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後日譚 第80話


 イバンは洞窟の中で待ってもらうことにし、俺達は王都へと戻ってきた。

 そろそろシャーロットが戻ってきてもおかしくない時間のはず。


 まぁギルド長のお陰で良い隠れ場所を教えてもらい、滝の中ということもあってアイスワイバーンであるイバンにとって過ごしやすい環境だから、王都に入る許可を貰えなかったとしても大丈夫そうではあるけどな。

 そんなことを考えつつ、シャーロットの帰りを待っていると……冒険者ギルドから出てきたシャーロットとミエルの姿が見えた。


「あっ、シャーロットだ! やっぱりもう戻ってきてたみたいだな!」

「戻ってすぐに会えて良かったじゃねぇか。それじゃ俺はこれで失礼させてもらう。また時間がある時にイバンを見せてくれ」

「……ん? ギルド長は挨拶しないのか? 戻る場所も冒険者ギルドだろ?」

「俺は王女様が苦手なんだよ。それじゃあな」


 そう言うと、シャーロットに見つかる前にどこかへ行ってしまったギルド長。

 苦手にしている感じはあったけど、逃げるほどとは思っていなかった。


 もしかしたら色々と無茶を言われているのかもしれない。 

 俺はそう考察しつつ、王城へ帰ろうとしているシャーロットとミエルに声を掛けた。


「シャーロット、ちょっと時間はあるか?」

「誰かと思ったらクリスじゃない。別に構わないけど、お風呂に入りたいから手短にしてね」

「分かった。簡潔に伝えるが――アイスワイバーンを従魔にしたから、王都に入れてもいいっていう許可をくれ」

「アイスワイバーンを従魔にしたっていう情報は流れてきていたけど、クリス達のことだったの?」

「ああ、そうだ。ダンジョンで仲間にしてきた。シャーロット達も戦いはしただろ?」

「戦ったけれど、従魔にするとかではなかったはずだけどね」

「クラウスもよっぽどぶっ飛んでたけど、やっぱりクリスのがぶっ飛んでる」

「ミエル、俺をクラウスと一緒にすんな」

「やってることはほぼ同じなのよ」


 流石に心外すぎる。

 俺はミエルを睨んだのだが、そっぽを向いて知らん顔された。


「さっきの質問の返答だけど、許可は出せないわ」

「えっ? なんでだよ」

「当たり前でしょ。あんな化け物が街の中に入ったら大混乱になるわよ。少し考えれば分かるでしょ」


 なんとなくは分かっていたけど、シャーロットに言ってもやっぱり駄目だったか。

 今のところイバンを従魔にしたメリットよりも、デメリットの方が大きすぎる。


 このままだとイバンには、一生外で待機してもらうことになるかもしれない。

 それだけは何とか回避してあげたいんだけどな。


「ちなみにだけど、どうすれば街の中に入れてもいいんだ?」

「どうしたって無理と言いたいところだけど……英雄にでもなれば、アイスワイバーンでも受け入れてくれるかもしれないわね。英雄なら従魔がワイバーンでも納得感あるでしょ?」

「英雄になれって回答がアバウトすぎるだろ。そもそも勇者候補だったクラウスの暴走を止めただけでも、英雄と言われてもおかしくない偉業だと我ながら思うしな」

「その線で英雄として扱われるのは無理ね。私は別に公表しても構わないと思うのだけど、保守的なお兄様が全力で止めにくると思うわ。実際に、知名度の高かった勇者候補が悪事に手を染めていたことは公表させないって言っていたから」

「保守的っていうよりも、シャーロット……じゃなかった王女様の成果になるのを阻止しに来たって感じだったけどね」

「別に言い直さなくていいわよ。あなたが陰で私のことを呼び捨てにしているのは知っているから。というか、呼び捨てで呼んでくる時の方が多いから隠せていないのよ」

「いえ。面倒なことになるので、王女様と呼びます」

「だから、呼べていないんだけどね」


 ミエルの呼び捨て問題で若干脱線してしまったが、クラウスの件はシャーロットの兄、つまりこの国の王子のせいでクラウスの件は公表できない様子。

 シャーロットは命を狙われているなんて話も聞いたし、これはゴネたところで難しそうだな。


「呼び捨て問題はどっちでもいい。それよりも俺達はどうしたらいいんだ? また手柄を挙げたところで、シャロートの兄貴に手柄を隠されたら終わりだろ?」

「確実に英雄になる方法ならあるわよ。それは――魔王を倒すこと。魔王を倒せば確実に英雄になれるし、お兄様も何も言ってこられない」

「魔王討伐……か。随分と簡単に言ってくれたな」

「別に簡単に言った訳ではないわよ。ただ、私はクラウスを倒すよりも楽だと思っているわ」

「魔王ってクラウスよりも弱いのか?」

「弱いわけないじゃない。ただ、クラウスの方が狡猾でずる賢かったのは間違いないわ」


 確かに……単純に強いだけの相手と考えたら、そう難しい相手ではないように思えてくるから怖い。

 俺達がイバンを連れ出したのに、このまま日陰者として扱うのは嫌だし、いっちょ魔王を倒しに向かうか?


「いいじゃん! 魔王討伐! 目標なんかなかったし、ここはドーンとデカい目標立てようぜ! 魔王を倒せば、俺の夢である世界最強の冒険者ってのも達成したと言えるし!」

「私も賛成です。怖くないと言えば嘘になりますが、それよりもワクワクの方が勝っているかもしれません」

「アウッ!」


 ラルフとヘスターの言葉に賛同するように、スノーも大きく一つ吠えた。

 みんなにこう言われてしまったら、俺が断るわけにはいかないか。


「……分かった。イバンのために魔王討伐を目指すか」

「そういうことなら、国を挙げて支援させてもらうわ。反逆者として追われていたクリス達が、今や勇者候補として祭り上げられるんだものね。人生は面白いって、あなたたちを見てたら思わされるわ」

「それはシャーロットも同じだろ。王女様にしては面白い人生を歩んでいると思うぞ」

「いいえ、私はまだまだ。ただ、クリスに負けないくらいの面白い人生を歩むから。どっちの人生が面白かったかはお互いが死ぬまでの勝負ね」

「望むところだが……馬鹿王子に簡単に殺されるなよ」

「当たり前。殺されても死なないわ」


 俺とシャーロットはそう言い合いながら、軽く拳を合わせた。

 イバンのために魔王を討伐する。


 理由としてこれでいいのかとも思ってしまうが、これくらいの理由の方が俺達らしいだろう。

 レアルザッドやオックスター、それからエデストルで悠々自適に暮らすのはもう少し先になりそうだ。



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