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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第3章 継承戦争
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帰郷

『いいかウェン。あの方が今日からお前が仕えることになる、シルヴィア様だ。ホーエツォレルン家の者として心身共に支えられるよう、尽力するんだぞ』


『はい、父上』




『オリヴァー様。今日からご息女に仕えさせて頂くウェンです。まだ未熟者ですがシルヴィア様を支えられるよう努力いたします』


『ほらシルヴィア、あいさつなさい』


『シルヴィアっていうの。ってもう知ってんだっけ。これからよろしくね、ウェン!』


『こちらこそよろしくお願いします、シルヴィア様』


『なんかシルヴィア様って言われるのやだなー。シルヴィアって呼んでね。わたしたちこれから友達になるんだがら!』


『そ、そんな呼び捨てなど…。ウェン、ちゃんと様をつけるんだぞ』


『ははは、いいじゃないか。シルヴィアはギュンター以外にも遊び相手が欲しいと言っていた、別にシルヴィアと呼んでくれても構わんよウェン君』


『しかし僕はクロムウェル家に仕える身。その主たるシルヴィア様を呼び捨てするなど』


『じゃあシルヴィア様だけはやめてよ!友達なのに様をつけられるなんてわたしは嫌だもん』


『え、えっと…じゃあシルヴィアさんで』


『ならいいよ!行こうウェン!ギュンターと3人で遊びましょ!』




……………。



(…夢、ですか)


随分と懐かしい思い出だと苦笑する。

でも決して、嫌な思い出ではない。



フィレンツェから出発して数日。

1度エリーの頼みもあってモンペリエを通過し、ハンティンドンまで後2日となった。

ウェンは結局寝付けず、少し夜の風に当たろうと外に出た。



「おや、エリーさん?」


そこには以外にもエリーが近くの切り株に座っている。


「あ、ウェン。ウェンも寝付けなかったの?」

「はい、少し…昔の夢を見てしまいまして」

「昔の?」

「僕がシルヴィアさんと始めて出会ったときの夢です」


少しだけ、目を細める。


「良かったら、聞かせてもらってもいいかな」

「えぇ、いいですよ」




エリーに一通り話終えるとエリーはくすくすと笑った。


「シルヴィアは今も昔も変わらないんだね」


ウェンの耳には羨ましいようにも聞こえた。


「今も昔も、自分勝手で、粗暴で、ガサツで、文句はいくらでもありますよ。…でも何故か人を惹き付ける魅力がありました。きっとそれは彼女が本当は優しいからだと思います」


自分も惹き付けられた1人ですけどねと笑う。



エリーもまた同じように笑い


「僕もそう思うよ。まだ半年ちょっとの付き合いだけどお人好しで優しい人。それにウェンもギュンターも負けず劣らずお人好しで優しい人だって僕にはわかる」


真面目な顔で言われてしまった。

ウェンは気恥ずかしさを隠しながら


「そういうのはシルヴィアさんのために取っ手おくべきですよ」


最近は思い詰めることが多かったが、少し楽になれた気がした。


「そろそろ寝ましょうか。まだ馬車での旅は続きますが、何かあるかわからないですからね」

「うん、そうだね。おやすみウェン」

「はい、いい夢を」





◆◆◆




それから2日、馬車で揺られ続けた旅だったがついにハンティンドンにやってきた。


「ここが皆の…」

市場があり周囲の人々と同じような活気ついた町、なのだが。


「流石に陛下がお亡くなりになったとあって何時ものような活気はないわね…」


シルヴィアはエリーに本来の町を見せられらなくて残念と肩を落とす。




「まぁ仕方ねぇさ。ずっとこのままってわけじゃねぇ、色々と落ち着いたらいつものように戻るさ」

「それもそうね。エリーにはまたハンティンドンに来てもらうもの」


ひょっとしたら永住してもらおうかしらと微笑む。

前向きに考えようかなとエリーも笑いながら歩みを進める。



「そしてここが―――」


シルヴィアは手を広げ


「私の家。改めて言おうかしら」


大きく息を吸い、満面の笑顔で


「ようこそ、ハンティンドンへ。私たちは貴方を歓迎します」


…と近くにあった観光パンフレットを凝視しつつ高らかに告げた。

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