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彼と魔族とお嬢様  作者: 秋雨サメアキ
終章 あなたと私の話
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これから進む道のりを

リディアの面会の手続きはスムーズに進んだ。

やはりナハトが事前に申請していたお陰だろう。

ギュンターとメディアではこうも簡単にはいかなかったに違いない。


「こちらの病室になります」


部屋の警護をしていたのはスキピオの私兵だった。

こんなもところにもいるのか、と彼らの手広さに感心してしまう。


「貴方方と彼女の関係からして、今からお見せする姿はいささか不愉快かもしれませんが……それでもリディア・ロンバルディアはギルドに弓を引いた人間だということをご理解いただきたく存じます。それが例え精神干渉を受けたものだとしても、です」


スキピオの私兵は僅かに眉をひそめながら、ギュンターたちに説明をしてくれた。内心ではリディアに少し同情しているのかもしれない。

あるいは軽蔑なのかもしれないが、どちらにせよ仕方ないだろう。彼らも仕事だ。


「気にすんな。別によほどのことがない限りは恨んだりしねぇよ。そっちも大変だな」

「お気遣い感謝いたします」


病室に向かうにあたって武器の類は没収されている。元より病院で身の丈ほどの大きさの大剣を背負うつもりはなかったので構わない。

ナハトは没収される身分でもなく、没収される武器もないのでそのままだ。

メディアは魔術師なので特に何もない……と思いきや、魔力を体外に放出させる機能をもった腕輪の着用をしている。これがある限り魔術の行使はほぼ不可能に近いらしい。それこそウェンやマキナのような規格外でもない限り。

これもまた第2研究室"タスク"の逸品らしい。


「それではナハト様。こちらを」

「感謝しよう。ちなみに彼女は拘束されている間、何かしていたかね」


鍵を受け取ったナハトはスキピオの私兵に問いかける。


「特にこれといって。こちらの指示には従い、粛々と治療や尋問に応じています。逆に言えば、それだけです」

「そうか……。いやすまない。そろそろ入ろうか、ギュンター君、メディア嬢」


ナハトはそう言うと鍵を開けてドアノブに手をかける。

どう見ても重そうに見えない木製のドアが今だけは、全て鉄製の重厚なドアに思えた。





◆◆◆





ガチャ、と控えめな音を立ててギュンターたちはリディアが捕らえられている病院に足を踏み入れた。


「あら……来られたのですね」


まだ顔や手に包帯を巻かれたままのリディアがこちらに声をかけてきた。

右手右足それぞれに手枷足枷をつけられてそれらの鎖は近くの壁まで繋がっている。かなり長さに余裕を持たせているようで、ベッドに横たわることに支障は無さそうだ。


「リディアちゃん!」


メディアは我先にと飛び出してリディアに抱きついた。

目には光るものが見えていた。気丈に振る舞ってはいたが、やはり心配だったのだろう。


「お姉様……」

「色々言いたいことあるけど、とりあえず無事で良かった!」


胸元に飛び込んで泣いているメディアだったが、リディアはどこか唖然といった様子でメディアに抱きつかれていた。


「……まぁ、なんか思ったより元気そうで安心した」

「治療はされましたもの。体はもう快復しておりますわ」


姉をギュッと抱き締めながらあまり感情の起伏はなさそうに返す。


「それにお姉様が元気であるのならば、わたくしは何も言うことはありませんわ」

「リディアちゃん……」


変わらず無感情を取り繕っているが、どこか悲痛なものがあるのは隠しきれないようだ。

ふと何かを思ったのか、リディアは姉をそっと離した。



「まずこれから言うべきでしたわね。……ご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんわ」


立ち上がれないので座ったままではあるが、立ち上がれるのならきちんとした形で謝罪をしたはずだ。


「まず聞かねばならないことがある」

「……ナハトさん」

「リディア嬢。君は本当に自分の意志で私たちに刃を向けたのか?」

「…………」


長い沈黙だった。ずっと唇に手を当て何か言うべきか否か迷っているようだった。

リディアが保身のために黙っているわけではないと、メディアはなんとなく察していた。

姉の安全を守れるのは如何なる選択か――彼女にとってはそれが全てなのだろう。


「……この会話でメディアがどうにかなるようなものでもねぇだろ。お前がどうだったのかを知りたいんだ。ギルドに、と言うよりメディアに刃を向けることが本当に守れることに繋がると信じていたのか?」

「誰が好き好んでお姉様に剣を向けるなど――」


ここまで言ってリディアはハッとしてギュンターを睨んだ。誘導されたと気づいたのだろう。

ギュンターもこんな簡単に引っかかるとは予想外だった。


「……ほらな?」


想像通りだったとナハトとメディアに向き直す。

結局のところ姉を守るのが最優先なのだ。その心の隙間を突かれたということになる。

だが、その望みは果たされたと言っていい。

"レジスタンス"事変において"レーヴァテイン"を確保できたのはメディアも少なからず助力したというのはギルドも把握している。

またナハトの消耗を少なくしその後のレザール撃破に貢献したことにも繋がっている。

これをギルドは評価しないはずもない。


「メディアはもう大丈夫だ。傷つけようとするやつはいない」

「あとはリディアちゃんだけなんだよ」

「…………」


リディアは黙り込んでしまった。

どうやら彼女の中では自分は救われる存在として数えられていない。その理由がわからない限りはどうしようもない。




「……お姉ちゃんのこと、かな」


だがメディアはすぐにわかったようで、かつてリディアの手で"介錯"した長女の名を出した。


「っ!」


図星と言わんばかりに顔が歪んだ。どうやらそれがリディアが姉の手をとれないの理由らしい。


「お姉ちゃんを斬った罪はわたしも同じだよ。斬るための道順を整えたのもわたし。リディアちゃんだけが背負うものじゃない」

「しかし……」

「でも、ごめんね……リディアちゃんにだけ背負わせて」


メディアは震えるリディアの肩を抱いた。

まるで泣きじゃくる幼子をあやすような声音だ。


「わたしがいくら言ったところで、直接斬ったのはリディアちゃんなのは変わらないし、その感覚もわからないよ。いくら言っても綺麗事なのかもしれない」


リディアの震える手を取り、重ね合わせた。


「これで一緒だよ。こんなことしてもなんにもないけど……リディアちゃんの気持ちがほんの少しでも楽になるなら、わたし、すごく頑張るよ」


重ね合わせた手を今度は両手で祈るように包み込んだ。


「それにリディアちゃんを1人になんてできないよ。何より大切な妹なんだから」

「ですがお姉様、わたくしはお姉様に剣を

「いいよそんなの! 姉妹喧嘩みたいなものだよ!」


なおも食い下がろうとするリディアをメディアはまた抱きしめた。

見かねたナハトがため息とともに口を開いた。


「――リディア嬢。そろそろいいのではないかね」

「……ナハトさんからそのような言葉が出るとは思いませんでしたわ。あなたこそわたくしやお姉様を恨む正当な理由がありましょう」

「あぁ。別に許すつもりはない。だが、いつまでもそうやって時間を無駄にするのもよくはない。面会時間は無限にあるわけではないのだよ」


ちらりと部屋の外を見るとナハトの私兵の後ろ姿が見える。あまり時間をかけすぎるわけにもいかないようだ。



「なぁリディア。俺たちはしばらくしたら大陸の東側に行く予定だ。具体的な場所まではまだだが、東側なら西側こちらと比べてギルドの影響力は低い。直接的な干渉はないはずだ」


"レイヴン"の監視はあるだろうが、それでもある程度はギルドの繋がりを断つことはできる。


「そうですか。それなら安心ですわ」

「他人事みたいに言ってるがお前もだぞ」


リディアは驚いたような顔をした。


「わたくしも?」

「当たり前だ。お前たち姉妹を離れ離れにするわけがねぇだろ。リディアが嫌じゃなければしばらくは俺とお前とメディアの3人で行動だ」

「別に嫌では……いえ、それよりもギュンターはシルヴィアの従者ではなくて? 主人はそれでいいと?」

「あぁそうかリディアは知らなかったな。シルヴィアはクロムウェルの次期当主の座を正式に放棄してな。ついでに俺らも従者をクビになった。それでもいずれ地元に帰って鉄騎隊に復隊するつもりだけど、今はお前たちが最優先だ」


シルヴィアの旅に同行していたのは武者修行という側面もあった。いずれは鉄騎隊を率いる身として、様々な経験を積む必要があったからだ。


「それは……嬉しいですわ。ですがわたくしはここから出られるのでしょうか」


一応色々と働きかけてはいるが厳しい面があるのは否定できない。

だが不可能ではない。それならばいつかは彼女を自由の身にできるはずだ。




「それでしたら、近々リディア・ロンバルディアの身柄は解放される予定です」


これまで部屋の外で待機していた私兵がまるで何事でもないかのように重大な事実を告げてきた。


「それは本当か!?」

「はい。クローヴィス・アークライトから得られた情報に加え、これ以上彼女を尋問しても情報を得られないと判断されましたので」

「私はそんなこと聞かされていないが……」

「そうでしょうねナハト様。私もたった今知りました」


私兵の手元には手紙があった。

どうやら気が付かない内に指示書が届けられていたらしい。


「そっか……良かった! 良かったよリディアちゃん!」


無邪気にはしゃぐメディアだが、ギュンターは少し疑問を感じていた。

リディアが自由になるのは喜ばしいことだが都合が良すぎる。



「それで? 何が目的なんだ?」


訝しむように私兵を見る。

この采配には彼の思惑は絡んではいないだろう。

それはわかってはいるが聞かざるを得なかった。


「先ほどの理由の他、もう野放しにしていても問題はないとの判断です」

「そりゃありがたいな」

「また我々に反旗を翻す理由もなく、むしろ自由を与えれば何もしないのであればわざわざ捕らえている意味はないでしょう。……スキピオ様としてもそちらの方が都合が良いとご決定になられたようだ」


仮にリディアを人質にすればギュンターたちはギルドに従うだろう。だがそんなことをせずとも、必要と判断すれば手を貸すのがギュンターたちだ。

そしてそんなことをすれば反感を買いあらゆる手を用いてリディアの解放に動くのは想像に難くない。

そうなればギルドとの抗争になる。

ギルドが勝つのは間違いない。しかし楽に勝てるわけではない。少なからず損害はでる。そこまでのリスクを負うほどの価値はリディアにはない。

そう説明する私兵にギュンターは眉を顰めた。反論をしたかったがウェンとマキナの件がある以上、下手なことは言えない。


「それならそれで構わねぇ。俺たちとしてはリディアが自由になる、そっちは恩を売れる。お互いに得するわけだ」


スキピオがウェンとマキナを見逃したのも彼なりの今回の件を解決に導いたことへの礼だけでなく、ギュンターたちに恩を売るということでもあるのだろう。


「ご理解感謝いたします」

「ありがとうございます!」


メディアはにっこりと笑いながら私兵に礼を述べた。

彼女もこの辺りの駆け引きは理解はしてはいるだろうが、それでも妹を解放してくれたことへの感謝の念が大きい。



「……それではそろそろお引き取りを」


気がつけば窓から夕日が差し込んでいた。面会時間の終わりが近いようだ。

私兵は急かすようにドアノブに手を回した。


「その、明日も来て大丈夫ですか……?」

「掛け合ってみましょう」

「よろしくお願いします……!」


無表情のまま私兵は頷いた。


「リディアちゃん明日来るからね!」

「待っていますわ。明日でも、明後日でも」


片手を大きく振りながら、メディアは部屋からでていく。ナハトとギュンターもそれに続こうとしたがギュンターだけ呼び止められた。


「ギュンター。ひとつだけ」

「なんだ」

「お姉様とわたくしのこと、感謝いたしますわ。それと……姉妹2人、末永くよろしくお願いいたします」

「おう、任せとけよ」


少なくとも彼女たちが自分の足だけで歩いていける日までは側を離れるつもりはない。

しかしながら強かな姉妹なので、そう時間がかかるものではないだろう。


「ありがとう。またここに顔を出してくれると嬉しいですわ」

「明日にでも許可が降りれば来るさ」


それじゃあな、とギュンターも部屋から出る。

大それた別れの挨拶はいらないだろう。明日や明後日には来ることになる。


「ええ、明日」




◆◆◆




「ナハトさん、ありがとうございました」


病院から出てから真っ先にメディアは深々と頭を下げた。


「止してくれ。私も彼女とは話したかったのだ」


照れ隠しのようにナハトはメディアから距離をとった。


「任務があるから私はそろそろ行くよ。遠方かつ長期間だからね、君たちとはもう会えないかもしれない」


そのまま話を変えるように早口気味に話した。


「そうか……」


一抹の寂しさを覚える。

紆余曲折あったがナハトも自分たちの仲間だと思っているからだ。


「元気でやれよ。会うことがあればまた飯でも食おうぜ」

「あぁ。楽しみにしておこう」

「ナハトさん。お元気で……!」


後ろ髪引かれるような思いでもあるのか、急ぐようにナハトは歩き出した。

長引かせても別れが辛くなるだけだ。





ナハトが見えなくなるまで見送ると2人は顔を合わせた。


「また会うとことになる気がすんだよなぁ」

「今度はリディアちゃんも含めて4人でご飯食べようね」


今度はナハトに奢らせよう、とギュンターは密かに意気込んだ。


「……よし、帰るか」

「……ふふっ、明日は何しようかな。エリーちゃんの様子見に行こうかなぁ」


まるで子どものような無邪気な笑顔を見せるメディア。

妹の件もほぼ解決しもう憂うことはなくなったのだろう。前向きになっていくのは良いことだ。彼女のこれまでを思えばこうやって笑顔を見せるのも簡単なことではなかった。

リディアもまた最愛の姉とまた歩む日々を取り戻せそうで嬉しそうな顔をしていた。


「ギュンターくん? どうしたの」

「メディアとリディアが嬉しそうで良かったってな」

「うん。ギュンターくんや皆のお陰で……わたしもリディアちゃんも前に進めるよ」


前に進む。

これまでとは変わっていくことだ。否が応でも。

その先にはまた困難が待ち受けているかもしれない。

だがこの姉妹ならば、それをも超えていける。そんな気がしていた。


「そりゃ良かった」


変わるのはギュンターも同じだ。

幼馴染たちと別の道を歩む。今はメディアとリディアと共に歩んでいく。


「ギュンターくん」

「ん」

「ありがとう。……言えてなかったね」

「気にすんな。俺が勝手にやってることだ」

「でも……少し気になるよ。わたしたち手を煩わせちゃうし、嫌じゃないかなって」

「嫌じゃない。俺が必要にならなくなるまでは側にいる。約束だ」


守ると決めたからには側に居続ける。

そう誓った。己と、元主人に。


「えへへ……そっか。嬉しい」


顔を赤くしてメディアは微笑んだ。

それと同時に何かを決意したかようにギュンターを真っ直ぐ見据えた。




「わたしも、リディアちゃんも、ギュンターくんが大好きなんだ」

「…………あぁ」


気づいていないわけではない。目を背けていただけだ。

彼女たちからの好意は精神的に疲弊していた所をつけ込んだが故の感情な気がして、どうしても素直に受け取れなかった。

それ故に彼女たちが自立し、自分ではない人間を選ぶこともまた受け入れていた。


「ギュンターくんは、もしかしてお姉ちゃんをわたしたちが斬らせたって思って責任を感じてる?」

「……そうかもな」


彼女たちに身内を斬らせてしまったとギュンター自身もそのことを引き摺っていた。

だが彼女たちはそれを乗り越えて進もうとしている。それならギュンターも進むべきだろう。


「リディアちゃんにも言ったけど、わたしも一緒にそれを背負うよ。でも、すぐに気にするなって言っても難しいよね」

「…………」


魔族になってしまった人間は身内で討つのがせめてもの弔いだということはわかっている。

しかし実際にそうさせてしまうと負い目になってしまうのだ。


「だから気にならなくなるまでは側にいるよ。ギュンターくんがわたしとリディアちゃんに悪いという気持ちが無くなるまでは、ずっと」


これで一緒だね、とリディアの時とは違って無邪気に笑う。

彼女はよく笑う。何気ないことでも、自分が関係なくても、楽しい雰囲気や前向きな雰囲気に釣られて、にっこりと笑うのだ。



「お互いにそれぞれが大丈夫だと思えるまでは、一緒にいようよ。もしそれで本当に離れ離れになっても……わたしは、いいよ」


その笑顔にちらりと影を見せるも思いの丈をギュンターにぶつけた。

もし、があれば寂しいというのを必死に誤魔化そうとしているが隠しきれていない。

それでも笑って送り出そうというのだ。


「大丈夫だと思えるまで、か」


今まで2人を保護対象だと思っていた。

しかしメディアは自分の頭で考え、自分の足で歩いていける強さをもう得ている。

保護対象だと言うのはギュンターの思い上がりであり、ある意味では見下しに近しいものだったのだろう。


「……メディアは多分、俺がいなくてももう大丈夫だ。悪いな、心の何処かでメディアもリディアもまだ誰かの力がいる存在だって思い込んでた」

「そんなことはないよ。ギュンターくんがいるから頑張ろうって思えたんだ。まだわたしにはギュンターくんは必要だよ。……2人だけにしないで、ギュンターくん」


そう言うと腕に抱きついてきた。

驚いたが、それよりも段々と言葉が震えてきていたことのがギュンターには大事だった。

妹の前だったがために元気に振る舞っていたが、少し痩せ我慢だった部分もあったのだろう。

リディアもナハトの前で見せなかったのは彼女なりの強がりだが、ギュンターの前でなら強がらず自分の弱いところも見せても良いと思えたからだろう。

それなら、その想いを今こそ正面から受け止めるだけだ。


「あぁ。……ずっと、側にいるさ」


この想いに変わりはない。

ただ、側にいる時間が増えるだけだ。


「……ありがとう。大好きだよ、ギュンターくん」


そう告白する彼女の顔は、今まで一番、幸せそうで、魅力的に見えた。

メディアも、まるで幸せというのもがそこにあるかのようにギュンターの腕を強く、強く抱きついていた。



◆◆◆



「……このまま帰っていい?」

「構わねぇけど宿のちょっと前までだ。見つかると面倒なのがいるからな」

「シルヴィアちゃん?」

「御名答」

「えー、わたしは別にいいけどなぁ」


メディアが良くても自分は良くない。

彼女に顰蹙を買ってもここを譲るわけにはいかない。


「……というかいいのかよ。リディアもなんだろ?」


話題を逸らすようにリディアの話題を出した。

好意を隠すことなく表すのはいいが、妹を前に同じことができるのだろうか。


「ギュンターくん。シルヴィアちゃんとレベッカちゃんの話は聞いたよね?」

「あぁ。エリーには少し同情……」


メディアが何を言いたいか理解してしまった。


「……お前らもか?」

「御名答!」


いいのか、それで。

喉元まででかかったその言葉をなんとか飲み込む。

彼女たちの側にいると誓った以上、彼女たちがどうするかは重要でない。

エリーも似たような考えだったのだろうか……。


「……まぁ、とりあえず帰ろうぜ」

「うん!」


色々考えることはあるが、逆に言えばそれだけ未来への希望があるということだ。

自分たちが歩む新たな道はきっとより良いものだと、そうなるように前に進むと誓ったのだった。

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