後日譚 第88話
バンダナ連中を端まで連れ、ここで話を聞くことにした。
まずはこいつらが誰なのかを聞くことにしよう。
「お前たちは何者なんだ? 急に襲ってきたということは、何か意図的なものなんだろ?」
「だ、誰がお前らなんかに話すか!」
この状況だというのに、まだ心は折れていない様子。
気絶させないことを意識しすぎて、攻撃の手が甘かったかもしれない。
「話したくないというなら別に構わない。……アレクサンドラ、もう少し痛めつけても大丈夫か?」
「ああ。殺さない程度に留めてくれたら構わない」
許可ももらったことだし、早速痛い思いをしてもらうとしよう。
まずは【威圧】で脅してから――。
「す、すまねぇ! 降参だ! 何でも話すから、痛めつけるのは勘弁してくれ!」
まだ一発も入れていないのだが、【威圧】にビビったバンダナ連中のリーダーが即座に敗北宣言を行った。
こんなにすぐに降参するのであれば、最初から情報を話せと言いたくなるが……話すと言ったのだしまぁいいか。
ただ、ここまでの小者だと、大した情報を持っていない可能性が高そうだ。
「次に反抗したら問答無用で一発叩き込む。王国騎士は殺したら駄目みたいだが、俺は別に殺しても構わないから、手加減するつもりは一切ない」
「わ、分かった! 分かったから拳を下してくれ!」
俺は振り上げていた拳を下ろし、改めて話を聞くことにした。
まずこいつらの正体は、『ロール団』という名前で活動しているチンピラだった。
上に大きな組織があるとかはなく、ただ知り合いだけで作ったチームのようで、正にうだつの上がらないチンピラ。
今回は雇われて護衛をしていたようで、俺たちが近づいたから絡んできたとのこと。
こいつらを雇ったのは、俺たちが入ろうとした建物で店を構えている者らしく詳しい情報は知らないらしい。
大した情報は得られないと思っていたが、予想以上に何も知らない連中だったようだ。
「予想以上に使えないな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 言うことを聞けば、何も手を出さないって約束だったろ!?」
「出さない。だから早く消えろ。ただし、次に見かけたら本当に手加減はしない。二度と闇市に近づくな」
【威圧】を使いながら脅し、『ロール団』とやらを逃がした。
本当なら捕まえた方がいいのだろうが、王都の牢屋はチンピラでいっぱいであり、捕まえたところで収容できる場所がないらしい。
元々大きな牢屋を用意していなかったこともあるが、一気に犯罪者が増えたせいで何もかも追い付いていないとのこと。
「これは……酷いな。正直、想像以上だ」
「クリスさんにも分かって頂けましたか。個々では本当に大したことはないのですが、指示している者がいないので追いようがないんです」
「本当に、まだ『ザマギニクス』や『アンダーアイ』がいた頃の方がやりようがあったな」
「捕まえるにも収容所がない! そもそも捕まえても無数の下っ端が暴れているだけだから、いくら取り締まっても無限に沸いてくる状態なんだよ! それに加えて酷いことをするのに躊躇のない連中だから手に負えねぇ!」
ブルースがそう叫んだが、本当に言っている通りの状態だというのが分かった。
向こうは何でもしてくるのに対し、王国騎士団には制限がかかっているのも痛いと思う。
“組織”についてを色々と考えさせるな。
「結果的に見たら『アンダーアイ』を潰さず、維持した状態でコントロールするのが正解だったってことか。この目で見たことで、どう収集つけるのが正解なのかさっぱり分からなくなった」
「大きな収容所を作り、全てのチンピラを叩き込むしかないかもしれませんね。闇市を潰す案も出ていますが、ここが一つの砦のようにもなっていますので、闇市の外に被害が出る可能性から渋っている状態となっています」
「今のこの状況を見ると、そう考えるのが普通だろうな。何も策を打たずに闇市を潰したら、更に居場所をなくした連中が暴れ回るのが目に見えている」
かといって、他に打開策を思いつくこともなく、三人で頭を悩ませたまま、とりあえずギルモアと合流することになった。
襲われたこともあり、ギルモアの安否が心配ではあったが、十人くらいの王国騎士を引き連れていたことから無事な様子。
「隊長! ……と、クリスさん。お久しぶりです」
「ギルモア、そっちは襲われていなさそうだな。闇市で何をしていたんだ?」
「人が襲われているという通報があって、中に入って調べていたんです」
「それで、その襲われている人は助けられたのか?」
「いえ。どうやら虚偽の通報だったらしく、色々と調べましたが何もありませんでした」
「いつものやつか。……はぁー、本当に困るな」
話を聞く限り、虚偽通報も多くあるようだな。
人員が割かれるのは痛いし、通報があったのなら王国騎士としては動かざるを得ない。
この数時間だけで、げんなりするほど今の治安の悪さが身に染みて分かった気がする。
魔王も大事だが、それ以上に人間の方が悪意は上なのではと、改めて思い知らされている感覚になるな。
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