第75話 報告会
シャワーから上がって少し落ち着いたところで、近況報告会を行うことにした。
「ふぅー、本当にスッキリした。やっぱ風呂があると最高だな」
「ですよね! お風呂があるだけで、ここまで快適具合が変わるのかとビックリしてます」
「レアルザッドにいた時も、早めに『シャングリラホテル』を出るべきだったんじゃないか? たまーにクリスと近くの銭湯いってたけどよ、意外と金もかかったもんな」
「うーん。……それはどうだろうな。俺はあの時の生活があってこそだと思うぞ。じゃなきゃこんなに感動できてない」
「それは一理ありますね。裏通りの生活や、駆け出し冒険者だったときのゴブリンすら倒すのに精いっぱいだった事。その時の気持ちがあるからこそ、ずっと上を目指して頑張れてますから」
「そうだな……っと、今は風呂のことじゃない。この一週間の話をしよう」
一週間ぶりの風呂が気持ちよすぎて、思わず話が脱線してしまった。
話を戻して、この一週間の成果について話し合う。
「一週間の成果といえば、クリスに報告がある」
「報告?」
「ああ、実はな――」
「私がシルバーランクに昇格しました!」
ラルフが溜め、ヘスターが大声でそう報告した。
そうか、ヘスターもとうとうシルバーに上がったか。
依頼の失敗もないし、指定ありの依頼をコンスタントにこなしてきたから、そろそろだろうと思っていたがようやくだ。
「レアルザッドにいたころに上がってもおかしくないとは思っていたが、とうとう上がったのか。おめでとう」
「ありがとうございます。これも全てクリスさ――」
「感謝はいらんいらん。ヘスターの努力のたまものだ。……そんでラルフはどうなんだ?」
「んー。もう少しかかるかもなぁ。リハビリで休んでた分、ヘスターとはかなりの開きが生まれちまったから」
「そりゃそうか。まぁ焦らず依頼をこなしていってくれ。そっちはまだ他に報告はあるか?」
俺がそう尋ねると、二人は顎に手を抱えて悩み始めた。
……まぁ、やることはレアルザッドにいたころと大差ないもんな。
「グリースに絡まれもしなかったし……。うーん、ヘスターの昇格以外に報告することあったか?」
「ないなら大丈夫だ。ヘスターはラルフが昇格するまで、これまで通り手伝ってやってくれ」
「はい。分かりました!」
「それじゃ、次はクリスの報告だな。この一週間でどんな成果があったんだ?」
さて、まずは何から報告するか。
順を追って話した方が分かりやすいと思ったため、俺は錬金術師のシャンテルについてから話すことにした。
「森に籠る前に、一人の錬金術師と仲良くなった」
「錬金術師って、クリスが気になってた錬金術師の店のか?」
「ああ、そうだ。俺らと同い年くらいの若い女の錬金術師が営んでる店でな。ちょっといいポーションが手に入ったから試してみて欲しい」
俺は『旅猫屋』で買ったポーションを取り出すと、二人に一本ずつ手渡した。
「へー。一般的な奴とは少し違うのか? 見た目はまるっきり同じに見えるけどな」
「冷却作用のある回復ポーションらしく、冷やすことで炎症が軽減されるらしい」
「凄いですね! 若いのにこんなポーションまで作れるなんて」
「オックスター近辺のことについても詳しそうだったから、二人には今度紹介する。面倒くさい性格をしているが悪い奴ではなさそうだったからな」
「そりゃ楽しみだ! 仲良くなれば安くポーションを回してくれるかな?」
「どうだろうな。金にはかなり困ってそうだったから、それは難しそうだと思うが」
『旅猫屋』とシャンテルについてを話し、続いてカーライルの森についての話題へと移る。
「森での成果はどうだったんだ? レアルザッドにいたころによく行っていた森よりも良かったのか?」
「良し悪しの判断はまだ難しいな。レアルザッドの方の森はとにかく静かな森だったのが良かった。有毒植物の種類に関してはそこそこって感じだったけど、採取には専念しやすい森だった」
「対するオックスターの方はどうなんですか?」
「魔物がとにかく多いけど、その分有毒植物の種類も多いって感じだ。求めていた植物も見つけられたし、うまいこといけばこの森で俺はかなり強くなるかもしれない」
単純な身体能力だけでなく、もしかしたらスキル習得も叶うかもしれない。
“死のリンゴ”。オンガニールの生態が未知すぎて確信は持てないけど、その可能性は十分にある。
俺はそのことを、二人に詳しく説明することにした。