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呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ【書籍1巻&コミックス2巻発売中!】  作者: 花宵


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第43話 新しい未来の幕開け

「どうせ夢は叶わない。もう疲れたんだ。この世界で生きる事も、こんな化け物みたいな体で生きる事も……!」


 メアの悲痛な叫びが、夜の森にこだましていた。人間に育てられ優しい心を持った悪魔はただ、人間として生きたかった。それが叶わず、嫌でも戦いを強要される世界に身を置かねばならなかった。


 どれだけの悲しみを抱えて生きてきたのだろうか、想像すると胸が痛くなった。


「まさか魔王自ら世界を滅ぼしに来てたとは……」

「私一人がどんなに抗っても未来を変えられなかった理由が、よく分かったよ」


 オルフェンとアスターが、話を聞いて唖然としている。


(やはり楽しそうに手品を披露されていたあの姿こそ、メアさんの望んでいた本来の姿だったのね)


「メアさん。よかったらあなたの体に残る邪気を、浄化させてもらえませんか?」

「好きにしたらいい。終わらせてくれるなら、もう何でもいいよ。僕が自我を保っていられるうちに、滅ぼして」


 投げやりに言い捨てられたメアの言葉を、リフィアは力強く否定した。


「終わらせたり、しません!」


 神聖力が浄化するのは邪気だけだ。メアが一番大切にしたかった優しい心や夢は、きっと残るとリフィアは信じていた。


「だって次は別の手品を見せてくれる約束をしました。私はメアさんの手品が、また見たいんです! もっとたくさん、これからも……!」


 どうか夢を諦めないでと、リフィアは必死に訴えかける。


「それはもう、叶わない夢だ」


 メアは琥珀色の瞳を伏せると、小さく首を横に振った。


「いいや、叶えてもらわないと困るな。リフィアの望みは、何でも叶えてあげたいからね。君が一流のマジシャンになれるよう、僕が支援しよう」

「……は? 何を言ってるんだ。悪魔の僕に、どうしろっていうんだよ!」


 オルフェンの言葉に、メアは憤りをぶつける。そんなメアをアスターは顎に手をかけ、じっと観察しながら口を開いた。


「傷さえつけなければ、普通にこうして話せるじゃないか。私は今のお前が、悪魔には到底見えないよ」


 アスターの言葉に、メアが「え……」と小さく驚きの声を漏らす。


「確かにそうですね。相手に危害を加えられて自身を守るために反撃するのは、正当防衛です。その力が強すぎたのが、問題だっただけなのかもしれません」

「ですが正当防衛で魔王にまで上り詰めたなんて、とてもすごいですわ!」

「な、何なんだよ君達は……僕は悪魔なんだよ!?」


 ラウルスに冷静に分析され、セピアに褒められ、メアは動揺を隠しきれない。


「体は確かにそうかもしれません。ですが大切なのは心だと思います」

「望んでも、いいの? こんな僕が、人として生きたいなんて……っ!」

「体全体に傷が付かないよう、防御魔法をかけた装身具を持たせればいい。そうすれば、外的要因で君が暴走することもないだろう?」

「君達は……っ!」


 遠い昔に失った人の温かさに触れ、メアの心に懐かしさが込み上げたその時――


「メア、今日こそ魔王の座を明け渡してもらうぞ! 次の魔王はこの俺、邪龍族のドランゴ様だ!」


 悪魔、邪龍族の大群が空を占拠していた。


「囲まれているではないか! いつの間にこんなに悪魔が!?」


 空を指差しながら、アスターが動揺を露にする。


「狼狽えるな、アスター。元よりこのような状況を想定して来たじゃないか。ちょうどいい、腕ならしだ」

「待って! そいつ等は僕を倒しに来たんだ。だから僕が相手をする」

「メア、無理をする必要はない」

「君達は、僕の話を聞いてくれた。魔王じゃない、悪魔じゃない、僕自身を見てくれた。今ならこの力を、正しく使えそうな気がするんだ。だから僕にやらせてくれ!」

「分かった。それなら僕は君のサポートに回ろう。雑魚は任せてくれ」


 オルフェンはメアの檻を解いた。


「いや、その必要はないよ。彼等にはこれからやって欲しい事があるからね。まぁ、見てて」


 翼をはためかせ、メアは一人邪龍の群れと対峙する。


「覚悟しろ、メア! お前さえ倒せば夢魔族など敵ではない! くらえ!」


 素早い動きでドランゴのブレス攻撃を避けながら距離を詰めたメアは、ドランゴに対峙して口を開く。


「そんなに魔王の地位が欲しいならくれてやるよ。元々僕には必要のないものだ」


 メアは右手の甲を自身の鋭い牙で噛んで傷を付けると、手を大きく天へ向かって振り上げた。


「でもね、血気盛んな魔王は嫌いだ。こんな大群で人の世界に干渉するのは、迷惑でしょ?」


 黒い邪気ではなく、虹色のオーラがメアの手から放たれ、夜空を覆い尽くし明るく照らした。まるで夢の空間にでもいるかのように、ふわふわと温かい。


「な、何だこの空間は!」

「夢魔族っていうのはね、元々夢を見せて相手を矯正して操る種族なんだ。だから君、僕の代わりにこれから魔王、よろしくね」


 空から虹色の雨が降り注き、邪龍の群れに降りかかる。


「ぐあああ!」


 邪龍達が苦しそうに呻き雄叫びをあげた後、次々とメアに向かって頭を垂れた。


「僕はこちらでやらなきゃいけない事がある。だからドランゴ、邪龍族の長である君に、正しく平和にあちらの世界を統治して欲しいんだ」


 大きな宝箱を召喚したメアは、それをドランゴに手渡した。


「これは僕が管理してた全魔塔の鍵さ。君にあげる。頼めるかな?」

「お任せください、メア様! 我々邪龍族一同、悪に侵された悪魔の世界を、メア様の理想とする本来の美しい世界へ必ずや戻して見せます!」

「さすがは頼れる邪龍族の長殿だ。じゃあ、皆も頑張ってね」


 メアの言葉に、邪龍達は「お任せください!」と力強く頷いた。


「皆の者、隊列を作り広がらずに飛ぶのだ。空は我々だけのものではないからな! 生きとし生けるものへ敬愛を持ち、いざ任務遂行だ!」

「はっ!」


 ドランゴの指揮の元、邪龍族は規則正しく隊列をなし飛び去った。


「これでしばらくは、悪魔はこっちで悪さしないと思うよ。ああ見えても彼等は、魔王継承権ナンバー2の種族だからね」


 地面に降り立ったメアはそう言って、飛び立った邪龍族の大群を眺める。


「彼等に何をしたんだ?」


 オルフェンの問いかけにメアは答える。


「【夢の終焉】を使って、本来の力の千倍の幻覚魔法をかけて矯正してあげたんだ。僕の目指す理想郷を、自ら崇拝したくなるようにね」


 他者に傷つけられて働く怒りの防衛本能を、自ら傷を付け律することで、メアは【夢の終焉】の新たな使い方に気付いた。むしろそれが本来の使い方だったのかもしれないと、今になってメアは思う。


「なるほど、強制的に改心させたという事か。すごいな、メア!」


 瞳を輝かせて褒めるアスターに、「そ、そうでもないよ」と謙遜しつつも、メアの口元は嬉しそうに綻んでいた。


「君達には迷惑をかけたからね。色々と酷いことをして、ごめんなさい」


 深々と頭を下げた後、メアはリフィアの前に足を進め跪いた。


「聖女様。どうか僕の中に残る邪気を、全て浄化してください。僕は、可能性にかけてみたい」

「メアさん……分かりました!」


 メアの右手を両手で優しく包み込み、傷から少しずつ神聖力を流し込む。


「ぐっ」と苦しそうに胸を押さえ踞るメアを見て、「大丈夫ですか?!」と寄り添い流し込む神聖力を止める。


「やめないで! 大丈夫、だから……!」

「分かりました」


(神様、どうかお願いします。心優しきメアさんに、新たな道をお示しください)


 全ての邪気を浄化し終わった後、リフィアはメアに声をかけた。


「メアさん、気分はいかがでしょうか?」

「軽い、すごく心が軽いんだ! 嫌な思念も流れて来ないし、最高だ……っ! ありがとう!」


 やったーと喜ぶメアを見て、リフィアの口元からは自然と笑みがこぼれる。


「よかったです……これでまた、メアさんの手品が……」


 傾くリフィアの体をオルフェンが咄嗟に抱き止めた。


「ありがとうございます。あれ、おかしいな……何だか力が入らなくて……」


 体を起こそうとしても起こせない。オルフェンの胸にもたれかかったままの体を、ぎゅっと包み込むように優しく抱き締められた。


「本当によく頑張ったね、リフィア。帰ってゆっくり休もう」

「はい、オルフェン様……」


 緊張が解けほっと胸を撫で下ろしたリフィアはやがて、オルフェンの腕の中でスースーと健やかな寝息をたて始める。

 起こさないように、妻を大切に横抱きにしたオルフェンは皆に声をかけた。


「さぁ、僕達も帰ろうか」

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