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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
第2章 死神の真実
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再会

「懐かしいな、アズハル孤児院…」


「僕もこの間3年半ぶりに帰ってきましたからその気持ちはわかります。でも」


エリーは扉の前で二の足を踏んでいるキニジを


「…いつまで躊躇ってるんですか、入りましょうよ」


やや強引に孤児院の中に入れる。


「ただいま先生!」




「おかえりなさ…」


マリーはこちらを向くと言葉を失った。


「久しぶり…いやただいまと言うべきかな、マリー」


マリーの目から涙が溢れ出す。


「いつか…帰ってくると信じていました、おかえりなさいキニジさん」


そしてマリーは涙を拭い満開の笑顔でキニジを迎えた。



「5年なんて遅すぎでるのです、罰として明日は私の用事に付き合ってもらうのです」

「すまない…ちゃんと戻ってきたから許してくれないか?」

「ふふっそれはどうでしょう?」


言葉にせずとも2人が心から再会を喜んでいるのはわかる。

マリーもキニジも喜んでくれてよかったとエリー自身も喜んでいた。

何より、必死でマリーに謝るキニジとそれを笑みを浮かべながらどうするか悩むマリーは、とても幸せそうだった。




「大人の恋愛って感じでいいわね……」


シルヴィアはそんな2人を眺めしみじみとしていた。


「5年ぶりの再会ですからね。水を刺さないように少し席を外しましょうか」

「そうね。あれギュンター?」


怪我が痛むのかと心配になるがそうとは見えない。



「いやさ。どう見たって尻に敷かれてるみたいじゃんあれ…」


ギュンターの目には必死にマリーに謝るキニジの姿が、自分の想像とは異なっているのだろう。


「孤児院にいる頃の師匠はあんな感じだったよ?」

「えぇマジか。なんかこう俺の"豪傑"キニジ・パールとしてのイメージが…」


うーんと頭を抱えるギュンター。




「どんな人物にも意外な面の1つや2つくらいありますよ。ギュンターの骨折の治療もしなきゃいけないんですから、とりあえずは皆さんこちらに来て下さい」


しょうがねぇなと離れるギュンターとシルヴィア、エリー。





「あなたが帰ってきてくれたのってもしかしてエリーが?」

「あぁそうだ、弟子に励まされるとは思っていなかった。流石俺の弟子だな」

「当たり前です、私の子どもですよ?」


2人は吹き出した。

「あぁ全くだ」

「えぇ、本当に」




中庭にいたであろうレベッカが、子どもたちから話を聞いたのかすっ飛んできた。


「エリー!キニジさん帰ってきたの!?」


そしてレベッカは驚きを隠せずエリーの肩を掴んで激しく揺らす。


「本当だって!だから揺らさないで酔うから!」

「ご、ごめん。でもキニジさん帰って来たんだから今夜は腕によりをかけてご飯作ろっかな」

「でも今日は先生が張り切っちゃうんじゃないかな」

「あはは、それもそうだね」


先生マリーが一番喜んでいるしね、と笑みを交わす。





◆◆◆




深夜もかくやという時間。

寝付けなかったエリーは部屋の窓から覗く月を眺めていた。


(まさかウェンがあそこまで食べられるとは知らなかった…)


夕食はマリーが張り切りすぎて大量に作ったものを残さずウェンが平らげ、『この程度なら本気を出すまでもありません』と自慢気に言ったところをシルヴィアとギュンターの全力のツッコミを受けていた。

もしかしたらあの食事量こそが彼の魔力の源なのかもしれない…。



一方マリーとキニジは仲睦まじく、それこそ『2人の世界』を広げていた。

それを見ていたシルヴィアが真面目な顔をしてエリーに話しかけてきていた。


「私ちょっと気になったのだけれど、マリーさんっていくつなのかしら?」

「先生本人は40過ぎたおばさんとか言ってるけどとてもそうは見えないんだよね…」


少なくとも『一般的な40代女性』には見えない。



「羨ましいわ…。私も若さを維持できたらいいのに」

「え、なんで?」


その問いにシルヴィアは不思議そうな顔をした。


「それはエリーのために若い私を維持しようって考えているからよ。それに」


たとえシルヴィアが老いようともこの気持ちは変わらないのに。


「エリーって成長が止まってるじゃない?もしかしたらだけど老いることすらないかもしれないって…」


それは考えたこともなかった。



普通に自分もある一定の年齢を過ぎれば自然と老いるのかと思っていた。だがそんな保証はどこにもない。

代償の影響で成長が止まっている以上、下手をすれば老いずにこのままの可能性がある。

そうなれば自分はこの姿のまま永遠を生きなければならないのだろうか…。



「だからもし本当にエリーが凄く長生きしても私のことは忘れないでね。ついでにギュンターとウェンも。もしかしたら他の女の子と恋をするかもしれない、それは私も構わないわ。でもこれだけは約束して、私たちを忘れないって。それだけで私は満足よ」


愛した人に忘れられるのは嫌だ。その想いがシルヴィアからひしひしと伝わった。


「そんなことありえないよ、シルヴィア。もし僕がシルヴィアに比べて長く生きたとしても、ずっと好きなのは変わらないし忘れるなんてあるわけがない」


理想は一緒に歳を重ねることかな、と付け足す。


「私って恵まれてるわね…本当に」


幸せすぎて不安になってきたわ、と笑みを溢す。




「2人もおアツいですねー」

レベッカが茶化すように話に入ってくる。

「ちょっとレベッカやめてよ」

「もー恥ずかしがっちゃってー」

レベッカの目は完全に興味津々といった様子だ。


「もう…」


エリーとしては恥ずかしくて仕方がない。


「真面目な話、シルヴィアならエリーを任せられるかな」

「ですってエリー。もう私たちを阻むものは何もないわ!」


声高らかに叫ぶシルヴィア。


「……エリーも、まんざらでは、ないでしょ?」

「うん、そうだね」


それも悪くないと微笑みながら考えた。






楽しい食事だったと笑みを溢す。

それと同時にエリーの部屋のドアが叩かれる。


「エリー、起きてるかしら?」


シルヴィアだ、こんな時間にどうしたのだろう。



「扉なら空いてるよシルヴィア」


音を出さないように慎重に扉を開けている。


「不用心ね、何かあったらどうするの?」

「それもそうか。なんたってシルヴィアが一番怖いからね…」

「何よそれ」


シルヴィアはエリーが腰かけていたベッドに座る。



「私がまるでいつエリーを騙して策に嵌めて既成事実を作ろうとしか考えていないみたいじゃない」

「…違うの?」

「違うわよ!」


怒鳴られてしまった。


「…私としてはエリーが望むなら受け止める心の準備はできているけど、あなた奥手なんだもの」


さらりととんでもないことを言われてしまった。



「まぁその話は追々ね?今は師匠の依頼のことで精一杯だし」


シルヴィアのことを無下にする気は無いが、今はそれどころではない。


「まぁそれはいいのよ。いつか暇が出来ればエリーをお父様に紹介したいのだけど、いいかしら?」

「シルヴィアたちの故郷はいつか見たいと思ってたからぜひ」


ならよかったわと安堵するシルヴィア。


「ちょっと今日の話で不安になってしまったから、ごめんなさいね。おやすみエリー」

「うん、おやすみシルヴィア」



(僕も随分慣れたなぁ)


ここ半年シルヴィアの積極的なアプローチを受け続けたからだなと静かに笑う。

とりあえずは師匠キニジのことが最優先だ。翌日に差し支えないよう、エリーは布団に潜り込目を瞑った。


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