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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第3章 継承戦争
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友との再会

4年ぶりの自室でウェンは目を覚ました。

普段であれば窓から朝日が覗くが、今日は分厚い雲に覆われてしまっている。

不吉なものを感じながら、自身の眼鏡に手をのばす。



家の扉の前で立ち尽くす。

4年前の旅立ちの日は清々しい晴れだったことを覚えている。


「もう行くのか?」


4年前と同じように父親に声をかけられる。

あの日と同じように父親の顔は見ず、簡略に返す。


「はい…。今日は忙しいので」



「………なぁ、ウェンよ」


重々しい息遣いを背中で聞く。


「何か悩んでいるようだな。変に諦めている節があるが、お前はまだ若い。せいぜい悩みぬけ。お前の仲間はそんなことでお前から離れたりしないだろう?」



「……!」


後ろを向く。


「そうですね。……頼れと言っておきながら僕自身が頼るのを忘れていたとは、我ながら馬鹿ですね」


自虐めいた笑みを浮かべる。

それからウェンは再び父親に背を向ける。


「では行ってきます。役目くらいは果たせますよ」



「あぁ期待して…いや、当たり前だ。しっかり果たすがよい」


ウェンを見送ると、そのまま扉を閉める。

その口には悲嘆ではない別のものが浮かんでいた。





◆◆◆





「凄い…綺麗…」


エリーは会議及びパーティー会場の宮殿に来ていた。ギュンターとウェンは少しやることがあるということでシルヴィアと二人きりである。

ということで近くの庭園に行こうと2人で足を運んでいた。



その庭園は花は咲き誇り、噴水は滞りなく吹き上がり、道にゴミは一切ない。

一目に大事にされているのだとわかる。


「結構凄いでしょう?この庭園は国の宝とだって私は思ってるもの。エリーをスチュアートに連れてきたら、必ず見せたいって思っていたくらいよ」


久しぶりの庭園に目を輝かせながら先に進む。


「確かシルヴィアは会議には参加しないんだよね」

「ええ。会議に出席するのはお父様。その後のパーティーに参加するのが私の役目よ」


パーティーということはドレスを着るはずだ。まだ見ぬシルヴィアのドレス姿に心踊らせるエリー。


「パーティーに参加するにしても…僕の服はどうするの?当たり前だけどそういう服持ってないよ」




今の服はシルヴィアとレベッカが選んだものを適当に着ているだけだが、流石に貴族のパーティーにはむかない。

自分のせいで自分が笑われるのはともかくシルヴィアやギュンターにウェンが笑われるのは…嫌なのだ。


「大丈夫よ安心して。エリーの衣装は既に用意してあるわ」


得意気にそう言うシルヴィア。

どこか楽しそうなのはきっと勘違いではない。



あまり服装に興味がないエリーだが、その服装で一度…いや二度ほど恥ずかしい思いをしている。

流石に公の場でシルヴィアの趣味全開の服装はないとは思うが、警戒しておくに越したことはない。


「さ、流石にメイド服とかないよね?」

「メイド服がいいならそうするわよ?」


とりあえずメイド服でないことはわかったが、やはり嫌な予感しかしない。



「私の趣味…というか私物ね。私が以前着てた物」


つまり女性物ということだ。

こればかりはもうどうしようもない。もう拒否することもめんどくさくなってしまった。


「確かに僕とシルヴィアって身長ほとんど同じだからできなくはないだろうけど…どうなの?」



その疑問に対しシルヴィアはニヤリと笑う。


「3サイズとかの問題かしら?」


見当違いの答えに目を見開くエリー。自分が言いたいのは公の場でそんなことをしてバレたらどうするの、ということなのだがシルヴィアは勘違いしたらしく


「当たり前だけど、胸囲とかの調整もしたわ。完璧よ」


別に知りたくない情報まで言われてしまった。



「そう…ありがとうシルヴィア…」


肩を落とし、覚悟を決める。


「確かエリーのスリーサイズって70のごじゅ」

「言わなくていいから!」


周りに人がいないとはいえべらべら喋っていい情報ではない。

というかどこでその情報を知ったのだろうか。気になりはするが言及しても得をするのはシルヴィアだけだ。




それから30分ほど庭園を歩き続け、少し休憩しようと近くのベンチに座ろうとしたのだが。

そこには既に1人座っていた。その人物は居眠りをしているようだ。

だかその背中に背負った奇妙な剣。柄の両方に刃があるもので、戦闘時にはそれを振り回して戦うのだろう。呼ぶとするなら両剣だろか。


武器をこんなところに持ち込んでいるということはギルドメンバーなのだろう。おそらくこの人物も誰かの護衛ということでここまで来たが、会議中なのでここで暇を潰しているということだろう。



「先客がいたね、もう少し歩く?」

「休憩もしたかったけど、仕方ないわ。エリーと二人きりだし、もう少し散歩を楽しみたいのものね」


にっこり微笑むシルヴィアを見ると、こっちまで嬉しくなってくる。

時間はある、シルヴィアとの時間をまだまだ楽しもう――――。








「ん?エリーって言ったか今…」

「あら?」


突如、ベンチで寝ていた人物が起き上がる。

いきなり誰だと思うとそこには……。


「な、マジでエリーかよ!?なんでここにいるんだ!?」

「く、クローヴィス!?」


エリーと同じアズハル孤児院の出身にして、キニジのもう1人の弟子。エリーの幼馴染みにして大親友。

金髪碧眼を携えた美丈夫。



クローヴィス・アークライト。


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