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第六話 使い放題プラン

 そのまま村を一通り回り残っていたゴブリンを狩りつつ、使えそうな物を回収した。だがゴーレム練成に必要な核になる素材は見つからなかった。核となる素材は魔石や魔結晶などだが、手持ちで使えるのはティアの練成時に使った水の女神の守護石の小さい物が一つだけ。しかもこれを使うのはマズいかもしれない。ティアの練成に使った時のルミニエの慌てぶりを考えると相当貴重で重要な物みたいだからだ。ルミニエの言葉を速攻で無視して練成に使ってしまうと流石にマズいだろう。流石に今度こそマジ切れするんじゃなかろうか。


(おーい聞こえる?)

「え、ルミニエ?」

(うん、ちょっと言い忘れたことがあってさ)


 いきなり頭の中にルミニエの声が響いてマジでビビった。ちょうど【水の女神の守護石】をまたゴーレム練成に使っちゃダメかなと考えていたからタイミングが良過ぎる。コイツ思考盗聴してんじゃね? 半分冗談だけどコイツの場合やってても不思議ではない感がある。


(今、私の守護石持っているでしょ。それ常に身に着けておいて)

「なんで?」

(身に着けるか、今みたいに直接持っていれば力の消費無しにこうやって話せるから)


 身に着けるってアクセサリーにしろってことか。ネックレスは戦う時邪魔かな。指輪で良いか。ちゃちゃっと錬金術で指輪にして装備する。効果の確認は後で良いか。

 それにしても練成リストに何でもあるな。素材から作れる物をリストアップすることも、逆に欲しい物を作るのに必要な素材を表示させることも出来る。親切設計だ。


(うんうん、これでいつでも話せるし、見守って上げられるね)

「ん? 見守る……それって監」

(女神はいつも迷える子羊を見守っているのです)

「もしかして暇なのか?」

(暇だよ)


 まさかの即答。もう駄目かも、この世界。世界の危機なのに暇って、ルミニエは本来一番頑張らないといけないんじゃない? ついつい俺も皮肉を言いたくなる。


「仕事もせずにむしゃむしゃ喰らうゴブリンの魂は美味しいか?」

(魂なんて食べないから! 分解してエネルギーにしてるだけだから)


 それは食べて消化、吸収することと何が違うんだ? 俺は訝しんだ。ルミニエはなんかまだ言い訳しているし。


(力の消費を抑えているから、出来ることが無いだけなの。いっぱい力を使って作った私の守護石……)


 だれ”がざん”がれ”ん”ぜい”に”づがぢゃっだがら”


 頭の中で恨みがましい濁った声が響き、目の前に半透明なルミニエが姿を現した。怖いってマジで。


(まあ良いんだけどね。結果を見ればこれはこれで悪い使い方じゃなかったし)


 ルミニエの姿が小さなデフォルメキャラに変わって肩を竦めている。情緒不安定過ぎるぞ、この子。イジり過ぎた俺も悪いけどさ。


「じゃあさっきの恐怖の演出はなんだったんだよ」

(このくらいの嫌がらせは甘んじて受け入れるべき。あのサイズの守護石はホントにキツいんだよ)

「お、おう」


 小さなルミニエがふわりと飛んでティアの肩辺りに浮遊して、何かを確かめるようにティアの顔をペタペタ触れている。


(うーん、もうこれはゴーレムではないね)

「人間だろ?」

(人間とゴーレムどちらか、と聞かれれば……天使が一番近いかな?)

「天使はどこから出て来た」

(あのさあ、この子は完全にゴーレムの枠を超えちゃってるの。でも人間でもないの、だから天使)


 天使って違う宗教じゃないか、と思ったが元々ルミニエは俺の知る主要な宗教からは逸脱しているよな。単にルミニエが他宗教を知っているだけで、その中で一番近いのが天使ってことなのかな。

 俺の疑問をよそにルミニエは満足したのかティアに触れるのを止める。


(もう完全に新しい命と言って良い存在だよ。責任を持ってちゃんとしなよ)

「分かってる。酷い扱いはしない」

(それはトーゼン。私の力の結晶である守護石、しかも特大のを使って生み出した命だからさ。もうほとんど私の眷属みたいなものだよ)


 ルミニエが俺にじとーっとした目を向ける。


(出会ったその場で子作りしちゃうなんて悪い男に引っかかっちゃたよ)

「誤解を生む言い方は止めろ。あと俺を強制的にこの世界に連れて来たのはお前だろうが引っ掛けたのそっちだろ」

(魔物殺して気持ち良くなってたよね? 気持ち良くなっちゃったよね? じゃあ、もう合意の上と言っても過言じゃないよ)

「性犯罪の常習犯みたいな理論を振りかざすな。それに気持ち良くなってねえよ、俺はシリアルキラーかよ」


 俺がきっぱり否定してもルミニエはぶつぶつ言っている。終いにはティアにまで(満更でもないって顔だったよね)とか聞いている。

 何だよ、俺は文句は言いつつも実は好きみたいな素直になれない思春期の少年かよ。そんな訳無いだろ。こちとらもう四十台になろうかというオッサンだぞ。年齢の割に落ち着きがないのは、怒涛の展開にテンションがバグってるだけだ。


「はい、主様は素晴らしい戦い振りでした。私も目の前で繰り広げられる雄々しい戦いを拝見し、濃い霧が吹き払われたかのような清々しい気持ちになりました」


 結構グロ映像だったと思うのだがティアは語りながら陶酔した様子である。実は凄く好戦的だったりするのだろうか。意外だな。


「ん、ルミニエの言葉がティアにも聞こえているのは何でだ。態々力を使ったのか?」

(何言ってんの。君が装備している守護石より大きなやつを、ティアの核に使っているんだから同じように出来て当たり前でしょ)

「完全に同化してると思ったけど変質したりせず、そのまま体に残っている感じなんだな」

(まあそういうこと)


 物がそのまま残るということは、こいつもゴーレム練成に使っても構わないのでは? 俺は自分が装備した守護石の指輪をちらりと見る。


(ダメだよ)

「うおっ」


 いつの間にか俺の耳元にルミニエがいた。俺の考えを察知したようだ。何故分かったのだろう。やっぱり思考盗聴なのか。アルミホイルって練成リストにあったかな。


(あのさあ、それ使ってもティアちゃんのようには成らないよ。私の守護石は確かに特別だけど、体に使った女神像も特別だったんだよ。二つが揃って初めて起こった奇跡だから)


 確かに女神像の方も特別感が最初からあった。しかも【水の女神の守護石】とその女神をモチーフとして作られ長く信仰の対象になっていた【女神像】という深い関連性もあった。改めて考えると同じ様な結果を出すには、足りない物がある。


「大人しく次は普通のゴーレムを錬成します」

(はい、お願いします)


 俺が神妙に告げるとルミニエも殊更真面目そうに答えた。ノリ良いよな。

 普通のゴーレムを錬成する為の素材が必要なわけだが。魔石や魔結晶の入手法がいまいち分からない。ゲームでは魔物を倒すとたまにドロップしていたのだが、今のところドロップはしていない。これについて非常に嫌な予感がしている。


「ルミニエだったら分かるかな。魔石って……」

(魔物の心臓の近くにあるよ)


 自然に大きな溜息が出た。魚ですら数回おっかなびっくり捌いたことがあるだけの俺が、魔物の心臓付近にある魔石を抉り出すのか。考えるともう一度大きな溜息が漏れ出る。


「つれえわ」

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