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図書館ではお静かに。

志望動機

作者: 南丘優

「手帳」の隆貴編です!

一応そのつもりで書きましたが、これ単体でも楽しめると思うので、これ読んだ後にでも「手帳」読んで頂けたらいいなと思います。


中学三年になって、部活が終わり、本格的に受験勉強のシーズンになる。

でも、俺は志望校も未だ定まらず、全くやる気がしなかった。

周りが段々と志望校を確定し、受験勉強を本腰を入れてやり始めているのを見ると、焦りは有った。

だが、「やりたい事」も「志望校の条件」も決まっていなくて、焦りだけが募る。

学校と家での「受験生」というプレッシャーに耐え切れなくなり、俺は度々図書館に行った。

大して本好きでもなく、勉強する気もないのになぜ図書館に行ったかというと、「図書館に行ってくる」と言えば、親も出かけるのに反対しなかったからだ。

図書館に行くと、漫画や雑誌を読んで過ごす。

漫画や雑誌はもともと蔵書数が少ない。

そのため、すぐ読み切ってしまった。

だからその日俺は、家から少し離れた県立の大きな図書館に行く事にした。

漫画・雑誌コーナーを見つけ、のろのろと近づく。

そこに、俺と同じ位の年齢の女の子…つまり、受験生であろう女の子がいた。

だいたい漫画や雑誌の側にいるのは小うるさいガキやおっさんばかりで、同年代の子を見かけるのは結構珍しい。

なんとなく親近感を覚え、話しかけてみた。

「こんにちは」

びくっと飛び上がりそうになるほど驚いてから、顔を上げる。

俺を認めると、安心したような顔になった。

「こんにちは」

「驚かせちゃってすみませんでした。俺とタメかなーと思って、なんか、親近感があって。」

「いえ、大丈夫です。知り合いかと思ってびっくりしちゃって…勉強、サボっちゃってるから。」

「中学三年?受験生?」

「はい。そーですよ。」

「じゃあ俺と同じだ!俺もサボろうと思って…わざわざ家から離れた図書館来たんだ!」

そう言うと、

「用意周到ですね。私もそうすれば良かったかな。」

と、彼女はくすくす笑いながらそう言った。

「そうだね。そしたら知り合いに怯える必要もないかもね!」

「あははっ。確かにそうですね。今度からはそうします!」

「またサボる気なんだ?」

「あっ…しまった!」

「こらこらー」

互いに勉強をサボっているという罪悪感が共有できたからか、かなり会話が弾んだ。


いつの間にか、5時になっている。

ほぼ雑談で時間が過ぎてしまった。

名残り惜しくて、図書館をでてからも外で話していると、

「…ところで、志望校どこですか?」

「んー…なんか、決まらなくてね…」

「そうなんですか…私も決まらなくて、とりあえず家から1番近い高校にしてるんですよねー。条件がかなり微妙なんですけど…」

「あははっ!確かにね。でも一応決まってるのは羨ましいよ。どこ高?」

彼女が挙げた高校は、県内1、2位を争う進学校だった。

おそらく近隣の高校のなかでは、1番偏差値が高い。

「すごいね。かなり頭いいとこだよね?」

「あはっ!ありがとうございます。たまたまなんですけどねー。だけど、今のままじゃ、安全圏に入れないんですよね…だから、もう少し頑張らなきゃと思うんだけど…」

「やる気出ない?」

「はい。家から近いってだけで決めた高校だから、なんとなく本気になれないっていうか…」

この時点で、俺の志望校は決まっていた。

「…そっか。じゃあさ、こうしない?」

「…?」

「俺も同じ高校目指す!だから、高校でまた会おう!」

「え?でも…いいんですか?」

「うん。どうせ決まってなかったし…なんか目標があった方がお互いやる気出るだろ?」

「…分かりました!それなら頑張れそう!」

「よっし!じゃあ、高校でまた会おう!」

「はい!会えるの、楽しみにしてます…!」

「それじゃあ、帰ろうか。もうかなり暗くなっちゃったし」

「そうですね。…また、四月に!」

「おう!またな!」


一目惚れした女の子と、同じ高校に行く。

不純な動機かもしれないが、1番やる気がでた。

さすがに両親や教師に説明する時にはそんな動機は言えないので、

「どうせ行くなら1番頭がいい高校に行こうと思ってー」

と、受けがいい建前で誤魔化した。

今までサボって来た分、かなり高校との偏差値の差がある。

それでも、必死で勉強した。

今までで1番努力したのは、部活だと思っていたが、それとも比べ物にならないぐらい本気で努力した。

もう一度、あの子に会うために。


…春

努力の甲斐あって、第一志望に合格した。

だけど、合格した事で浮かれた友達と高校デビューを狙って眉やら髪型やらを弄りまわしてしまった。

「…これじゃ、絶対あの子は俺だとわかんねーだろうな…」

今日から念願の高校に通えるというのに、落ち込みながらの入学式を迎えた。

その後、昇降口に掲示されたクラスに行く。

一学年七クラスあるので、例えあの子がいたとしても同じクラスになる確率は低いだろう。

そんな半ば諦めた気持ちで教室に行った。


そこに、いた。

窓際から二番目の列の席。

あの子が、座っていた。

教室に入ってぼんやり立っている俺にちらりと視線を向けたが、すぐに友達とのお喋りに戻ってしまう。

…やっぱり、わかんねーよな、これじゃ…

だけど、受かってたんだ、あの子も。

それに、同じクラスになれた。

これならきっと、話す機会もあるだろう。

1番廊下側の自分の席につき、これからの高校生活に思いを馳せた。








受験勉強ってなかなかやる気しないですよねー。

少なくとも私はそうでした!

なかなか志望校も決まらなくて、焦ってイライラしてたなー…

今だから言えますが、あんまり焦らなくていいんですよね。

ギリギリで決めても、ちゃんと頑張れるなら全く問題ないですし。

志望校決まってない状態で受験勉強するのってきついと思いますが、「行きたい高校が決まった時に、諦めなくて済むように。」と考えてやると後々助けられますよー。

…後書きで何語ってるんでしょうね、私は…



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― 新着の感想 ―
[一言] これは、なかなかよくできた青春劇ですね。受験にはひとこといいたいものもあるのですが、というか、地域一番の進学校に図書館にサボりに行く男子が受かるようになるには勉強量の絶対量がちがいすぎるとい…
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