召集
自分の家は代々クロムウェル家に忠誠を誓ってきた。
それは自分も変わらないし、それを後悔することもない。
だが疑問に思うことがある。
もしクロムウェル家との関わりを無くし、自分の好きなことを出来たらどうなのだろうと。
もちろん自分の意思もあったが、クロムウェル公に頼まれてシルヴィアの旅に同行したことは確かだ。
旅に出て4年。旅先で様々なGMと出会ってきた。
そこで出会ったGMの多くは、生き生きと自由に生きていた。
自分はどうだろうか?
ギュンターはキニジに付いていこうと決め、自分たちと一時的ではあるが別れることを決めた。
自分はシルヴィアの従者だからと諦め、それに付いていくことを諦めたのではないか?
考えないようにしてきたが、最近はその疑問が強くなる一方だ。
自分は本当は何がしたいんだろう。
◆◆◆
キニジが発ってから1ヶ月、ギュンターたちは元よりフィレンツェでやるつもりだった依頼を終わらせていた。
特にやることも無いため孤児院を建て直すまではフィレンツェにいることになった。
「あ、エリー。それこっちにちょうだい」
「わかったー」
レベッカに呼ばれ持っていた木材を運ぶエリー。
エリーとはあの日に本当の意味で打ち解けたとギュンターは感じていた。思い詰めた表情は無くなり、今まで以上に笑顔を見せることが多くなった。
レベッカもそのことを嬉しそうに言っていたが、隠しきれないものもまたあるようだ。
また服が燃えてしまったため、各々新しい服を買ったのだが。
「私はエリーがどんな服を着ても何か言うつもりはありませんが…」
マリーはシルヴィアとレベッカが買い与えた服を着ているエリーから目を反らす。
「…エリーは2人の買ってきた服に何か言うべきだと思うのです」
ぱっと見男には見えないエリーを心配していた。
ギュンターはマリーの言葉に思わず苦笑する。
「なんかエリーは服のことに無頓着というか、昔からそうでしたってレベッカから聞いてます」
「3人がいいのならそれでいいんじゃないんですか?」
釘を打ち終えたウェンも加わる。
「やっぱり転機はエリーがメイド服着てからだと思うのです。確かに可愛い"子ども"の可愛い姿を見たかったのですが、そこは"親"として一言言わなければならないのです……」
うんうん唸るマリーから視線を外し、エリーの方を見ると今度はシルヴィアがエリーから木材を渡されていた。
こういう時のシルヴィアは良い意味で貴族に見えないと思う。…普段は悪い意味で貴族に見えないが。
「ギュンター!そっちは終わったかしら?」
「あぁ終わったぜ」
この1ヶ月ほとんど休まず孤児院の建て直しをしてしきた。
決して嫌ではなく、むしろ楽しかったと言える。
子どもたちに慕われることも悪い気持ちはしなかったし、こういった大工仕事も剣を振るうだけではわからない感覚も掴めた。
(引退したら、孤児院で教師の真似事をするのも悪くはねぇかもな)
その前に成すべきとこが多いが、ちょっとした目標が出来た。
◆◆◆
翌日。
工具や木材を購入するついでにギルドに立ち寄ったエリーたちは立ち去ろうとしたところを職員に呼び止められた。
「シルヴィア=クロムウェルさん、ギュンター・ハンプデンさん、ウェン・ホーエツォレルンさん、オリヴァー=クロムウェル様からお手紙を預かっています」
(オリヴァーさんはシルヴィアのお父さんだっけ。僕は記憶があまりないからよくわからないけど"父親"ってのはどんなものなんだろう)
「お父様が…?」
シルヴィアは怪訝な顔をし、なかなか開けようとしない。
ギュンターは呆れた顔をしながら開けるよう急かす。
「どうした? 開けないのか?」
「大丈夫、開けるわよ」
『前略シルヴィア。
急にこのような手紙を寄越したことを詫びよう。だが今回は一刻を争う事態だ。
簡略に言おう。陛下が倒れた。
スチュアートの貴族に召集がかかる。シルヴィアもクロムウェル家の長女として参加せねばならない。
至急ハンティンドンに戻られたし。オリヴァー=クロムウェル』
家を出た後もシルヴィアは父親とは手紙でやり取りしていたと聞いている。
1度見せてもらったことがあるが、手紙は数枚に及びシルヴィアへの心配と旅の話を聞かせてほしいといった内容がびっしりと書かれていた。
だが今回のはたった紙1枚だけであり、普段は丁寧に書かれてあろう文字もよほど急いだのか所々崩れている。
それだけでも、どれほど急を要する事態なのかがわかる。
「うそ…」
「マジかよ」
「そんな」
シルヴィアたちは手紙の内容に言葉が出ずにいた。
――――スチュアート王の急死。
それがまた新たな火種になることをエリーたちはまだ知るよしもない。
短めですが今回はここまでです。
第3章はどれくらいの長さになるかはわかりませんが、読んでくれると嬉しいです。




