますよ」
「なら頼みますね、メーヌは料理のプロですし」
「ダークベリー、真っ黒ですわ」
「なのです、酸味が強いのですか」
とりあえずダークベリーをたっぷり摘む。
そうして本来の目的である滝へ向けて再び歩き出す。
歩く事数十分。
滝の音が聞こえ始める。
「滝の音がします、行ってみましょう」
「やっとですかね」
そうして音の方へと進む。
そこには大きな滝が大きな音を立てて流れ落ちていた。
「とりあえず写真ですね、ゼルキスの滝はこれで間違いないです」
「ならさっさと写真に収めちまいな」
そうしてゼルキスの滝を写真に収める。
そのあとは例の箱を探して滝壺を調べる。
「確かに洞窟があるね、少し見てくるから待ってな」
そう言ってソウは洞窟の中へと入っていく。
「開かない箱ってこいつか、鍵穴はある、一応鍵開けの技術はあるし試してみるか」
ソウは手持ちの針金を使い鍵を開けられないか試してみる。
だが鍵は開く様子はなくお手上げである。
「やっぱり無理か、だとしたら特殊な鍵が必要と見て間違いないね」
その後も箱を適当に弄ってみる。
だが結局はびくともしないので今は完全にお手上げである。
「あ、どうでしたか」
「箱は確かにあった、でも鍵は開く様子もないしびくともしなかったよ」
「そうですか、なら一応覚えておいて機会があったら再度来ますか」
「だね、それがいいよ」
とりあえず目的は達した。
箱の事は今は諦め、そのまま来た道を引き返す。
ソルバードまでにはなんとか到達出来そうな距離である。
渓谷を引き返しソルバード目指して迅速に歩を進める。
道はメーヌが記憶しているので問題なく戻れる。
そうしてしばらく歩きなんとかソルバードへと戻ってきた。
ソルバードに乗り込みミリストスへと戻るギラ達。
そんな中行く前にすれ違った黒服の事が気になっていた。
「そういえば行くときにすれ違った黒服って結局なんなんですかね」
「あの人ですか、悪い人…なんですかね」
「でも屋敷で暮らしてるんだしお金はあるんじゃない?」
「だとしたら別の何か…なんだろうかね」
その黒服の正体について考える。
少なくとも借金の取り立てではないだろう。
ではなんだというのか。
別の何かの業者的なものなのだろうか。
それを考えつつも今は依頼をこなすのが先である。
次の秘境について聞くべくミリストスへとソルバードを飛ばす。
今回の依頼は珍しいものも見れていいものだと思っていた。
そんな中珍しい魚は結局見れなかったと思い出し、まあいいかと思っていた。
そうしてミリストスに戻ってきたギラ達。
アヌシスに次の秘境について聞きに向かう。
ついでに鍵については知ってそうな人に当たってみる事にした。
秘境探しを楽しむギラはリックを逞しく育てているのである。