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人生の時間

カーミンスを出発したギラ達は街道を進む。

そうして一時間程度歩き、次の街のストロソーに到着する。

その街は、この先にある王都への関所の中継地点だ。


「ここは比較的小規模のようですね」

「ですね、とはいえいい匂いもしますよ」

「ここは王都への中継地点ですから」

「そうなんですか?」


王都へ行くには冒険者の証明書など、何か身分を示せれば行けるという。

王都は警備が厳重なので、関所を設け入れる人間を制限しているらしい

とはいえ基本的には国民のほぼ全員が何かしらの身分証明は出来る。

出来ないとしたら家を持たない人間などだろうか。


「さて、それでは…」

「あっ、てめぇあのときの!」


どこかで聞いた声がした。


「えっと、どちら様でしたっけ?」

「以前てめぇにやられたゴールドランクの戦士だ!」

「そういえばそんな人もいましたね」


どうやらすっかり忘れていたようだ。

戦士はギラにリベンジを申し込むつもりのようだ。


「そういや名乗ってなかったな、俺はダン・ゴンザレス、てめぇを倒す男だ!」

「そうですか、それでは」


華麗にスルーしようとするもそれを強引に引き止める。

ギラのスルースキルはある意味極めているのだが、そうもいかないらしい。

ダンはリベンジに燃えているようなので適当に構ってあげる事に。


「では街の真ん中で決闘するんですか?」

「おうよ!街の人間に怪我はさせねぇさ」

「どうします?」

「勝てるわけないと思いますけど…」


ダンはやる気満々のようだ。

ギラも面倒になってきたのでさっさと終わらせる事に。

その騒ぎに人が集まってきた。


「はぁ、ならさっさとやりましょうよ、ダルいですし」

「そうこねぇとな!そんじゃ始めると…」

「おっと、喧嘩はよろしくありませんな」


突然一人の老人が割り込んでくる。

ギラはその一瞬の出来事に少し驚いていた。


「なんだ、爺さん、俺達は今大切な決闘の…」

「まあまあ、血気盛んなのは結構ですが、その様子だと早死しますよ?」

「…拍子抜けですね、やめです、やめやめ」


ギラは完全に拍子抜けしたのか、剣を鞘に戻し立ち去ろうとする。

すると老人がそれを引き止める。


「そこのお嬢さんは先日スカド山でお会いしましたね、少しお話でもどうです?」

「別に話す事なんてないですよ?それとも私を口説くおつもりですか?」

「なんなんだよ、おい!また機会があったらリベンジするぞ!それまで負けるなよ!」


そう言ってダンはその場を去っていった。

ギラはどうせ暇なのだし少しは話をしてみようと思った。

近くにある公園に移動し老人と少し話す事に。


「さて、お嬢さんはなぜ旅をしているのですか?」

「理由ですか?暇潰しですが」

「まあその通りなんですけどね、嘘は言ってませんし」

「でもお爺さん実は凄い人なんでしょうか?」


リックは老人が只者ではないと思っていた。

そんなリックの問いに老人は少し経緯を語り始める。


「私も昔はやんちゃでしてね、とはいえ人生の時間は有限、それが今に至る理由です」

「まあ人間の人生なんて長くても100年、そんなもんですしね」

「ギラ様は何かとありますしね」


そして老人は一冊の本を取り出す。

その本は老人の人生そのものなのだという。


「この本って魔道書ですよね?でも完全な手書き…」

「私はこの本を託せる人を探しているのですよ、それで世界を放浪中です」

「うーん、これはメーヌには使えそうにありませんね」

「あのメーヌが使えないとなると凄い魔法なんですかね?」


そんな魔道書にリックは一際興味を示していた。

リックも将来は大魔道士になると夢見ているからだ。

そんな中リックは老人に魔道書について尋ねる。


「この魔道書ってもしかしてお爺さんが書いたんですか?」

「そうですよ、あなたなら使えるかもしれませんね」

「リックさんがですか?」

「でも魔法の素質はあるみたいですからね、技量はまだ未熟ですが」


そして老人はリックに一つの話を持ちかける。


「ではあなたが今後素晴らしい成長を遂げたとき、これを託しましょうか?」

「でも…僕なんかには…」


リックも恐れ多いのだろう。

だが老人はそれを見透かすかのようにリックを気に入ったようでもあった。


「おっと、私はそろそろ行かなくては、どこかでまたお会い出来るといいですね」

「ええ、死んだら許しませんよ?」

「ギラ様も結構なブーメランですよねぇ」

「まあギラ様はブーメランでも気にしないタイプですけど」


そう言って老人は去っていった。

だが老人はリックに目をかけているようだった。

リックも不安ながらも成長してみせると誓う。


「さて、それでどうします?」

「ここは中継地点ですからね、そのまま王都に向かっちゃいましょうか」

「では決まりですかね」

「そうですねっ、そのまま王都に行っちゃいましょう」


そうしてストロソーを出発しそのまま王都に向かう。

王都ゾルゾーラはウルゲント最大の都市でもある。

そして国王、宗教国なので正しくは教皇が居を構えている。

ギラ達は通行証の発行をしてもらい、隣国のアルセイムを目指す。


街道を進むと王都へ続く関所が見えてくる。

関所で身分を提示すればそのまま王都へは一本道だ。


「止まれ、身分を示すものはあるか?」

「これでいいんですよね?」


そう言って四人は冒険者のバッジを見せる。

関所の役人はそれを本物と確認し通行許可をくれた。


「では進むといい、よい旅を」

「それじゃ行きましょう」


そうして関所を突破し王都の領地に足を踏み入れる。

そんな中王都を目指す商人に遭遇する。


「おや、王都に行かれるのですね、最近は物騒な噂もあるのでお気をつけて」


物騒な噂?それが気になり少し聞いておく事にした。


「実は最近王都で政治家が何人か不審死をしているとの話なんですよ」

「政治家の不審死…まさかとは思いますけど…」

「多分ギラ様の思っている通りではないかと」


思い当たる節はある。

それは大地の骨だ、正義のために人を殺すのも奴らならやるだろう。

だがその調査の甘さを見ているギラは、再びドス黒い炎が燃える。

通行証の発行には数日必要だ。

それまでの間に少し探りを入れる事にした。


「分かりました、感謝します」

「ええ、それでは私はもう行きますね」


そう言って商人は一足先に王都へ向かっていった。

ギラ達も王都へと歩を進める。

その心にはドス黒い炎が燃えていた。


ストロソーで再会した老人とまたどこかで会える事を期待しつつ。

ギラはその正義を憎悪しているのはリックには隠しながら。


王都での滞在は数日になりそうですね。

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