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呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ【書籍1巻&コミックス2巻発売中!】  作者: 花宵


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48/50

【書籍発売記念SS】仮面公爵と白猫

 冬の寒さが残るとある日の夕方、気分転換に庭園を散歩していると白猫が迷い込んできていた。 


「にゃあ」とか細い声で鳴く白猫は痩せており、お腹をすかせているように見える。


 リフィアはその場に屈んで、おいでと優しく声をかけながら手を差し出した。白猫はゆっくりとこちらに近付いてくると、手に頭を擦り寄せてくる。


「ミア、この子に食べをものをあげてもいいかしら? お腹をすかせてるみたいなの」

「もちろんです! 厨房に行って何かもらってきますね!」


 白猫を撫でてあげながらミアの帰りを待っていると、「リフィア、そんなところに座り込んでどうしたんだい?」と背後から声をかけられた。

 振り返ると軍服に身を包んだオルフェンが立っていて、どうやら今帰宅したようだ。


「シャアアア!」


 ごろんと石畳に横たわっていた白猫は突然奇声を上げて飛び起きると、物凄い速さで逃げてしまった。


「あ……ご、ごめん。僕が声をかけたから……」


 逃げ出した白猫を見て、オルフェンが悲しそうに眉根を寄せる。


(魔力が強いせいで、オルフェン様には動物が寄り付かないと仰られていたわね)


「リフィア様! 猫ちゃんの餌、もらってきました!」


 その時タイミング悪くミアが帰ってきた。哀愁を漂わせながら佇むオルフェンを見て状況を察したのだろう、ミアは手に持っていた餌をさっと背中に隠した。


「お、おかえりなさいませ、旦那様」

「ああ、ただいま……着替えてくるよ……」


 そう言い残して、オルフェンはその場から足早に立ち去ってしまった。遠くの生垣に隠れていた白猫が、こちらの様子をじっと窺っている。


 ミアが器に入れた餌を地面に置くと、白猫はゆっくりとこちらに近付いてきて美味しそうに食べ始めた。


(オルフェン様にも、この可愛い姿を見せてあげたかったな……)





 その日の夜、寝室に入るとオルフェンが、白いウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めながら顔を埋めてソファに座っていた。


 こちらに気付くと「あ、いや、これは……」と慌ててぬいぐるみを隣に置いたオルフェンを見て、昼間の出来事がよほどショックだったのだろうとリフィアは心が痛んだ。


「な、なるべく外では近付かないようにするから!」

「どうしてですか?」

「僕が近付くと猫が逃げちゃうし……リフィアに、嫌われたくない……から」


 オルフェンの隣に置かれた白いウサギのぬいぐるみを拾い上げ、リフィアはその場に腰を下ろす。ぎゅっとぬいぐるみを抱き締めて口を開いた。


「私はオルフェン様に逃げられた方が悲しかったです」

「……え? ご、ごめん! そんなつもりはなくて!」

「わかっています。可愛い猫ちゃんの姿をオルフェン様と一緒に見たかった、私のわがままだと……」


 困ったように笑うオルフェンに、リフィアはにっこりと笑みを浮かべてとある提案をする。


「オルフェン様、よければ私のわがままに付き合っていただけませんか? 一緒に猫ちゃんと仲良くなりましょう!」


 目を丸くしてこちらを見るオルフェンに、リフィアは色々と考えた作戦を話す。


 恐怖心を和らげるために、白猫が警戒心を解いてくれるよう好きな餌や玩具を用意したり、可能なら魔力を感知されにくくする魔導具を作れないかアスターにお願いしたりなど、思いつく限りのことをとにかく必死に提案してみた。


「いかがでしょうか? 毎日少しずつでも距離を近付けていければいつかはきっと……!」

「そんなの、わがままって言わないよ。君が見せてくれるあたたかな世界が、僕にはいつもまぶしすぎて……っ、この上なく愛おしいんだ。ありがとう」


 目尻に涙を滲ませながら、そう言って微笑みかけてくれるオルフェンは息を呑むほど美しく、リフィアは思わず目を奪われる。


「仲良く、なれるかな……?」

「はい! なれるまで、一緒に頑張りましょう!」





 それから二人は白猫と仲良くなる作戦を立て実行に移した。


 仲良くなるには、まずは信頼を得ることが大切だ。白猫にとって、ここが安心して安らげる居場所なんだと思ってもらう必要がある。


 雨風や寒さを凌げるよう、寝床に使える小屋を置き、中には暖房用魔導具を設置して白猫が凍えないよう安心して休める場所を作ってあげた。


 それと平行して、痩せ細った白猫に栄養価のある食事を与えることにも注力した。


 猫の生態について調べ上げたリフィアとオルフェンは、積極的に摂取したがいいものをピックアップして、それをもとに料理長のアイザックに猫用特別フードを作ってもらうよう頼み、朝夕二回毎日それを規則正しい時間に与えるようにした。


 リフィアは白猫を離れた位置に呼び寄せ、オルフェンが毎日餌を置く姿を白猫に見せながら優しく声をかけ続けた。


 オルフェンがその場を離れると、白猫は警戒しながらも餌を食べるようになり、痩せ細っていた身体は少しずつ本来の健康を取り戻していった。


 白猫が公爵邸の庭園を気に入ってくれた頃、オルフェンが休みの日には一緒に猫用の玩具を買いに行ったりもした。


「この玩具なら興味を持ってくれるかな? でもここが尖ってるから、少し危険かもしれない……」


 白猫のことを考え真剣に悩むオルフェンを見て、話にしか聞いたことはないけれど、とても家族思いだったというアレクシスの面影が見えた気がした。


(オルフェン様、アレクシス様のように子どもができたらとても可愛がってくれそうね)


「それでしたら、こちらの鈴の音が鳴る玩具はいかがでしょうか?」

「それなら危険なところもないし、確かによさそうだね!」

「お魚のぬいぐるみなどもありますよ、オルフェン様」

「猫が喜ぶ香りがついてるんだね! やっぱりここはすべて買……」

「いけません、オルフェン様! いきなりたくさんのプレゼントをあげては、きっと白猫さんをびっくりさせてしまいます!」


 すべて買おうとするオルフェンを、リフィアはすかさず止めた。


「確かにそうだね」

「はい! なのでじっくり選んでからに、しましょうね?」

「そうだね! リフィア、付き合ってくれてありがとう」


 そうして選び抜いて買った猫用の玩具を餌と一緒に横に添えたりなどして、少しずつ白猫との距離を縮めていった。


 最初はオルフェンを見るたびに逃げ出していた白猫も、そうして毎日焦らず根気強く信頼を得る努力をしていくうちに、少しずつ警戒心が薄れてきたようにみえる。


 白猫はやがて、オルフェンが置いた餌を、警戒しつつも口に咥えて離れた位置で食べるようになった。


「僕のあげた餌を、目の前で食べてくれた!」


 初めての光景を前に、オルフェンは嬉しそうに破顔している。


 完全に警戒心はとれたわけではなさそうだが、それでもオルフェンが自身に危害を加える人間じゃないと白猫は認識したようだった。


 それからしばらくして――


「見て、リフィア! 初めて猫を撫でれたよ!」


 無邪気な少年のように喜ぶオルフェンの隣で、リフィアは幸せを噛み締めながら笑顔で相槌を打つ。


 クロノス公爵家に新たな家族が増える日も近そうだ。

書店特典SSにしようとしたものの、文字数オーバーで没にしたものです。眠らせていても可哀想なので、加筆してこちらに載せました。


ここからは少しだけ書籍の宣伝を……!


花宵初の紙書籍……角川ビーンズ文庫様より、本日より発売中です!


初見の方だけでなく、WEB版を読んでくださった皆様にもより深く楽しんでいただけるよう大改稿して、それぞれの絆や恋愛面も大幅強化しています。


WEB版の問題点を全て洗い出した上で、全面的に改稿しておりますのでかなり読みやすく、そして一冊の本として没入感を得やすくなっていると思います。


アニメイト購入特典では、リフィアとオルフェンの甘いひとときを書き下ろしたSSペーパー「とある午後のひととき」をお楽しみいただけます。


電子購入特典では、オルフェン視点から物語の裏側を書き下ろした一万字のSS「君を幸せにしたい(Side.オルフェン)」をお楽しみいただけます。


ぜひお手にとって読んでいただけると幸いです。


またコミカライズ企画も進行中なので、応援していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします!

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