表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第2章 変わらぬ想い
87/178

穏やかな日常

エリー生存の可能性が示唆されてから2日。

シルヴィアは何時ものように、孤児院のリビングでお茶を啜っていた。

向かいの席にはレベッカも座っており、彼女はシルヴィアと同じくお茶を啜っている。


「あ、茶柱…」

「ほんとだ。いいことあるよ」


最近フィレンツェに流通してきた東の国のお茶というのは、シルヴィアが好んでいる紅茶とはまた違った味わいがある。

またティーカップでは雰囲気が合わないと、コップには同じく東の国から輸入したものを使用している。

全員の分少々値が張ったが必要経費だ。



フィレンツェは10日も経たないうちに、元の様子を取り戻し賑わいを見せている。

むしろ魔物によって破壊された建物を修復するために大工や職人が今まで以上に滞在し、彼らが滞在するための宿や彼らが食事をするための場所など、様々な所がより繁盛していると言っていい。


ギルドを潰すために行われた戦闘が、結果的にはギルドとの直接的な関係が薄いフィレンツェの町を潤した。

漁夫の利ではないが、"オラクル"事変のある意味での勝利者はフィレンツェの町ともとれるだろう。





そんなことを考えていた昼下がりである。


ギュンターはギルドに用事があると出て、ウェンとマキナは第2研究室"タスク"に籠り、キニジとマリーは買い物へ出かけ、孤児院の子どもたちは先日からギルドの計らいでニザーミヤ魔術学院へ通っている。

何でもキニジが右腕を失ったことと"オラクル"事変解決の立役者であることを考慮し、なんとギルドが無償でこのアズハル孤児院の子どもたちを学院へと招いたのだ。しかもここからでは遠いだろうと、寮も用意されている。


裏があることも考えられるが、子どもたちが「行きたい」と言っていたため、ここは敢えてギルドに従うと話し合って決めている。




そんな訳で今は孤児院でレベッカと2人、これまた東の国の茶菓子を食べながらゆっくりとした時間を過ごしいている。


「平和ね…」


自然と溢れた一言。自分の気持ちに落ち着きが出たこともあるが、何とも年寄り臭いと自嘲の笑みを浮かべる。


「うん。キニジさんは右腕を失ったゃったけど、みんな生きてて良かったよ」


エリーが姿を消したと聞いて、シルヴィアほどではないが彼女もまた明るい表情を見せない日々が続いていた。

それでもレベッカはエリーの生存を信じていたのだが。


思えばエリーと出会ったから1年、エリーが倒れていて会話ができなかったこともあったが、毎日のようにエリーは見ていた。

10日に満たないが、もう何年も会ってないような錯覚に陥りそうだ。





その時孤児院の扉が開いた音が聞こえた。1人ではなく、恐らくは3人ほどだろうか。


「…誰かしら」

「ん、シルヴィアさんですか?」


ウェンの声だった。彼がここに帰ってくるのは最近だと珍しい。


「ウェン、他に誰かいるの?」


それに答えたのはまた別の声だ。


「あたしとメディアよ。お邪魔するわ」

「お、お邪魔します…」


堂々と入ってきたマキナとは対称的に、おどおどしながらはいってきたメディア。

"オラクル"事変の加害者でもある引け目を感じているのだろう、メディアの表情はあまり明るいものではない。




「いらっしゃい。マキナさん、メディアさん」


その辺りの事情を知っているレベッカは、それでもメディアを暖かく迎えようとしている。


まだこの町やギルドの人間にはメディアとリディアを許せない人間もいるだろう。彼女たちは直接的な被害こそだしていないものの、デイヴァが転移させた魔物に友人や家族や恋人を殺された者は多い。

確かにギルドメンバーは死と隣り合わせだ。しかしそう簡単に割り切れるほど『人間』は単純にできていない。




「わ、わたしはここの人たちに酷いことを…」


俯き、涙を溢す。メディアにとって被害者の1人であるレベッカから罵倒されこそすれ、暖かく出迎えられるなんて考えもしなかったのだろう。

その疑問で抑えていた気持ちが溢れてしまったのだ。


それに答えたのはマキナだ。


「だから、あんたはそれを償うために"タスク"に来たんでしょ。くよくよしてる暇があるなら研究開発するのがあたしたちじゃないの」


その言葉にメディアははっとした表情をとる。


「…うん、そうかも。ありがとうマキナちゃん。わたしなりに頑張る」

「だから"マキナちゃん"はやめなさいっての」


マキナはガラに合わないとでも思っているのか、そっぽを向き頬を赤くする。




「マキナさんも世話焼きですね」


面白そうにウェンは笑いながら、自室へと荷物を運んでいった。


「…う、うっさい!今度そんなこと言ったら焼いてやるっ!」


"アスクレピオス"を構え、火と同じような赤色に顔を染める。


「あわわ、落ち着いてマキナさん!」

「待ちなさいマキナ!また火事になるのは嫌なのよ!」


レベッカとシルヴィアは孤児院がまた火事になったら堪らないと大急ぎでマキナを止めに入る。



「マキナちゃんのそういうところが、子どもみたいで可愛いなって…」


メディアだけ今一現状を理解していないのか、1人ほのぼのした様子で眺めて笑みを浮かべる。



ウェンに本気で怒るマキナとそれを本気で止めに入るシルヴィアとレベッカ、それをほのぼのとした表情で眺めるメディア。

随分と賑やかになったものだとウェンはまた小さく笑い、溜まりに溜まった従者としての仕事を始めた。書類が多すぎる気がしないでもない。







「それで、落ち着いたかしら」

「…ごめん。どうもウェンが相手だと、冷静さを欠いちゃって」


レベッカに淹れてもらったお茶を啜りながら、反省する。


「ふ、ふふふ」


それを聞いて玩具を見つけたように、シルヴィアは目を光らせる。



「わかったわ!マキナ、このシルヴィア=クロムウェルがその悩みをズバッと解決しましょう!」

「別にいい。あと悩んでないし」


ノリノリのシルヴィアの申し出を、ズバッと切り伏せる。


「そう…」


凄く悲しそうな表情をするシルヴィアを尻目に、マキナはひとつ気になっていることを聞いた。




「シルヴィアって、どこかのお嬢様なんだっけ」

「ええ、こう見えても公爵令嬢よ。生憎、時期当主の座は弟に譲ったけど」


こう見えてもとは言っているが、シルヴィアの言動の節々には彼女が高貴な身分であることが感じられていた。

…その言動の大半はどうでもいいことなのだが。


「じゃあ、どっかの貴族とかお見合いとかさせられたの?」

「全部断ったわ。でも普通の貴族の子女なら、私くらいの年齢だと結婚しているのがほとんどではないかしら」


シルヴィアが異常なのはわかっている。マキナが気になっているのはその理由だ。




「なんで断ったの?」

「あ、それ私も気になるかも」


便乗してレベッカもシルヴィアに詰め寄る。

メディアは黙ったままだが、興味があるのは目を見ればわかる。



シルヴィアは少し躊躇うような素振りを見せるも、ゆっくりと口を開いた。


「…単純な話よ。勝手に相手を決められるのが嫌だっただけ。それに公爵令嬢ってだけで、舞踏会でプロポーズされることもあったもの」


それだけではないだろう。シルヴィア自身の美貌も備わってこそだ。



だからそれを口に出すことにした。


「女のあたしが言うことでもないけどさ。シルヴィアって美人だし、それもあるんじゃないの」

「だとしても気に入らないわよ。本当の私を知ろうともせず、自分の家の価値を高めるために公爵家の血が入った子どもが欲しかったりするだけじゃない」


後は美人の妻を侍らせることに意義を持つ者がいたりするのよ、とシルヴィアは付け加えた。


「我儘なことはわかってるわ。でも私は本当に好きになった人が良かったのよ」

それがエリーという人物なのだろう。




「だから、マキナも気合い入れてウェンを落としにいきなさい」

「な、なななんであたしなのよ!?」


この状況で自分に矛先が向くとは思っていなかったマキナは、大いに慌てた。

マキナ自身が気付いていなかった、ウェンへの恋慕を指摘されたことも大きい。



「マキナちゃんは、少し素直になったらどうかな…」

「素直に慣れずについつい変な態度しちゃうのはわかるけどね」


メディアとレベッカも見計らったようにマキナに追撃していく。


まさかここで3人を敵に回すとは考えていなかったため、せめてもの反撃にと


「あ、あたしはシルヴィアみたいに美人じゃないし…」


震える声で、嫌味ったらしいことを言う。


だがシルヴィアはそれを嫌味とは感じなかったようだ。


「だって、マキナって美人というよりはかわいいってカテゴリじゃない。…お、ねぇウェンもそう思うでしょう?」


偶然リビングに入ってきたウェンに、質問を投げ掛ける。




「僕に振るんですか…。えぇ、マキナさんはかわいいと思いますよ」

「ですって」


シルヴィアはそれ見たことかとしたり顔でマキナを見返す。


「か、かわいい…?」

その単語を理解するのに実に数秒を要した。


「……かわ。――――――!?」


声にならない悲鳴をあげて、テーブルに頭を打ち付ける。



「ま、マキナさん大丈夫ですか!?」


誰のせいでこうなったかウェンはわかっていないようだ。

今朝話していた通りなら、今のウェンは『シルヴィアさんの友人』という立場だ。シルヴィアをたてる必要もない以上、その言葉に偽りはないだろう。




「あぁもう!なんでこうなるのよぉ!」

「え、本当にどうしたんですか!?」


マキナの悲痛な叫びに、ウェンは更に慌てる。

それを見て面白がっているシルヴィアには、後々仕返しをせねはならないと誓う。

その時はレベッカとメディアも強制的に手伝わせよう。



日も暮れて夜の帳が降り始めた夕暮れ時、マキナはそう決意した。

ヒロインたちの髪形や髪色をしっかりと決めてなかったので、ここで決めておきたいと思います。


エリー:栗色のポニーテール

シルヴィア:銀髪のストレートロング

レベッカ:黒髪のツインテール

アリシア:紅色のサイドテール

マキナ:水色のセミロング

メディア:金髪のショートヘアー

リディア:金髪のツーサイドアップ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ