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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第2章 死神の真実
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小休止…そして崩壊への序奏

エリーたちはボロボロになってしまったギュンターの大剣を修理するために鍛冶屋へと足を運んでいた。

キニジは昨夜のマリーの発言通りにマリーの用事へと連れ出されしまっている。


「メディチさんの話だとギュンターの骨折は処置も的確だったのもあって数日で完治するそうよ」


内心、大事にならなくて良かったと安堵するシルヴィア。

ギュンターは折れたところを元に戻して固定しただけで良かったのかと首を傾げる。



「どうせ相棒を直さないといけないし、気長に待つさ」


だから気にする必要はないぜと言い切る。

ウェンは魔術師として不安なのだろう、表情は明るいものではない。


「今まで多少修理はしてはいますが、あそこまでにはならなかったギュンターの大剣が魔族の放出バースト1回でボロボロになるとは思いもしていませんでした」


やはり人間と魔族の魔力では、放出ひとつを見ても圧倒的な差があることは間違いない。


「何の小細工もいらない魔力の放出であるが故に圧倒的な魔力の差がわかってしまいます。今はただの放出だけで済んでいますが、これが魔術を行使してくるとなると…」


魔族の犠牲者がGMギルドメンバーを含めて爆発的に増えるだろうと不安になる。




とはいえ不安がっているだけではダメだ。


「とりあえずその話は置いといて、とりあえずギュンターの大剣の修理を依頼しないとね。あとお昼にもしないといけないし」


暗めの話題は避けようと話をかえる。


「そっかもうそんな時間かー」


レベッカがどうりでお腹が空くわけだと納得した顔をする。






…何故レベッカがここにいるかというと。

時は昨晩にに遡る。


「レベッカもGMだったの!?」


明日鍛冶屋に行くとレベッカに伝えると自分もギルドに用事があるからついていくとレベッカが言い出した。

理由を聞いたところ、内緒にしていたが自分もGMだとレベッカが明かしエリーを驚かせた。


「そ。エリーたちみたいな戦闘系の依頼をこなすGMじゃなくて、主に町中の依頼を解決するGMだけどね」


戦うだけがGMじゃないでしょ?と笑いつつ答える。


「なら良かったよ…。レベッカはどんな依頼受けてるの?」


単に戦闘以外の依頼といっても多岐にわたる。ペットの捜索から店番など多岐にわたる。

中には戦闘系のGMも受けるような危険な依頼もあるため、エリー的には危険がないような依頼を受けていて欲しいのだが。


「親御さんが出掛けちゃうからその間の子守りとか、子ども関連の依頼を多いかなー」


良かったと安心するエリー。


「とまぁそんなわけで私も付いていくからよろしく!」


満面の笑みで親指をビシッと立てる。

エリーも笑いながら親指を立て了承した。






ウェンは空腹なのか、鳩尾あたりを触りしきりにアピールをしていた。


「フィレンツェの南から西まで歩いてきてますからね…。空腹ですし思いっきり好きな量を食べたいんですけど、どうですか?」

「却下だ」

「却下よ」


食事でウェンを好きにさせたらどうなるか知っているギュンターとシルヴィアは即座に却下。


「店は俺が決める!量は…大盛りな!拒否権はないからな!」


そんなぁとウェンは肩を落とす。

ウェンの驚異的な食事量を知っているエリーとレベッカはウェンの味方をすることはできず、微妙な顔をするしかなかった。

とはいえ5人で昼食というのもいいのかもしれない。





その後、エリーたちはギュンターが決めた酒場で昼食をとっていた。


…いたのだが。



「そうそうそうなのよ。レベッカわかってるわ!」

「当たり前だよー。とりあえずエリーには女性物を着せるより、中性的なのを着せた方がかわいい」

「前に3人で出掛けたときも中性的な格好をしてたものね。意図してのかわいさよりも、意図せずしての方がグッとくるわ」

「フリフリのスカートもありだとは思うよ?でもシルヴィアの言う通り、媚びないかわいさ、みたいなー?」


…何故目の前で自分を着せ替え人形にするかの様な話を聞かないといけないのだろうか。

2人が人目を憚らず大声で話すお陰で周りの視線が痛い。


耳を澄ますと「あの銀髪の子に踏まれたい」「俺はあのツインテの子だわ」「ポニテの子一択」「でもなんか男って言ってなかったっけ」「なんの問題ですか?」…等、聞いてるこっちが恥ずかしくなる会話があちらこちらから聞こえる。



ふと、自分の服装に目がいく。


これは今朝レベッカに「私の奢りだ、これを着ていくが良い。だが今日はエリーにはいつも通りポニテでいてもらおうかッ!」と半分くらい無理矢理着せられたものだ。


(もしかしてレベッカは自分とシルヴィアで愉しむために僕にこの服を!?)


怒りと恥ずかしさのあまり泣きそうになるがなんとか堪える。

ここは平静を装って注意した方が被害をこれ以上出さないと考え、一抹の望みを持って一言。


「とりあえず僕をオモチャにするのはやめない?」


多分いつも通りのはずだ。



「エリー。顔は赤いし涙目なのに平静を装っても無駄だと思うわ」


エリーの望みは無惨にも散っていった。



「いやもう2人にとっての僕ってなに…」


心の底から疑問が溢れる。


「嫁…ではなくて婿」

「幼馴染み兼人形?」


(もうダメだこの2人…)


こうなると希望は頼もしい仲間ギュンターとウェンになるが、その2人は先程「ちょっと外出てくるわ」と酒場から出ている。


(あの2人に限ってこの2人の味方は…)


まさかとは思いつつもその可能性は否定できないエリー。


そして。

ガチャ。

酒場の扉が開き、そこには待ち望んだ仲間の姿が…!


「待ってたよ2人共!助けて!」


エリーはギュンターとウェンの2人に近寄る。


「どうしたエリー?」

「エリーさん何かあったんですか?」


まだ2人は状況を理解できていないようだ。



「乱入してくるとは、とんでもない奴ね」

「もー面白かったのになー」


この言葉でギュンターは状況を察したのか


「ったく…あまりいじめてやるなよ?」

「うぅ…ありがとうギュンター…」


思わず目を涙で滲ませ感謝するエリー。


「とりあえず出るぞ。帰る予定だった時間を大分過ぎてる」

「孤児院の子たちを保護者なしにしておくのは少し不安ですし」


やはりこの2人は常識人だなと再確認する。





酒場から2時間ほど歩きようやく南地区に戻ってくる。


「先生とキニジさん、帰ってきてるかなぁ」


レベッカの言葉にどうだろうねと適当に相槌をうつ。


「いつも通りに何事もなく、平和に過ごせるっていいよね」

「どうしたの急に」

「なんかエリーとキニジさんが戻ってきてくれたからさ、ちょっと感傷に浸っちゃったのかもね。こんな日々が続けばいいなって祈りみたいなものかな」


レベッカは照れくさそうに頬を赤らめていた。



だがそんな祈りも、想いも、



「火事!?それも孤児院の方向だ!」


ギュンターが声をあげる。


「急ぎましょう!」


角を曲がり、孤児院にたどり着くと…。


「うそ…でしょ…孤児院が…」


そこには燃え盛る孤児院とそこに立つ数人の男の姿。


「待っていました。"死神"の仲間たちよ」


紳士服を着たその男はエリーたちを見ると一礼した。



全て、容易く、崩れ去る。


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