単語解説・禁術
・そもそも禁術とは
魔術が禁術として選ばれる理由は威力が飛び抜けていることでもなく、範囲が飛び抜けていることでもなく、『使用することによって魔族化する恐れがある』ことが禁術として選ばれる条件になる。
また、ほぼ全ての魔術はギルド管下の『魔術研究所』によって把握されており、その魔術研究所が正式に禁術として認定したのは『代償』、『憑依術式』の2つである。
『暴走術式』は魔術研究所に情報が入っていないため禁術認定はされていないが、情報が入り次第禁術認定されることは間違いない。
・代償
最も知名度があり、使用者も多い禁術。
体の一部の機能を制限・停止させる代わりに魔力を得る禁術。
どこが制限・停止されるかは誰にもわからないため、これにより戦えなくなるどころか死亡する可能性もある危険な代物。
髪が伸びなくなった程度から片足が死んだまでその代償は様々である。
「魔力を得たはいいけど片足が死んで戦えなくなった」はよくある話。
仮に腕が代償となった場合徐々に腐っていくことになる。そのためその腕を切り落とさねばならず、文字通り『身を切る覚悟』が必要になる。
また『使用者の魔力や栄養が最も行き渡る場所が代償になる』というジンクスがあり、実際その部分が代償になった人も少なくない。
特異な例だがエリーの代償が『身体の成長』だったことを考えるとこれから成長するはずだった年齢ということもあり、あながち間違いではないのかもしれない。
この術式が作られたのは20年ほど前と以外にも近年で、魔術研究所所属の魔術研究者が『魔力を持たないものでも戦えるように』と作り出したもの。
はじめは世紀の大発明として持て囃されたが、代償の位置が誰もわからないことに加え心臓や脳が代償で停止した(とされる)犠牲者が数こそ少ないものの現れたこと等数々の問題が露呈した。
その後禁術認定された上研究は停止、その研究者は魔術研究所から追放となりその後は行方をくらませている。
本来は禁術を使用できるのはギルドと魔術研究所に認められたごく一部の人間のみなのだが、禁術認定された後も使用者は後を断たずギルドも放置しているのが現状である。
それだけ魔力を得ることが魅力的であるとも言えるのだが。
余談ではあるが近年『代償』を正式な禁術として認めるかどうかに対して議論が巻き起こっている。
危険なため仮処置として禁術認定はしたものの、使用者が魔族化したという事例は報告されていない。そのため「別にこのまま禁術でよくね?」派閥と「しっかりと禁術とは区別をつけるべきだ」派閥に別れ日夜討論が行われている。
・憑依術式
魔術研究所に最初に禁術登録された古代から存在する魔術。
周囲の魔力を自分の体内に取り込み制御、その魔力を結晶化させ武具として扱う魔術。
この魔力を制御する部分が一番重要な部分であり、それが出来ない場合は魔族化する。
武具として結晶化させるとなっているが憑依術式の術者は基本的に武器をのみを結晶化させている。
また憑依術式には幾多のリミッターがかけられており、それを解除してようやく鎧などの防具を結晶化させることができる。
仮に鎧等まで結晶化させた場合、魔力を制御するための魔力は莫大な量が必要でありそのためのリミッターである。
憑依術式の術者が武器しか結晶化させないのもそこに理由がある。
そのリミッターの限定解除した状態を"限定解放"、全てを解除した状態を"完全解放"と呼ぶ。
仮にウェンが憑依術式の"完全解放"をした場合90秒が限界である。(キニジは30秒ほど)
またリチュアと呼ばれる所以は古代は魔力の制御を数人で肩代わりし"儀式"として憑依術式を行っていたことからそう呼ばれている。
現在はその技術は失われている。
ちなみに憑依術式の使用を正式に許可されているのはキニジ含めて大陸で4人のみである。(エヴァンジェは無許可)
シルヴィアの『影』はこの憑依術式の発展のひとつであり、剣に周囲の魔力を無尽蔵に取り込ませ術者の魔力の全てをそれの制御に充てている。
ただその魔力の発動にクロムウェル家の血と魔力が必要になる。
その際に剣は負荷に耐えきれず砕けてしまうが、魔術研究所が把握している全魔術の中でもトップクラスの破壊力を秘めている。
・暴走術式
憑依術式と対になる最新の禁術。
自分の魔力を他者に取り込ませることにより相手の魔力を暴走させ魔力の制御を狂わし魔族化させる。
術者はエヴァンジェとデイヴァのみだと考えられる。
ギルドにも魔術研究所にも存在を知られなかった数少ない魔術のひとつ。
正確にはまだ禁術ではないが存在を知られた今禁術認定は免れない。
エヴァンジェの暴走術式は相手を魔族化させるに留まらず人の形を保ったまま、つまり理性を残した状態で魔族化させる。
エヴァンジェにそれを与えたデイヴァはそれ以上。
現状では謎が多く、魔族化させるということしか判明していないが今後の脅威になることは間違いない。
やたらややこしくなってきた禁術をまとめてみました。
自分でも禁術に関しては整理したかったので個人的に書いてよかったと思っています。