後日譚 第81話
シャーロットとの話し合いにより、流れで魔王を討伐することになってしまった。
確かに魔王を倒した者の従魔となれば、イバンも堂々と街の中に入ることができるようになるんだと思うけど……今になって冷静に考えると、上手く口車に乗せられた感は否めない。
シャーロットが大々的に公表してくれさえすれば、魔王を討伐せずともいけそうな気もするしな。
まぁ魔王を討伐すること自体は嫌って訳ではないし、どちらにせよラルフの目標である世界最強の冒険者になる――って夢を叶えるには、遅かれ早かれ標的として定めていただろう。
「魔王討伐に英雄かぁ……。この間まで指名手配犯みたいな扱いだったのに、何だか未だに実感が湧かないな!」
「でも、楽しそうですよね。クラウスへの復讐とは違って大々的に掲げらる目標ですし、魔王を討伐した日には英雄になっちゃうんですから」
「そう簡単な目標ではないだろうが、面白そうではあるな。国を挙げて支援してくれるって言ってたし、噂が広まればイバンも隠れないで済むことになりそうなのが大きい」
「でもよ、魔王討伐ってまずは何から始めるんだ? てか、魔王ってどこにいるんだ?」
魔王討伐を掲げたのにも関わらず、魔王の居場所すら把握していないラルフ。
先行きが不安になってくるが……実を言うと俺も全く分からない。
俺達は魔王を倒そうとしていたクラウスを倒すために動いていたから、どちらかといえば魔王寄りの立ち位置。
魔王なんか眼中にすらなかったため、知らなくて当然といえば当然。
「俺も分からない。ヘスターは知っているか?」
「魔王大陸にいる――という大雑把なことぐらいしか分かりません。まずは情報集めからですかね?」
「なら、シャーロットに聞くのが一番早いかもな。あんな別れ方して戻ることになるのは少し恥ずかしいけど」
「いや、情報を貰うのに適任な奴が一人いるじゃん! クラウスは一応魔王討伐に動いていたんだろ? てことは、その仲間は魔王の情報を持っているに違いないぜ!」
「……なるほど。ドレークに聞くってことか」
ラルフの言う通り、ドレークならば間違いなく情報を持っているだろう。
クラウスの元仲間ってだけで避けたくなってしまうし、実際に俺は苦手ではあるのだが、知り合いに情報を持っている人間がいるのであれば聞かない手はない。
「良い案だと思いますが、ドレークさんは今どこで何をしているんですか?」
「謹慎中とか? 俺も会ってないから分かんねぇや!」
「今は俺達がクラウスを殺したことを世間に悟られないよう、ドレークが色々と偽装工作してくれている。シャーロットから魔王討伐も命じられていたけど、それに関しては俺が一旦止めさせたから王都に残っているはずだ」
「じゃあ早速ドレーク探しからだな!」
「基本的に話はラルフから頼む。俺はドレークが苦手だからな」
ということで、王都にいるであろうドレーク探しから行うことに決めた。
どこにいるかも検討はついていないが、ドレークは有名人だし体も無駄に大きい。
軽く聞き込みをすれば簡単に見つかるはずだ。
ドレークを探し始めて約三十分。
情報を頼りに教会へとやってきたのだが……教会でお祈りをしているドレークを見つけることができた。
想像していたよりも簡単に見つけることができて良かったが、一体何をやっているんだろうか。
「ドレーク、久しぶり! 教会で何をやってるんだ?」
「ラルフ、久しぶりだな。……ヘスターとクリスも」
声を掛けたラルフを見て口角を上げたのだが、後ろに俺がいることを知って、口角を下げたドレーク。
やはりドレークも俺のことは苦手みたいだな。
まぁここまでの経緯を考えれば、俺のことを苦手にならない理由はないが。
「おう! で、教会で何やってたんだ?」
「何って祈りを捧げていた。クラウス達が魔物との戦いの中で死んだってことを広めた後、特にやることがなかったからこうして教会に通っているんだ」
「なるほどなるほど! 暇を持て余していたってことか! なら、丁度いい! 少し俺達に協力してくれ!」
「協力? 協力って一体何の協力だ?」
「魔王についての情報提供! 何なら、ドレークも直接手伝ってくれてもいいぜ!」
「すまねぇが話が全く見えてこない。どういうことだ?」
「だから、魔王のことを教えてほしいってこと! ちょっとこっちで話を聞かせてくれ」
まだ状況を飲み込めていないドレークの手を引っ張ると、教会の外へと連れ出したラルフ。
俺が同じことをやったらキレられるだろうから、まさしくラルフだからこそできる協力のさせ方だな。
それからドレークを連れ出した後、個室のある飲食店へと引っ張ってきたラルフ。
ドレークも鬱陶しそうにしていながらも、急に連れ出されたことには怒ってなさそうだし、問題なく魔王についての情報を聞くことができそうだ。
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