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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第2章 変わらぬ想い
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敵か味方か

翌日。"魔剣"確保任務の前に、マキナがもう1人合流する人間がいるとのことで、町の入り口付近でその人物を待つことになった。



「どんな人なの?」

秩序の守護者ギルド・ガーディアンNo.13。"オラクル"事変に参戦して、あたしとキニジ以外に唯一生き残ったやつよ。腕は保証するわ、腕はね」


聞くと"タスク"とも親好が深いとのことだ。

変人の集まるところには変人かやってくるのか、No.13を含めて"タスク"の関係者は癖がある人物が多いとも言っていた。

じゃあマキナもそうなのかと聞くと「ガキのころマトモな人生送ってないのに、マトモな人格になるわけないでしょ」と返されてしまった。

そうではないと言い返したかったが、その前にそっぽを向かれてしまった。





「そろそろ時間ですわ。その方はまだ来ないのですか?」

「おかしいわね…。アイツは時間に遅れるような無責任なヤツじゃないと思うんだけど」


むしろ先に着いて待っていることの方が彼らしいという。

それだけ真面目な人物が遅れるとなると少し不安になりはする。


「周りにいるのはゴツい鎧を着込んだやつくらいか。…おせぇな」


確かに周囲には、街の門番か何かだろうか?全身を鎧に包んだ人物がいるだけだ。

しかし、昨日あのような人物を見た記憶がない。なんとなくだがこちらを見ているような、そんな感じがする。


「あ、そいつよそいつ」

「はぁ!?」


マキナが指を指しているのは、全身にゴツい鎧を纏った人物だ。

しかし、どうみてもギルドメンバーには見えない。




「ちょっと、ナハト!アンタそこで何してんのよ!」


マキナがナハトと呼び掛けると、その鎧の人物は気がついたようにこちらを向いた。


「…む、マキナ君か!」


ガシャンガシャンとうるさい音をたててこちらへ歩くナハト。

当然だが顔は見えず、その手には武器らしきものもない。

憑依術式リチュアの使い手かとも思ったが、現在ギルドが認めている術者はキニジと――仮ではあるものの――エリーだけだ。



「すまないなマキナ君!少々道に迷ってしまってな、はっはっはぁ!」

「…うるさい。それに妙に足を停めてた気がするんだけど。まぁいいわ」


鎧を着込んでいるからか、かなり背が高い。ギュンターよりも大きいのではないだろうか。

それに近くまで来て確信したが、やはり武器らしきものはない。魔術師なら不用だが、それなら鎧を装着する必要もない。

そもそも兵士ならともかくギルドメンバーが鎧を着ることなど、余程のことがない限り有り得ない。



「とりあえずは自己紹介といこうか。私の名は、ナハト・リヒトッ!誉れある秩序の守護者ギルド・ガーディアン、そのNo.13だッ!よろしく頼むぞ諸君ッ!気軽にナハトと呼んでくれて構わんぞ」


そんな疑問を気にかけることもなく、ナハトは大声で自身の名を叫んだ。

とりあえずうるさい。それに尽きる。


「シルヴィアよ。よろしくお願いするわね、ナハト」

「ギュンターだ。期待させてもらうぜ」

「リディア…と申します。…その、よろしくお願いしますわ」


各々自分の名前を教える。

リディアが彼女らしくなく覚束ないのは元"オラクル"としての立場と、その"オラクル"が起こした『戦争』で間接的にではあるが目の前にあるナハトと戦ったからだろう。

それを生き残ったナハトはリディアを知らないはずがないが、生憎彼からリディアに向けられる目線は全身を覆う鎧に阻まれシルヴィアにはわからない。





「…あぁ、よろしく頼む。では、行こうか諸君ッ!」

「もう少し声抑えらんないの?いつもよりうるさいんだけど」


くぐもった声で喋られているため、感情が読み辛い。

無理に張り切った演技をしているのかとも考えたが、マキナの反応から見てこれが素のナハトだろう。

不安はあるが、マキナの目の前でリディアに斬りかかるような真似はしないと信じたい。



「…ギュンター」

「お前の言いたいことはわかってる。あいつもそんな馬鹿じゃないだろ、警戒しとくに越したことはないけどな」


極端な言い方をすれば、シルヴィアたちはマキナとキニジ以外の秩序の守護者ギルド・ガーディアンとは敵対関係にある。

"オラクル"はギルドそのものを敵に回し、彼女たちは手を下していないとはいえ、多くの犠牲を出した。


メディアとリディア以外の"オラクル"職員のギルドに拘束された後の情報は掴めていないが、どうせろくな目にはあっていない。

本来なら彼女たちもそうであるはずなのだが、ギルドの意向により"タスク"の管理下に置くということで仮にではあるが自由の身となった、

当然だがそれを不満に思う人間はいるはずであり、そもそもギルドマスターが死亡しギルドが不安定な状態での決定が正式なものとはわからない。

そんな中、メディアとリディアと行動をともにしているシルヴィアたちは、他の秩序の守護者と剣を交える可能性がある。


ギルドの駒とも言える秩序の守護者たちも『人間』だ。感情がある。

そんな彼らが、感嘆に彼女たちを許すはずがない。

キニジも「敵にはならない」とは言っているが、"オラクル"に対する義憤と"オラクル"に対する裏切りの罪悪感が入り混じった繊細な状況になっている。キニジですら完全に敵意を捨てたわけではないのだ。


だからこそ目の前のナハトに注意しようとギュンターに言いかけたのだが、彼も同じ事を考えていたようだ。

流石は長年の親友だと素直に感心する。



「とりあえずいくわよ。ここで立ってたって始まらないわ。さっさと任務終わらせてあたしは帰りたいのよ」

「…そうね。お祖父様とはもう少し話したかったけど、また会えないわけではないもの。今度はエリーと一緒に来ることにするわ」


なんであれ、今は目の前の任務を終わらさねばならない。

ナハトという不確定要素はあるが、5人もいればそう苦戦することもないだろう。




「ではくぞ諸君!私についてきたまえ!」

「おう。期待しとくぜ、秩序の守護者様。足を引っ張らない程度に俺も頑張りますかね」


ギュンターはさっそくナハトの扱い方がわかったようだ。

彼の切り替えのはやさは見習いたいものがある。


(私もうじうじしててはダメね。いつも通りいきましょう)


今回はリディアとナハトという、ともに戦ったことのない人と共に戦うことかできる。

新鮮な思いをして戦うことができると前向きに考えようと決め、シルヴィアは仲間たちと町の外に出た。

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