後日譚 第84話
ラルフとヘスターとも別れ、俺は一人でグラハムのところへ向かうことにした。
せっかくだし、この際にラルフとヘスターを紹介してもいいかとも思ったのだが、本題と離れてしまうことは確実のため、俺一人で向かうことにした。
その間、ラルフとヘスターには魔王大陸までのルートを調べてもらっており、一応いつでも魔王討伐に動き出せるようにしておく。
向こうの戦力とかも分かっていないし、どのタイミングで動くかは未定だが、情報は集めておくに越したことはないからな。
そんなことを考えつつ、再び教会へと戻ってきた俺は、グラハムのことを尋ねることにした。
俺達が挨拶回りをしている間に、他の街に移動していなければすぐに見つかるはず。
「すまないが、一つ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか? 知っていることであれば、お答えいたします」
「グラハムという神父を探していて、知っていたらどこにいるのか教えてほしい」
「グラハムさんですか? 奥の部屋にいると思いますので呼んできますね」
すぐに見つかるとは思っていたが、最初に声をかけたシスターが呼びに行ってくれた。
俺は教会内で待っていると、先ほどのシスターがグラハムを連れて戻ってきた。
グラハムは相変わらず、爽やかで顔立ちがいい。
「あっ、クリスさんではないですか! 王都に戻ってきていたんですね」
「ああ。つい先日戻ってきたんだ」
「お二人はお知り合いだったんですね。それでは私は失礼致します」
「呼んできてくれてありがとう」
俺は去っていったシスターにお礼を伝え、グラハムと一緒にひとまず教会の外へと出た。
「ただの挨拶をしに来たって訳ではないですよね。何か大事な用事があって来たんですか?」
「まぁそうだな。できれば、人気のないところで相談させてほしい」
「分かりました。そういうことであれば、以前ご紹介した『ルアン』に行きましょう」
「ぜひ連れていってほしい。用事も大事だが、『ルアン』にも行きたかったからな」
「ふふ、気に入ってくれたみたいで良かったです」
グラハムと軽く雑談を交わしつつ、王城近くの『ルアン』へとやってきた。
やはりセレブばかりが集まる地区ということで、今回も俺は完全に浮いている。
「来たはいいものの、予約なしでも入れるのか?」
「この時間なら大丈夫だと思います。私は顔が知られていますからね」
「そういえばそうだったな。ここはグラハムに任せる」
「ええ、任せてください」
爽やかな笑顔でそう言ったグラハムは、店に入るなりウェイトレスと話を始めた。
最初は入れない的な雰囲気だったが、グラハムと話した瞬間に腰が低くなり、すぐに個室の客席へと案内された。
「やっぱりグラハムは凄いな。クロスランド家ってそんなに凄いのか?」
「どうでしょうか。家柄というよりかは、王国騎士団長の父の影響が凄いだけだと思います。クリスさんは王国騎士団に知り合いはいらっしゃらないのですか?」
「いるぞ。三番隊隊長のアレクサンドラと、副隊長のギルモア、それから一般騎士のブルースって奴も知り合いだ」
「三番隊の隊長さんとお知り合いだったのですか。……なるほど。スラム街での『アンダーアイ』壊滅の成果は、クリスさんが絡んでいたんですね」
「その情報だけでよく辿り着いたな」
「クリスさんが『アンダーアイ』とやりあっていたのは知っていましたから。それにしても、三番隊は今もかなり大変そうですよね」
三番隊が大変そう?
王都を発つ前にアレクサンドラとは会ったが、特に変わりなかったように見えたが……お礼参りをしている間に何かあったのだろうか。
早く本題に入った方がいいのは分かっているが、流石に気になってしまう。
「大変そうというのはどういうことだ? ……もしかして王子関連か?」
「王子関連がよく分かりませんが、王子に関することではないと思います。『アンダーアイ』がいなくなったことで、スラム街の治安が一気に悪化したんですよ。そのために三番隊が駆り出されていると聞きました」
シャーロットと繋がりがあるし、王子関連かと思ったのだが違ったようだ。
それにしてもスラム街の治安が悪化……?
「『アンダーアイ』がいなくなったのに治安が悪化した? 言っている意味が分からない」
「『アンダーアイ』は悪党でしたが、あれでもスラム街をまとめていたようです。そのまとめ役がいなくなったことで、末端のチンピラが暴れ出しているようですね」
「そんなことがあるのか。てっきり『アンダーアイ』を摘発できたから、治安は良くなると思っていました」
「組織がなくなったことでむしろ足取りも追いづらくなり、手を焼いていると父が言っていましたね。歯止めも利かなくなくなっていて、今のところ『アンダーアイ』がいなくなったことで治安が悪化しているようです」
そんなことがあるのか。
てっきりスラム街もなくなるまであるのではと思っていたんだが、まさかの治安が悪化していた。
もちろん『アンダーアイ』を壊滅させたことへの後悔はしていないが、原因の一端は俺にもあるため、近い内に様子を見に行こう。
「そのことは初めて知った。グラハム、教えてくれてありがとう」
「いえいえ。私も父から軽く聞いただけですので、本当かどうかは分かりませんので。それで……本題は何でしょうか? この件について訪ねたかった訳ではないですよね?」
「ああ。グラハムには別で聞きたいことがある」
この情報を聞けただけでも、こうしてグラハムと会ったことに意味はあったのだが……。
俺が聞こうと思っていたのは、教会が持っているであろう“何か”について。
グラハムが知っているかどうかは分からないが、訊ねてみるとしよう。
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