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呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ【書籍1巻&コミックス2巻発売中!】  作者: 花宵


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47/50

最終話 呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ

 半年後――イシス大神殿の大聖堂では大勢のゲストに見守られ、とある一組の夫婦の結婚式が盛大に執り行われた。


 黒の大賢者オルフェン・クロノス

 大聖女リフィア・クロノス


 ヴィスタリア王国を支える偉大な名誉勲章を持つ二人の姿を一目見ようと、沿道には多くの人が押し寄せ祝福した。


 王都でも一番人気の高級仕立屋に作らせた純白のウェディングドレスは、色白で華奢なリフィアの可憐な美しさを最大限に引き出していた。


 裾には繊細なレースを幾重にも重ね、歩く度にふわりと上質なシルク布が揺れる。窓から差す陽光を浴びてキラキラと輝いていた。


 綺麗に編み込まれた白髪の上にはゴールドティアラが輝き、耳にはオルフェンの瞳の色と同じアメジストの嵌め込まれた美しいイヤリングが揺れる。神秘的なベールの下でもそれらの輝きは異彩を放っていた。


 そんなリフィアを優しくエスコートしながら隣を歩くのは、白の礼服に身を包んだオルフェンだった。


 襟元にある白地のジャボの上に輝くのは、リフィアの瞳と同じブルーサファイアの嵌め込まれたブローチ。中にはグレーのベストを着用し、白地に金の刺繍が施されたジャケットを羽織っている。


 普段の黒い軍服は厳格なイメージを与えがちだが、対になるよう作られたその特別な白い礼服は、オルフェンの儚げな美しさを際立たせていた。


 そんな二人の美しさに、会場からは思わず感嘆のため息が漏れていた。


 教皇エレフィスが立会人を務め、誓いの言葉を読み上げ問いかける。それに対し二人がしっかりとした口調で誓いの言葉を述べ、式は滞りなく進んだ。


「それでは、誓いのキスを」


 向かい合って、オルフェンがゆっくりとリフィアの頭に被せられたベールをめくる。


 二人が幸せそうに微笑み合い誓いのキスを交わした瞬間、イシス大神殿全体にキラキラとした温かな光の花びらが降り注いだ。


「リフィア、オルフェン、幸せになるのよ!」


 数百年ぶりに世界樹セレスの祝福を受けたその結婚式は『幸せの象徴』としてヴィスタリア王国史に刻まれ、後世まで語り継がれることになる。





「皆様、ご覧ください!」


 結婚式後に開かれた披露宴では、メアが手品で会場を賑わせ大いに盛り上げてくれた。


 半年間、メアはこちらの世界で普通に生活できるよう現代の知識を身に付けながら、手品の練習も欠かさず頑張った。


 父カイルがやっていた手品を思い出し、そのトリックを必死に考え再現すべく試行錯誤を繰り返していた。


 久しぶりに多くの人の前で手品を披露したメアは、始めは緊張していた。しかしやっているうちに楽しさがそれを乗り越えさせたのだろう。彼のステージは笑顔と拍手に包まれていた。



 挨拶回りも一段落し、会場から少し離れたベンチで休憩をしていると声をかけられた。


「お姉様、お隣よろしいですか?」

「ええ、勿論よ」

「結婚式とても素敵でした。改めてご結婚おめでとうございます!」

「ありがとう、セピア。今度はあなたの番だね。とても楽しみだわ! その時は、私も呼んでくれる……?」


 あれからセピアとラウルスは順調に絆を深め、半年後には結婚式を挙げる予定だ。二人が復縁したとオルフェンに聞いた時は、リフィアは自分の事のように喜んでいた。


「勿論ですわ! 私が幸せを掴めたのは、全てお姉様のおかげです。本当にありがとうございます」

「そんな事ないわ。セピア、あなたが自分で頑張って掴んだ幸せよ」


 どこか暗い影を落とすセピアは、思い詰めた顔をしていた。


「ずっと、お姉様に言いたい事があったんです!」

「急にどうしたの?」

「酷いことをして、誠に申し訳ありませんでした。あの頃の私は、自尊心を保つのに必死でお姉様の気持ちを考える余裕もなくて、本当に酷いことをしてしまったと、ずっと後悔していました」

「セピア……」

「ラウルス様に、謝る相手を間違っているのではないかと言われて初めて、自分の浅はかさに気付かされました。今さら虫のいい話なのはよく分かってます。ですが私は……これからもずっと、リフィアお姉様に、私のお姉様で居て欲しいです」


 あの時の返事が聞けた事が嬉しくて、リフィアはセピアの膝の上で強く握られた拳の緊張を解くように、手を取って口を開く。


「勿論よ! あの時、あなたが助けに来てくれたから、私は今こうして幸せになれたんだもの。セピアは私の自慢の妹よ! それに聖なる火の鳥を召喚した時のあの姿、とてもかっこよかったわ!」

「あ、ありがとうございます……!」


 それからしばらく、二人はこれまで話せなかった事を少しずつ互いに話した。今まで埋められなかった溝を、少しずつ埋めるように。



「フィア、セピア、助けてくれ!」


 話に花を咲かせていた頃、こちらに走ってきたアスターが何故か二人の背中に隠れた。


「待て、アスター!」

「往生際が悪いですよ、殿下!」


 オルフェンとラウルスが、背中に隠れているアスターに鋭い視線を投げ掛ける。


「アスター殿下、一体何をなされたのですか?」

「無実だよ! 私は何もしていないんだ!」


 リフィアの問いかけにアスターはぶんぶんと首を左右に振る。


「リフィア!」

「セピア!」


 リフィアとセピアはそれぞれオルフェンとラウルスの腕の中に引き寄せられ、閉じ込められた。


 次の瞬間、ドドドドドと大きな足音が近付いたかと思えば、すぐに遠ざかっていった。ほっとした様子で、オルフェンはリフィアを解放する。


「何があったのですか?」

「陛下が大々的にアスターの婚約者を募集し始めたらしくてね、名乗りをあげた令嬢達にモテモテらしいんだ」

「俺達を盾にして逃げようとする殿下を捕まえようとしたのですが、うまくいかず……」

「昔から、逃げ足だけは速いんだよね」


 そう言ってオルフェンは視線を前方に向ける。


「あそこにいらっしゃるわ!」

「待ってください、アスター殿下!」

「ひぃいいい!」


 令嬢達の群れから逃げるアスターを見ながら、オルフェンがため息をついた。


「折角の僕達の披露宴で、あれは迷惑でしょ? 縄で柱に結んでおこうと思ったんだけど」


(オルフェン様、それはいくらなんでも酷すぎるのでは……)


「床に粘着材、仕掛けておきますか?」

「それは他の人の迷惑になるからね」

「では殿下の魔力にだけ反応する罠を」

「そうだね。やっぱりアスターには檻がよく似合う」


 オルフェンとラウルスの物騒な会話に、この二人、馴れてるわ……とリフィアは苦笑いしていた。


「あ、あの、ラウルス様……」


 未だ腕に抱かれたままだったセピアが、顔を真っ赤に染めて呼び掛ける。


「ああ! すまない。苦しくはなかっただろうか?!」

「は、はい! 大丈夫……れす……」

「大丈夫ではありませんわ! ラウルス様、すぐにセピアを休憩室へ運んであげてください!」

「分かりました」


 のぼせたように気絶してしまったセピアを、ラウルは横抱きにして休憩室へと向かった。


(幸せになってね、セピア)


 リフィアの幸せの中には、周囲の人々も幸せであることが、不可欠だった。それはクロノス公爵家に来て、オルフェンにたくさんの愛情をもらい、温かい人達に囲まれて過ごす中で感じたこと。


(皆の笑顔が、私を幸せにしてくれる。そうして生まれた幸せの連鎖が繋がって、もっと大きな幸せになる。それを教えて気付かせてくれたのは……間違いなくオルフェン様ね)


 目の前でアスターをどうやって捕獲しようかと画策する愛しい人を見上げる。

 リフィアはオルフェンの服の裾を掴んで、軽く引っ張った。それに気付いたオルフェンは、優しく微笑んで声をかけてくれる。


「安心して、リフィア。悪は必ず掴まえて大人しくさせるから。僕と君の大切な日に騒動を起こす馬鹿者には、容赦しないよ」


 結婚式という大切な日をオルフェンがとても大切にしてくれているのは、よく伝わってくる。それでもそんな騒動も、後から思い出すときっと楽しい思い出になるはずだ。


「傍に居て欲しいです、オルフェン様。アスター殿下にばかりかまわれて……さみしい、です」


(ごめんなさい、オルフェン様。でもさすがに、縄で柱に結ぶっていうのはよくないと思うんです……)


 少し後ろめたさを感じつつも、リフィアはオルフェンをひき止めた。


「……えっ!? ごめん、そんなつもりは微塵もなかったんだ! どうしても目について……」


 オルフェンの頬に手を伸ばして、リフィアは口を開く。


「今日だけは、私を見てて欲しいです。オルフェン様を独り占めしちゃ、だめですか?」


(どうか今のうちに逃げてください、アスター殿下)


 よく助け船を出してくれていたアスターに、心ばかりの恩返しのつもりだった。


 それにリフィアは、騒がしいアスターが嫌いじゃない。笑顔で突拍子もない事をして皆を驚かせる、トリックスターのように賑やかな人。彼のおかげでオルフェンの色んな顔を知ることが出来た。


「全然だめじゃない。愛してるよ、リフィア。僕の目に映るのは、いつだって愛しい君だけでいい」


 オルフェンがリフィアの手に自身の手を重ねると、子猫が甘えるかのようにすりすりと頬擦りする。


「リフィア、君に出会えて僕は世界一の幸せ者だ。必ず君も幸せにするから、これからもずっと僕の傍に居てね?」

「勿論です! だってオルフェン様の存在こそ、私の幸せそのものなんですから。愛してます、オルフェン様」


 花が綻んだように可憐な笑顔を浮かべるリフィアを見て、はっと息を飲んだオルフェンの瞳には、堪えきれない熱がこもっているように見えた。

 そのまま吸い寄せられるように近付いてきて、触れるだけのキスをされた。名残惜しそうなオルフェンの眼差しが、こちらをじっと見つめている。


「ねぇ、リフィア」


 リフィアにだけ聞こえるように、耳に顔を寄せてオルフェンが囁く。


「僕達も少し、休憩室に行かない?」


 その言葉で、リフィアの耳は瞬く間に真っ赤に染まった。はにかみながら、リフィアは口を開く。


「はい、オルフェン様!」


 差し出された手に自身の手を重ねて、リフィアはオルフェンと共に歩き出す。

 大きくて温かい、少し筋張ったオルフェンの手を、リフィアは嬉しそうに握りしめる。だってこの手を掴んでいる限り、未来には幸せしかないと知っているから――






【呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ】 Fin.

これにて本編完結です。

最後までお読みくださり、ありがとうございます!


もし少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆☆☆☆☆を押して応援していただけると大変嬉しいです!


またすでにブクマや評価を入れてくださった皆様、連載を追いかけてくださった皆様、大変励みになりました。本当にありがとうございます!


2023.01.30 花宵

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