プロローグ あり得るはずのない『婚約破棄』
連載するぞー! 好き勝手に書くぞー!
異世界恋愛のイロハなんてないでーす!!
「アリス・エルカトレア――現時点をもって、私はキミとの婚約を破棄する!」
「…………ちょっと、少しだけ考える時間をいただけますか?」
「考える時間……?」
「はい。ちょっとこれは、想定になかったもので」
「あ、あぁ……そう、なのか。たしかに?」
金髪碧眼の聖女、アリス・エルカトレアはそう言って考え込み始めた。
彼女に婚約破棄を言い渡した公爵家嫡男、ルルド・アファードはあまりに冷静な相手の態度に流されてそれを了承してしまう。使用人や執事、その他の関係者も引き払わせた二人きりの部屋の中、ただただ何とも言えない沈黙だけが続く。
仕方ないので、ルルドは先ほど使用人が用意した紅茶を一口。
ボンヤリとソファーに腰かけて、難しい表情を浮かべているアリスの言葉を待った。そして、そのまま小一時間ほど経過した頃合い。
「いや、ないわ。こんなの、シナリオになかったはず」
「……シナリオ?」
考え終わったらしいアリスが、あまりに砕けた口調でそう漏らした。
そろそろ木の枝の葉が何枚あるのか数えようとしていたルルドは、振り返って微かに聞き取れた単語だけを繰り返す。見れば聖女は、ひどく落胆した面持ちで彼を見ていた。
そのような暗い表情など、出会ってから一度も見せてこなかったアリス。
ルルドは自分の言葉で彼女をそこまで追い詰めたのか、と少しだけ不安になった。
「えーっと、ルルド様。一つ確認良いですか?」
「え、は……はい」
思わず襟を正すルルド。
「最近、誰か他の女性から私の悪評など耳にしましたか?」
「それは、そうだな。……部分的にそうかもしれない」
「その方は私の友人の中にいますか?」
「……はい」
「その友人の名前は、エリカ・オブライエンですね?」
「えっと……」
一つと思っていたのに、矢継ぎ早に問われて狼狽えるルルド。
しかし、そんな彼の表情を見て確信に至ったらしい。
「なるほど。では、少しエリカと話をしてきますね」
「え!?」
アリスはそう告げると、そそくさと部屋を出て行ってしまった。
思わぬ展開にルルドは何もできず、ただ呆然と立ち尽くす。
そして、しばし考えた後にソファーに腰かけて、
「この焼き菓子、思ったより美味しいな」
そんな間の抜けたことを言うのだった。
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