FILE0:3年生、はじまりの季節。
■1■
雪が降っているように見えた…。
窓辺の近くが自分の席だと知って、入って俺はゆっくりと
歩いて前から4番目という一番イイ席に選ばれた。
もう真新しくもない制服はこの学校に何年いたのか、よく
わかるようだった。
もう制服は少し小さい気がして俺、金銅 ユキはそう思いふけていながら
も自分の前の男を見た。
俺の髪の毛は色素が足りないような黒茶な髪の毛に対して、
ユキの目の前の男は金髪だ。
「・・・お前、また髪の毛・・・」
ユキは眉が下がり小さな声で前の男に声をかけた。
「あぁ、いいだろう?今年新しく出た色なんだよ。」
とユキの声とは正反対にケラケラと笑う声にも似た。
金髪でユキよりもちょっと背が大きい、それに恐ろしいくらいに
人気で頭がいい。
前は赤色、その前はメッシュで緑を混じらせていたときもあった。
「こら!ダブル『コンドウ』!少し黙ってろ!」
ほら、ついに先生からお咎めの声まで上がっている。
ユキは黙りこくっていたが前で座っていた金髪の男が
立ち上がりにへらっと笑って「すいませんっしたー!」と軽く
いうものだからクラスにいる全員が笑ってしまい、SHRじゃなくなって
しまった。
金堂ユキ、これは俺の名前。
ユキというのは生まれたときが冬で雪が降っている日だから、だろう?
といわれるがそうでもない。
むしろ冬で雪が降っている日とは正反対で俺は『春、桜が舞う季節』
に生まれたのだ。
母が桜の花びらを見て綺麗な為についつい『桜』が『雪』に
見えたらしくてユキとつけてしまったらしい。
でも、そんなんだからか…俺は春がすきなのかもしれない。
「なぁ、ユキ!今日は部活休んでスミレちゃんとカラオケいかないか?」
きっと楽しいと思うんだよな。とさっきのSHRが終わった直後に
いすを俺の席に向けて話し始めた。
こいつの名前、近藤アキラ。
俺とは正反対な性格をしていてムードメーカー的存在。
そんな俺とアキラは同じ学校、同じ部活、同じクラスで幼馴染。
ここまでそろっていると気持ち悪いくらいだがそんなのは関係ない。
「スミレ姉さん?今日は会議があるっていってなかったか?」
ユキはそういうと「大丈夫だよ!」と笑ってアキラがいうものだから
彼に任せよう、と思ってしまう。
でも、やっぱりスミレ姉さんは今日は会議の長引きで
出られなかった様だ、それに…今日はどうしても部活をしなければいけないのだ。
■2■
3年生の4月というのは恐ろしいものがある。
それは前の2年生のクラスへ行ってしまいそうになることだ。
ユキ・アキラの学校は学年が上がるたびにクラスが下がる…
つまり、1年生は4階まで階段で歩いていかなければならない。
ということは、3年生は2階なのだから2階まで行けばいいものを
習慣だったのかついつい2年生の階まで上がってしまうのだ。
すると後輩たちからからかわれる。
・・・あぁ、また今年もやってしまった、と結構ブルーになるものだ。
そんな日があって数週間後の10分休み、
「こら!近藤!」
「えあ?…あぁ、としっちゃんじゃないっすか!」
定年したのに大丈夫なのかよ?とあっはっはと相変わらず笑っていう
アキラに隣で俺は笑ってしまった。
あれほど廊下を走るなといっただろうと小言を言う前だった。
俺たちもよりも背が小さく、めがねをかけていて笑うと少しやさしい表情を
してくれる、このスーツが似合わない60代のじいさんに
アキラもユキも笑い返した。
「としっちゃん先生も今年で定年だったっけ…」
「あぁ、ダブル『コンドウ』には世話をよくかいたよ。」
髪の毛はふさふさとはいえないがこの年でないのは正直どうだろう。
ちょびちょびっと髪の毛があるくらいでアキラもユキもこの先生が
頭を掻くたびに苦笑いしてしまう。
進路担当で長年この学校に勤めていて、ユキ・アキラの部活の顧問で
あった、岩野利 敏郎(いわのり としろう)先生は今年、定年退職をされた。
といっても、ついさっき…なのだが。
「かいたんじゃなくて「かいてやった」んですよとしっちゃん!」
「こらアキラ。」
「いいんだよユキ。」
「でもとしっちゃん先生。」
「アキラ、お前せっかく部長になったんだ、頑張れよ。」
「任せなよとしっちゃん!」
俺が全国制覇してやるって、とまるで本当に全国制覇をする勢いのアキラに
先生もユキも少々笑ってしまう。
彼、アキラのそういうところは俺も好きだ。
先生、俺はもう少し先生と部活をしたかったよ。
「としっちゃんの代わりに、誰が顧問やんだろうな。」
「わからないな。まだ決まってないしな…」
今日の議題、部活が休みな水曜日の放課後の俺たちが最近やりはじめたのが
『議題』ごっこ。
回答者が一番前の席に座って議題者は黒板の前で議題名を
書くだけ、あとはだべってから時間をつぶして帰る…無駄な時間かもしれない(笑)
今週の議題内容が書かれている。
『顧問勧誘』について…。
あれ?としっちゃんじゃないのか。
「だよな、俺たちの代は全国までいってなかったしな…」
結構落ちこぼれかも知れないな。とつぶやきながら黒板に背を向けている
先生がよく使う教卓の前でアキラは野だれていた。
夕焼けが俺たちをつつんで、全てのやる気を奪っているよう。
「でも、今年はイケるきがするよ。」
「…あ、来週にある新入生歓迎会?」
ユキの言葉にそう!と笑って自信な笑みを零しながらも
また黒板になにかを書き始めた。
「確か、今年の1年に腕がいいやついるってきいたからな・・・。」
「・・・なるほどな。」
「それに、俺もお前も強いしな。」
その言葉に、俺は何度羨ましいと思っている?
「さて、今日の議題は終了。」
「・・・答えは?」
俺の言葉に、アキラは笑って言った。
次の新入生歓迎会が勝負だと。
・・・っておい、結局顧問の話から脱線してるっての。
はじめまして、初投稿になります。
まだまだアキラやユキたちが動き出すほんの助走
なおはなしですがあらすじにあるとおりの事が起こり始めます。
なぜそこまでなってしまうのか…
いろんな妄想を膨らませながら待ってやってください。