後日譚 第96話
宿に戻った後はラルフとへスターにも軽く報告を行った。
そして、翌日。
ブルースと情報を共有するべく、待ち合わせ場所であるカフェへとやってきた。
ここは個室があるカフェのようで、報告を行うにはうってつけの場所らしい。
俺は初めてやってきたのだが、確かにオシャレすぎないし客の入りもほどほど。
奥に個室もあって、中々に穴場の場所だと思う。
「おう! クリス、やっと来たか!」
「もう来ていたのか。随分と早いな」
「報告したいことがあって、気が逸っちまった! とりあえず注文してくれ!」
俺はブルースの真向かいに座り、渡されたメニュー表を見て注文内容を決める。
アイスコーヒーとトーストを注文してから、早速だが報告を行うことにした。
「それだけ気合いが入っているってことは、良い情報を得られたってことか?」
「ああ! だから、俺から報告させてもらうぜ! 俺はブルターニュ家と関わりがある奴らを調べたんだが、かなりドス黒い連中が見つかった!」
「ドス黒い連中? 悪人ってことか?」
「そう! ブルターニュ家と付き合いのある貴族のほとんどが、反グレを護衛として雇っている連中だったんだ! 調べてびっくりしたんだけどよ、多分ブルターニュ家が関わっているぜ!」
テンションの割に、そう大した情報ではないことに驚いてしまう。
いや確かに、ブルターニュ家が斡旋している可能性もあるが、明確な繋がりかと言われると微妙。
「ブルターニュ家の護衛が反グレとかではないのか?」
「俺もそう思っていたんだけど、どうやらブルターニュ家の護衛は元王国騎士団の人だった。俺も昔に見たことがあったし、隊長にも確認したが本物。ブルターニュ家は普通の人間を護衛にしているってのがまた黒いだろ?」
「まぁどうなんだろうな。怪しくはあるが、明確な黒要素かと言われたら微妙だと思ってしまう」
「まじかよ! 絶対に真っ黒だろ!」
ブルースはこう言っているが、情報としてはかなり弱い。
俺が『イレブン商会』のことを調べたっていうのもあるけどな。
「いや、その線から確証のある情報に持っていくのはかなり無理筋だな」
「くっそ、絶対に大当たりかと思ったのによ。それで、クリスの方は何か情報を見つけたのか?」
「ああ。ブルターニュ家についてを調べていたんだが、調べていくうちに一つの道具屋との関わりが浮上してきて、その道具屋についてを調べてきた」
「道具屋? なんていう道具屋なんだ?」
「『イレブン商会』って道具屋だ。ブルースは知っているか?」
「もちろん知ってるぜ。大通りにある大きな道具屋だろ? それがどうした……あれ? 『イレブン商会』?」
何か思い当たったのか、ブルースは顎に手を当てて考え始めた。
そしてしばらくしてから、手のひらに拳を当てて思い出したリアクションを見せた。
「そうだ! 『イレブン商会』はブルターニュ家が懇意にしている道具屋だ! 大した情報じゃないと思って記憶から消していたけど、思い出した!」
「それは本当か? 繋がりを調べるのに時間がかかると思っていたけど、早くも繋がったな」
「んで、その『イレブン商会』はなんなんだ?」
「大手の道具屋でありながら、真っ黒な道具屋だ。昨日、軽く尾行したんだが、『イレブン商会』の店長が変装して、夜の闇市に入っていった」
「マジかよ! 本当に黒じゃねぇか! 『イレブン商会』とブルターニュ家に繋がりがあったってことは、ブルターニュ家は黒で確定だよな?」
確定とまでは言い切れないが、ほぼほぼ黒で間違いないだろう。
ブルースが調べてくれた護衛の件もあるし、動くに値する情報は得られた。
「99.9%は黒だな。本来ならこの0.1%も埋めてから動くべきだと思うが、俺はもう動き出していいと思っている」
「クリスはやる気になったか。……まさか一日調べただけで、黒を確定させられるとは思ってなかったわ!」
「まぁ、あくまで末端の悪事を突き止めただけだからな。この情報だけじゃブルターニュ家を捕まえることもできないだろうし、あくまでも俺が動くに値する情報を手に入れることができただけだ」
「それで十分だろ! クリスのことはあんま好きじゃないけど、クリスの実力は認めているからな! クリスなら……悪事を働いている貴族連中を何とかできるだろ?」
「それは分からない。分からないが……全力で叩き潰すために動くことを約束する」
俺がそう伝えると、ブルースはワクワクしたような表情を見せてから笑った。
ここからは、動きをアレクサンドラと一緒に考えつつ、本格的に闇市に裏の組織を作る。
俺が名実ともにトップに上り詰め、根底からこの腐った組織図を破壊する。
覚悟が決まったこともあり、色々な不安は吹き飛んだ。
一つ申し訳ないのは、ラルフとへスター、それからスノーに魔王の件を丸投げすることが正式に決まったこと。
心の底から信頼しているため、心配は一切していないのだが、申し訳なさはやはり感じてしまうな。
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