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後日譚 第93話


 シャーロットから貴重な情報を得られたため、俺とブルースは名前の挙がった貴族について徹底的に調べることにした。

 どれも名家ではあるようだけど、まずはゴドフロア……つまりブルターニュ家に絞って調べることにした。


 ブルース曰く、ブルターニュ家は今でこそ名家の一つだが、元弱小貴族だったみたい。

 とは言っても、弱小貴族だったのは百数十年前の話。


 なんとなく名家になった過程で、闇市での一件が絡んでいるのではと考え、ブルターニュ家から調べてみることにした。

 浅い考えではあるかもしれないが、可能性としては高いと思っているため、狙いを定めて調べるのは効果的なはず。


「それじゃ、俺はブルターニュ家と懇意にしている人間を調べてくる! クリスはブルターニュ家を調べてくれ」

「分かった。朝に一度集まって、その時に近況報告をしよう」

「了解! それじゃあな!」


 ブルースとは早々に別れ、俺は一人でブルターニュ家についてを調べることにした。

 これまでは『闇市に関わっている貴族』という漠然でありながら、そんなことを知っている人間なんてほとんどいない情報だったため、何の情報も得ることができなかったが……。


 ブルターニュ家についてなら、簡単に情報を得ることができるはず。

 まずは情報屋に行き、大まかな情報を把握する。


 それから、気になった情報をピックアップし、重点的に聞き込みをするという流れでいいはずだ。

 フードを被って軽い変装を行ってから、俺は情報屋へと向かった。



 やってきたのは、バーの一室にある情報屋。

 ヘスターが闇医者であるブラッドを見つけた時に利用した情報屋であり、俺もクラウスの情報を手に入れる際に利用した。


 久しぶりに来たが、相変わらず怪しい感情しか抱かない外観。

 ちゃんと『open』になっているのを確認してから、俺はバーの中に入った。


 この時間でも静かに酒を飲んでいる客が数人おり、俺はそんな客たちを横目に、マスターの正面に座って銀貨二枚を無言で置いた。

 大分前の記憶であり、かなり曖昧なのだが、確かヘスターはこうしていたはず。


「こちらお水になります」

「ありがとう」


 水の注がれたお洒落なグラスを手に取り、俺は提供された水を一気に飲み干した。

 そして、グラスの下に置かれたコースターを手に取り、店の奥にある扉の前までやってきた。


 記憶が曖昧だったため、一連の流れにヒヤヒヤしたが、これで合っているはず。

 俺はコースターを扉の小窓から入れ、しばらく待っていると……カチャリという鍵が開けられた音がした。


「どうもいらっしゃい。……知らない子ね。初めての利用かしら?」


 部屋は薄暗く、ピンクの間接照明の怪しい室内。

 その部屋の真ん中には、化粧の濃い情報屋の男が座っていた。


 前よりもインパクトが強く見えるのは、服装の変化だろう。

 紫色のタンクトップにバラ柄の短パンという、あまりにも奇抜な格好。


「……いや、一度だけ利用したことがある」

「あら? 忘れてしまっていてごめんなさいね。ということは、私の情報が良かったからリピートしてくれたのかしら?」

「んー……まぁそういうことでいい」

「んふっ、つれないわね。だらだらと喋っていても仕方がないから本題に入らせてもらうけど、あなたが欲しい情報は何かしら?」

「ブルターニュ家について教えてほしい」

「ブルターニュ家? 随分と渋い貴族を調べているのね。あまり情報はないけれど、私の知っていることなら教えるわ」

「教えてくれ」


 情報屋は投げキッスで返事をしてから、机の引き出しから一冊のファイルを取り出した。

 あのファイルに色々な情報がまとめられているのだろう。


「えーっと、ブルターニュ家の当主はゴドフロア。評価はそこそこで、良くも悪くも先代から引き継いでから何もしていないわね。名家ではあるけれど、目立った功績のない貴族って感じだわ」

「ブルターニュ家の怪しい噂は聞いたことないのか?」

「全くね。さっきも言ったけれど、良くも悪くも話題にならない貴族なの。ベルジック家と仲が良いから、今の地位を保っていられているというのが世間の意見ね。私もそう思うわ」

「なるほど。ということは、これ以上の情報は期待できないのか」


 目立っているベルジック家よりも、ブルターニュ家の方が悟られずに調べることができそうと思っていたが、この様子じゃ大した情報が出回っていなさそう。

 今日は引き続き調べてみるつもりだが、ブルースの方も大した手がかりがなければ、ベルジック家の情報集めに切り替えるべきかもしれない。


「あー、ちょっと待ってね。……んふ、少し面白い情報があるかも」

「面白い情報? それはなんだ?」

「ごめんなさいね。ここからは有料でやらせてもらっているの」


 情報屋の男は人差し指と親指を激しく擦り合わせて、金を払うように要求してきた。

 口車に乗せられている気がするが、ケチッても仕方がないため、金貨を一枚取り出して机の上に置いた。


「あら! 金貨一枚もいいの? この十分の一でいいのよ?」

「構わない。その代わり、面白い情報を頼む」

「んふ、気前の良い男は好きよ。そういうことなら、こちらも隠さずに教えるわ。ブルターニュ家は『イレブン商会』という大手の道具屋と、相当仲が良いみたい。『イレブン商会』は王都の大通りにも店を構えていて、行商も行っている表向きは有名な道具屋って感じだけれど、ブルターニュ家と違ってこっちは相当悪い噂を聞くの。掘れば何か見つかるかもしれないわ」


 これはかなり面白い情報。

 『イレブン商会』から掘っていき、その後にブルターニュ家との繋がりを調べれば、ブルターニュ家が黒である確証を得られるかもしれないな。



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よろしければ手に取って頂けたら幸いです。

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