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「俺が王子じゃないからだめだということか……? 嫌だ、俺のユキ、目を覚ましてくれよ!」


エリスの悲痛な叫びは大広間に響くが、死んでしまったユキには届かなかった。


「その娘、もしや『シラユキ』と申すか?」


ユキに縋りつくエリスに、妖精女王はユキのことを問うた。


「はい、彼女はシラユキ姫様です」

「なんと! 我が同胞を助けてくれたシラユキ王女ではないか!」


ユキとエリスの近くにやってきた小さな妖精は、ぱたぱたと二人の周りを飛んでいた。よく見れば彼女は泣いており、ユキの死を悲しんでいるようだ。


「そうか、やはりこの娘であったか」


痛ましいほどに愛を乞うエリスを見て、小人は再び涙を流し優しい姫様に相応しい優しい者が相手としていることを喜んだが、ユキ自身は死んでしまっているのだ。

エリスの一方的な愛を見ていた小人と妖精女王は、人間の美しい愛を見て感銘を受けた。


「そなた、名をなんと言う」


妖精女王に名前を尋ねられたエリスは、いつの間にか魔法が解けていたことに気づいたが、もはやどうでもよかった。

そして、アリスではなく本当の名を呟く。


「私はエリスと申します」

「そうか、エリスだな。王妃のように醜い者もいれば、シラユキやエリスのように美しい者もいるのだと知ることができた。よいかエリス、この娘の魂はまだ近くにある。わたくしの同胞を助けてくれたこの娘に恩を返そう。わたくしが力になろうではないか」


妖精女王、つまり妖精を統べる者が人間であるユキに恩を感じ、力になると言ってくれたのだ。王妃のように自己中心的な人間をそばで見ていたというのに、ユキの心優しい性格が妖精女王の心を動かしたのだ。

妖精女王は再び目が開けられないほど眩い光を放ち、その光がユキを優しく包んだ。


「さあ、もう一度愛の口付けをするのだ。生きている者と繋がりを持てば、かの者は戻って来よう」


それを聞いたエリスは、愛しいユキにもう一度キスをした。

すると、ユキの瞼がぴくりと動き、黒曜石のような美しい瞳と目が合ったのだ。


「ユキ!」


蘇ったユキにエリスは再度キスをした。愛してるという想いを伝えるために、何度も、何度も。


「ちょ、苦しい! やめなさいエリス!」


死んだと思ったのに、目が覚めたら大好きなエリスからいきなりキスをされてユキは大いに戸惑った。


「ユキ、好きだ、愛してる」


アリスではなくエリスの姿でいる彼に、一体何があったのかと聞きたいが、今はそれどころではない。

ずっと好きだったエリスがユキに愛の告白をしてくれたのだ。


「……うそ、本当に?」

「ああ、何度でも言うよ。愛してる、俺だけのユキ」


またしてもキスをしてこようとしたので、ユキはエリスの口を塞いでキスを免れた。別に、エリスからキスをされるのは嫌ではない。むしろ嬉しい。

しかし、よく見れば周りに人がたくさんいたので、恥ずかしくてそれどころではなかったのだ。


「なんて素晴らしい! そなた達に祝福を授けよう! 永遠に幸せに暮らせるよう、わたくし自ら魔法をかけた。これで我々の復讐は全て終わった。さらばだ、人間達よ」


無事に(?)ユキが復活したはいいが、王妃のこと、そして、エリスのことでその場は再び混乱を極めた。


ここが物語の世界と似ていることは伏せて、これまでのことをユキは王に説明する。


父は力になれなくて済まなかったと言い、本当は男なのに女と偽って可愛い娘の侍女をしていたエリスには侍女をやめさせた。


その代わり、ユキの夫となるべく勉学に励むよう命じられ、エリスはエリスとして生きていくことになる。


そして、この日よりエリスはシラユキ王女との婚約が決まったのだった。



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