ツタンカーメンの目玉はどこへ ⑥
つまり、この時点で犯人になりそうなのはツタンカーメン王墓を調査していた関係者に限定されたわけである。
ここで話を少しだけ脇にそらす。
黄金の棺から目玉部分を取り出した調査関係者は当然口を閉ざすのは当然であるが、その後多くのエジプト学者がこの王の遺物について研究しているにもかかわらずこの件について触れる者はいない。
これは実に奇妙なことである。
そして、そうなるともう一度浮上しそうなのが、「多くの専門家がそれについて触れないのだからやはり金の棺には最初から目玉はなかった。そして、それがあるように見えるのは偶然そう見えるだけで実際にはなかったのだ」という意見である。
個人的にはこれは相当厳しいといえる。
ただし、あるとした写真もクリーニング前のものであるから、偶然両目に見えるようにゴミがその部分についたという可能性はないでもない。
さらに、「では、わざわざそこにはめ込むためにつくられたにもかかわらず空洞したのはなぜか?」という疑問も出てくるわけだが、これについて妄想によっていくらでも理由付けはできる。
宗教上の理由などなんらかの理由で意図的に黄金の棺の目玉部分を象嵌しなかった。
いや、作業が間に合わなかった。
いやいや、単純に忘れただけだ。
この話を始めたら、迷宮の森から抜け出せなくなるので深入りはしないが、その気になればいくらでも話はつくれるのである。
もうひとつの意見として調査中、またはクリーニング中に差損させてしまったというものが考えられる。
これであれば、調査チームの責任になるため、ハワード・カーターが何事もなかったかのように報告書で一切触れることがないのも説明できる。
ただし、ここでも破損したものはどうしたという疑問は出てくる。
まあ、そうなれば、証拠隠滅を兼ねて支援者の誰かに売り払ったということは考えつく。
ということで、他の可能性を排除したところで、犯人捜しを続けることにしよう。