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コーヒーシュガー

 やる事が全部雑で口も悪いアイツが行きつけの喫茶店「月の涙」。何度も一緒に足を運んだ。

「いらっしゃい、今日は一人かい」

「ええ。月の涙ブレンドで」

 私はメニュー表も見ずにマスターにそう告げて席に着いた。アイツが最も好きなコーヒー。コクのある深煎り。

 香ばしい匂いに包まれた瞬間、涙が溢れた。幾滴と落ちた涙の塩気とアイツをかき消すように、たっぷりと砂糖を入れた。どうせアイツは、次の女に同じうんちくを語るんだ。

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